私のカケラよ力強く羽ばたいてゆけ これで、全てが終わったのだろうか。 静まりかえった場内に漂う哀しみは消えない。消えることがない。 ちらりと横を見ると、ある一点を見つめたまま歯を食いしばっている兄さんがいる。 『泣かないで』 ふと、どこからか男の人の声がした。 けれど辺りを見回してもその言葉を発したらしき人はいない。 気のせい、だろうか。 『泣かないで』 ―――――いや、気のせいなんかじゃない。確かに聞こえる。 これは、誰の声・・・? 『悲しさに躓いても』 声は聞こえ続けてくる。 『真実を見ていて』 これは誰かの想い?誰の、誰への? 『そのままの貴方でいて』 痛いほどに感じる誰かの想いが、ボクの中を駆け巡っていく。 それはボクの想いと類似していて――――― 『大好きなその笑顔曇らせてごめんね』 ―――――唐 突に理解した。 これは、彼の想いだと。 『いつまでも見守ってあげたいけど』 ボクは引かれるようにその人の元へと歩んだ。 嫌でもその人の顔がはっきりと目に映る。 ボクとよく似た、けれど少し大人びた顔。 『優しいその手を待ってる人がいるから』 聞こえ続ける声。もう動かない、冷たい手。 ボクはその手をゆっくりと手にとって、両手に抱きしめる。 途端に、涙が溢れ出した。 ごめんなさい。ごめんなさい。 ボクがここに来たから、貴方は死んでしまったの? いくら謝罪を重ねても足りない。この想いに応えられない。 ボクはどうすればいいんだろう・・・? 『顔を上げて』 ―――――思わず、息を呑んだ。 兄さんへの言葉のようでいて、それはボクへの言葉のようにも聞こえた。 ボクを、許してくれるの・・・? 声はもう答えない。 ボクはまた泣き出してしまった。 彼から伝えられた想いが深すぎて。 どれだけ兄さんのことを想ってくれていたのかがよく分かって。 だってボクも同じだから。同じ想いを知っているから。 アルフォンス・ハイデリヒさん――――― ボクは貴方の声を聞きました。貴方の想いを受け取りました。 今度はボクが貴方の想いを兄さんに伝えます。ボクが、兄さんを幸せにします。 ねぇ、いいですか? ―――――声はもう聞こえなかったけれど、ボクは確かに彼の想いを受け取った。 『貴方がいるから、この命は永遠に続いてゆく』 |
『』内はL'Arcの「Pieces」からの引用です。例に漏れず。(漢字など多少変えているところはありますが;) 本当はこれマンガで描こうと思っていたのですが、私の理想をマンガ化してくださったハイエドラヴァー様がいらっしゃいまして、ちょうど似たようなネタを表現してらしたので映像的にはもう満足してしまったというか(笑) ミュン編曰くアルの精神は離れやすかったらしいので、その離れた精神がハイデの想いを受け取ってしまうってのもありかなーとこんな話が生まれました。捏造万歳。 |