『出かける』 そんな書き置きを残して親父が失踪した。 もう、1週間になる。 寂しさと優しさと 捨てられた―――――なんて子ども染みた考えで世間を悲観できるほど素直に親父を認めてはいなくて、それでも、どこで何をしているのか多少の不安はあるけど大丈夫だろうと軽く思える程度には信頼していたらしく、親父がいなくなってからも特に変わらず毎日を過ごしていると自分では思っていた。 けれど、ここへ足を運んでしまった自分の無意識な行動に、今の意外な心境を思い知らされる。 オレは、親父が何も言わずにいなくなったことに少なからずショックを受けていたらしい。 「アルフォンス」 目的の、どうしようもなく郷愁を思わせる人物を見つけ、口が勝手に開く。 慌てて口を塞いだが、どうやら聞こえてしまっていたらしく、彼は驚いたように振り返った。 「・・・エドワードさん?」 もうとっくに研究からは遠ざかってしまっていた自分が何故ここにいるのか、というアルフォンスの疑問は当然だ。 けれど、理由を聞かれたところで答えられない。 オレにも、何故自分がここに来てしまったのか、何をしたかったのか、さっぱり分からないのだから。 「久しぶり。元気だったか?」 どうして―――――なんて言葉を聞かなくてもいいように話を違う方向に持っていこうと思うのだが、言葉が上手く続かない。 俯いてしまったオレを労わるようにアルフォンスが覗き込んできた。 「大丈夫ですか?顔色、悪いですよ」 アルと違う青い瞳に、何故だか情けない心の内を悟られてしまうような不安を覚え、思わず体を引く。 俺のその反応に怪訝な表情を寄越して、アルフォンスが眉を顰める。 「どうかしたんですか?熱でもあるんじゃあ・・・」 心配げにその掌を額にあてられ、酷く泣きたくなった。 人肌が恋しかったのだろうか。 それとも、アルフォンスだから? 「エド・・っ」 アルフォンスの胸に縋り付いて、頭を押し付ける。 こんなのおかしいって分かってる。 でも、1人では立っていられないんだ。 誰かに、支えて欲しかった。 (あぁ―――――だからオレはここに来たのか) 妙に納得して、自分が、思っていた以上に限界だったことに気付く。 そんなオレにアルフォンスは嫌な顔一つせず、黙って俺の頭を撫でてくれた。 その優しい手が幾度も触れていくうちに、耐え切れなくなって涙が溢れ出した。 泣きたくなんかなかったのに。 それでもアルフォンスは何も言わなかった。 与えられる優しさに寄りかかりながら、俺はそのまましばらく泣き続けた。 |
はい、『寂しさと優しさと』の小説バージョンです。(なんか文章ボロボロですが;) それにしても文章にするとこんなに短いのに・・・マンガにすると何も伝えられなくなる器量が丸分かりですね。いやはや。 |