僕の名前はユウナ・ロマ・セイラン。 この国の代表であるウズミ・ナラ・アスハの娘、カガリ・ユラ・アスハの婚約者だ。 運命の出逢い 彼女との出会いはもうずっと昔。まだカガリがほんの幼い子どもだった頃の話。 「婚、約者・・・?僕に・・・?」 「そうだ。相手はこの国の姫、カガリ・ユラ・アスハだ」 「カガリ姫!?って父さん、確か彼女はまだ5歳くらいのはずじゃ・・・」 「だからだよ」 突然ふってわいたカガリとの婚約話。 そのときの僕は、カガリのことを全くと言って良いほど知らなかった。 姫だけあって行政府にはちょくちょく顔を出しているらしく、父は「カガリはお前にぴったりの娘だ」と言う。 けれど、姫の生誕祝いのパーティーの際にまだ赤ん坊だった彼女を遠目で拝見して以来、彼女とは会ったことも話したこともなかった。 「・・・僕は、不安です。姫に気に入ってもらえるかどうかも分からないのに婚約だなんて・・・第一、僕自身、彼女のことを何も分かっていないのに・・・」 あの頃は、僕もまだ若かった。いきなり婚約と言われて、しかも相手がこの国の姫だなんて聞かされたら、打算的な計算よりも不安の方が大きいに決まっている。 しかし父さんは、僕よりも僕の性格をよく熟知していた。 「大丈夫だ。お前は必ずカガリを好きになる。それに、もしカガリがお前を嫌うというなら・・・お前がそれを変えてやればいい」 にやりと笑う父の顔は、我が父ながらとてもあくどい。 そして僕は、そんな父の血を確実に引いていた。 「とにかく、これは政略結婚だ。・・・まだ婚約だがな。拒否権なんぞ、お前にもカガリにも無いんだよ」 父はそう言い切った。 カガリと出逢ったのは、それから数日後のことだ。 ・・・ただし、婚約者として正式な出会いを果たしたわけではなかった。 何しろ、たまたま町を歩いていた僕に後ろからぶつかってきたのが、カガリその人だったのだから・・・ 「っ何だ?・・・・・・子ども?」 金髪の、少女だか少年だか分からないようなその子どもは、ぶつかったときの姿勢のまま僕を見上げると、突然にこっと笑って見せた。 (・・・何なんだ?) 特に悪びれる様子も無く、その子どもはにこにこと僕に笑いかける。 おそらく、僕にぶつかったのも何か意図があって、というよりは単に前を見ずに走っていたらそうなった、というだけだろう。そして、目が合ったから笑いかけた。どちらも子ども特有の良くある謎の行動である。 しかし、思えばこのときから既に、僕はカガリのことを好きになっていたのだろう。 次に、今度は正式に婚約者として会ったときに、先日のあの子どもがカガリだったのかと知ってとても驚いたのを今でもよく覚えている。 「カガリ・ユラ・アスハ、5さい!」 この間と同じ笑顔で、片手をいっぱいに広げて見せる。 僕はカガリと同じ目線までしゃがみ「ユウナ・ロマ・セイランです。よろしく、カガリ姫」と、その手を取って軽く口付けた。 カガリは・・・何やら不満そうな顔で僕を見ている。 「どうしたんですか?」 「・・・カガリ、だよぅ」 その言葉に、ウズミ様はくっくっと笑いながら「カガリは姫と呼ばれるのが嫌いなんだ」とおっしゃった。 なるほど、道理で誰も彼も一国の姫に向かって名前で呼び捨てるわけだ。 僕はカガリに向き直り、改めて挨拶をする。 「よろしく、カガリ」 「ああ!よろしくな!」 開いた口からこぼれるぶっきらぼうな言葉に唖然とする。 一国の姫がこれでいいのか・・・?! 「ぷっ・・・・・・あっはっはっはっは」 何だか無性におかしくて、僕は思わず笑ってしまった。 「あはははは」 カガリもつられて笑っている。 僕はその時、父の言葉を思い出していた。 『カガリはお前にぴったりの娘だ』 確かに、僕にぴったりの娘だよ父さん。こんなに調教しがいのある姫なんて、中々手に入るものじゃない。 『お前が変えてやればいい』 そうだね、変えてみせるさ・・・僕好みの女性に。ゆっくり、ゆっくりと、ね。 だけど・・・・・・今はもう少し、この笑顔に酔いしれていたいな。 この、明るい笑顔に。 |
ユウカガです。ユウ→カガです。 なんつーか、ユウナ、変態?(笑) ユウカガ好きです。これでも(笑) |