名前 なぁ、俺の名前、覚えてるか―――――? ふと呟くように聞かれた。 通りざまに袖を引かれて。 「はァ?」 何を言いたいのかが分からなかった。 柱に凭れ掛かる銀時の右手には並々と注がれた酒。酔っ払いの戯言だと思った。 「ククッ、何言ってやがる白夜叉。殺しすぎて気でも違えたか?」 微笑を浮かべてそう返すと、力を失くしたように左手が袖から落ちていった。 それが、シグナルだとも気付かずに・・・――――― 白夜叉の強さは本物だった。 誰よりも強く、誰よりも非情に、誰よりも美しく・・・戦場を舞う。 白夜叉がいれば負けはないと、それは生ける伝説であった。 だから、だろうか。 俺たちは奴が人間だということを忘れていたのかもしれない。 |