『私は、ラクス・クラインです』






ミーア




本物だ・・・
そう思った。
あたしが憧れて、ずっと追い続けてきた人、ラクス・クライン。
やっぱりあたしなんかとは違う。
本物のラクス・クラインは、もっと・・・


――――無性に、涙が出そうになった。
きっと今、画面にはあたしの惨めな姿が映ってる。
こんな惨めなのはラクス・クラインじゃない。
これは――――何もできなかった頃のあたしだ。
歌手になりたがっていた頃の、あたしだ――――






「初めまして、ミーアさん」


それは夢だった。
すごい・・・あたし、歌手になってる!歌手になって、ラクス様と共演してる!
何度もそんな夢を見て、それから現実を見せ付けられた。
何も出来ていない自分と、遠くのラクス様と。


「あたし、ミーア!ミーア・キャンベル!」


あたしの存在を認めて。貴女の隣に立たせて。
――――そんな夢は叶わないものだったけれど。
でも一番、輝いてた。






「あたしが、ラクス様の代わり!?」


あたしはラクス様の隣には立てなかった。
けれど、ラクス様のいたところに立てた。
あたしが、ラクス様になった。
それはすごくおかしな話で、最高の話。
あたしがラクス様になれるんだって!ラクス様の代わりに!


・・・でもそれって、ラクス様には会えないってことよね。
だってミーアはラクス様の代わりなんだから。
ラクス様が帰ってきたら、ミーアはもういらない。
また昔のあたしに戻るだけ。




それでも、ラクス様と一緒にいることはできないかしら?
そうよ、あたしが代わりをしてあげてたんだから、ラクス様の代わりをしていたミーアを、ラクス様はお傍に置いてくれないかしら?


「ミーアさん、これからも・・・今度は一緒に、平和の歌を歌いましょう」


そうよ、それがいいわ!そうすればミーアはいらなくなんかない!
ラクス様として、ラクス様と一緒にまた平和の歌を歌っていけば・・・うん、きっと楽しいだろうなぁ・・・ラクス様とお友達みたいにうんと仲良くなっちゃったりして。


「私のことはどうかラクスとお呼びくださいな、ミーア」


・・・うわぁっそれってすごくない?
ラクス、ラクス。あたしのラクス。






――――――でも、現実は違った。


『その姿に惑わされないでください』


これってどういうこと?
ラクス様が、あたしを認めてくれない・・・?


「もっと違う形でお会いしていれば、お友達になれたかもしれませんのに・・・」


それって、今のあたしじゃダメってこと?
今のあたしは、ラクス様には必要ない?
――――――ラクス様の目線が痛い。
イヤ!!そんな目であたしを見ないで!!


「貴女は、ラクス・クラインではありませんわ」


どうして!?ねぇどうしてあたしを認めてくれないの?ねぇ、ラクス!!




―――――ねぇ・・・だって・・・ミーアはただラクス様に近付きたかっただけなんだよ。
こんなはずじゃなかったのに・・・
ラクス様になれないなら、あたしなんか・・・いらないっ!!


「ミーアさんっ!!」


ラクスがあたしを呼んでる。
やだなぁ・・・ミーアって呼んでよラクス。
あたしは・・・ミーアよ・・・・・・ミーア・キャンベル・・・


ねぇ、忘れないでね?









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ミーアが撃たれた瞬間に過ぎった走馬灯・・・みたいなイメージで書きました。
一応頭の中に映像はあるのですが、そういう記述はばっさりカットして本編の『ミーア』の回に似せようとしてしまったので分かりにくくて・・・撃沈;
やっぱり小説でやるには難しかったか・・・;



2006/3/7


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