おや、珍しいでござるなぁ・・・ 午睡 その日はたまたま偶然が重なった日であった。 たまたま万斉が部屋を訪れたら、 たまたま高杉は窓際で眠りこけていて、 たまたま・・・どうやら熟睡しているらしい。 万斉が窓際に近寄っても一向に目を覚ます気配がなかった。 「実に珍しい・・・」 万斉は小さく呟くと、その場にしゃがみ込み、高杉の寝顔を観察することにした。 この男の、こんなにも無防備な寝顔を誰が見たことがあるだろうか。 (なんというか・・・) 実に、幼い。 思わず、万斉は自分の緩む頬を手で押さえた。 (この人、いくつでござったか・・・) その端正な顔立ち。 痛々しい包帯によって隠れているのが勿体無いほどに、美しい。 けれど、知っている。 今は閉じられているその瞳には、底知れぬ狂気が宿っていることを。 その狂気が・・・かつての仲間を思う気持ちからきていることを。 「・・・き」 き? 寝言を漏らすほどに熟睡しているのかと驚く反面、その一言が妙に耳に触る。 (・・・万斉大好き、の「き」) くだらないことを頭に思い浮かべてみるも、あまりの現実感のなさに一人で打ちひしがれる。 (じゃあ・・・来島また子の「き」) 少し現実味はあるものの、女の名前を呼ぶ高杉など想像もできない。 いや、したくない。 (・・・恐るべき変態武市の「き」) そんな仕様もないことを考える。 いや、本当はわかっているのだ。 「き」は・・・ (銀・・・と、き?) ―――――ああ、何だろうか、この無性に苛立つ感覚は。 いっそその口を塞いでしまおうか。 そうすれば、その忌まわしい名を聞くこともない。 万斉は、半ば無意識に高杉に手を伸ばした。 パシッ その手を掴まれて、やっと、高杉が目覚めていることに気付く。 その目は、まっすぐにこちらを捕らえていた。 「・・・おや、お目覚めでござるか」 何とも、居心地の悪い。 「とっくだよ・・・」 はぁ、と溜め息を吐くと、高杉は万斉の手を離し、ガシガシと自分の頭を掻いた。 「何の用だぁ?」 寝ているところを見られたからか、邪魔されたからか。 不機嫌なオーラで万斉を睨む。 「用・・・」 はたと思い巡らせるも、はじめの用事が何であったか思い出せない。 まぁ、とにかくくだらない用事だったのであろう。 「用がねぇなら出ていけ」 目線だけをこちらに向け、冷ややかに告げる。 「そうでござるなぁ・・・」 万斉はゆっくりと立ち上がると、そのまま高杉に覆い被さるような形で窓辺に手をついた。 「・・・何だよ」 万斉は口の端をあげると 「拙者非常にムカついて溜まらぬが故に・・・」 高杉の唇に噛み付く勢いで口付け、その舌を味わった。 「ん・・・っ」 高杉も、眉を顰めるも、抵抗はしない。 「はぁっ・・・」 やがて唇を離すと、どちらからともなく吐息が零れた。 そうして満足げに万斉は 「どうも」 笑みを浮かべてその場を去っていった―――――――― |
ナンジャタウンで急に思いついた万高。 しかし万斉(万高)に興味がなかったので万斉の口調がわからぬままという・・・ ファンの方ごめんなさい。 |