まぁ中学からずっと見てきたからねぇ。 誰よりも努力家なところとか。 口では否定するけど、すげーチームメイト思いだし。 バスケバカで、一直線。 傍で見れば見るほど、憧れるでしょ、当然。 まぁ、ね・・・憧れが、好きに変わるなんて思いもしなかったけど。 バスケとキミと 「日向ー昼どーする?」 「あー・・・今日は購買行かねーとねーわ、食うもん」 「珍しいな・・・じゃあ食堂行く?」 中学の頃バスケバカだった日向は、今は、髪伸ばして金髪にして・・・バスケを、やめている。 やめた、ってあえて言わないのは、信じてるから。 あれだけバスケを好きな奴が、このままやめるなんて有り得ない。 ・・・いや、やめるなんて、信じたくないんだ。だから、信じてる・・・日向は必ず戻ってくる、って。 それに・・・ 「よぉ」 木吉、鉄平。 「・・・」 「よぉ木吉、俺ら食堂行くけど、どーする?」 最近、毎日毎日毎日毎日、日向をバスケに誘ってくれる奴。 まぁ俺も誘われて快諾してるんだけどね、すでに。 「ああ、じゃあ俺も行こうかな」 「ハッ・・・食堂でショック!どうする?!」 「伊月ウゼェ」 日向はかなりイラついているようだ。 わからなくもないが・・・ 木吉がしつこく誘ってくるからってわけじゃないんだろう。バスケをやりたいって気持ちを見抜かれて、つつかれて、どうしていいのかわからないんだと思う。 バスケはしたい。けど、勝てないバスケを続けるのが苦しい。 俺だって一緒に負け続けてきたわけだし、そういう気持ちは少なからずある。 ただ、バスケを好きだっていう気持ちは、日向には圧倒的に敵わない。 だからこそ、まっすぐにバスケに打ち込む日向が眩しく見えるし、そんな日向が好きだと思う。 日向にもう一度バスケをしてもらいたいとも、思う。 「伊月はさぁ、何で誠凛に来たんだ?新設校だし・・・学校側が用意した部活動一覧にバスケ部ないの知ってたんだろ?」 木吉が何気無く聞いてくるそれは、なかなか俺のど真ん中を突いてくる。 俺だってバスケは好きだ。やりたいと思う。 けれど、日向を勝たせてあげられなかった負い目がある。多分、俺たちの中学の連中はみんな感じている。 日向は強い。それは努力に裏付けされた強さだ。 だけど、強いのは日向だけ・・・周りの俺たちが弱いから、うちのチームは勝てなかったんだと。 その日向が笑ってバスケできないのなら、俺たちがバスケをする資格はないんじゃないかと。 ・・・それは、日向には決して言わないけれど。 「まぁ知ってたけど・・・なんだろーな・・・俺が好きだったのは、日向や・・・中学の時の仲間とやるバスケだから」 「ふーん・・・そんなもんか」 木吉は意味ありげに呟く。 「でも、日向さえオッケーしてくれれば中学の時よりもっとバスケが好きになれるぞ」 にんまりと笑って、日向に顔を向ける。 「ははっ、それは楽しみだな」 気付いてはいたけど、木吉はたとえ人数が揃ったとしても、日向が頷かない限りバスケ部を始めるつもりはないんだろう。 たとえば、木吉と俺だけじゃダメなんだ。 日向がいないと。 ・・・もしかしたら、そう思っているのはむしろ俺なのかもしれないけれど。 日向がいないとやりたくない、できないと思っている俺に気付いているのかもしれないけれど。 木吉という、この男は。 「ハッ・・・何でそう言い切れるんだよ」 「根拠はない。でも、そう思う」 木吉の言葉に、日向は不機嫌そうな表情を見せる。 見せる、けれど。 ズキリ・・・ 日向の目に、迷いが生じるのがわかる。 バスケに対する執着が見える。 木吉の言葉に心を動かされているのが、わかる。 『日向っ!なんで・・・っ、誠凛なんてバスケできねーかもしれないとこ・・・お前、バスケやめるつもりか?』 『つもりも何も、やめるんだよ・・・っ、どうあがいたって帝光には勝てない・・・バスケなんて・・・つまんねーんだよっ』 『日向っ・・・!!』 俺が何を言っても、日向は考えを変えなかった。 なのに・・・木吉はそれを変えようとしている。 変えてしまうだろう。 ・・・それが、嬉しいのに、悔しい。 「お前となら、てっぺん目指せるよ日向・・・だってお前、バスケ大好きだろ?」 ああ、悔しい。 「・・・ッカじゃねーの?」 日向がだんだん木吉に惹かれていくのがわかる。 ずっと傍にいたのは俺なのに。 3年間一緒に頑張って、一緒に喜んで、一緒に悔しい思いをしてきたのは俺なのに。 俺は何もできなかった。 日向にバスケを諦めさせてしまった。 けれど木吉は、日向を引きあげようとしている。 もう一度、バスケの楽しさを、苦しさを、味わわせようとしている。 俺にはできなかった。 木吉にはそれが、できる。 「一緒にバスケしよーぜ、日向」 ああ、木吉には敵わない――――― 俺は、バスケをしている日向が好きだ。 日向と一緒に、またバスケがしたい。 だから・・・ 日向が木吉にどうしようもなく惹かれていくのを、ただ黙って見ているしかできないんだ――――― |
【日月語り】攻め側が他の人を好きになってしまった事に気づいた受け側の反応について語りましょう。 というツイッタさんのネタ振りから「木←日←月で伊月くんは密かに諦めるタイプだ!」とKI・TA・KO・REした結果生み出された文です。日←月おいしい! |