Entry

小十佐18禁SS「烏との再会」後編02

※18禁描写がありますので、閲覧には十分ご注意願います※
続き
薄暗い行灯の灯りの中、忍の荒い呼吸が響く。
「あっ…はっ…はあ……」
俺たちは裸で向かい合って座し、忍が胡坐をかいた俺の上に跨り身体を揺すっている。
「……くう…っ」
忍の後孔には俺の陰茎が深々と突き刺さり、忍が身体を動かすたびにねちねちと粘り気のある音がする。
俺のものが彼の弱い所を掠めるたび、彼は堪りかねたように口の端から声を漏らす。


あの祭の夜から、俺たちは三日と空かず床を共にするようになった。
彼にかける肉体および精神の負担を考えると、極力自制しなければならないと思うのだが、夕餉の後などに彼に「今日はどうするの?」と顔を覗き込まれるともう堪えることができないのだ。
それでも、あの日のような乱暴な抱き方はしないように努めていた。
後に彼に「俺様それなりに閨の作法は自信あったのに、あの時全然太刀打ちできないもんだから結構焦ったよ~」と冗談交じりに言われたからだ。
「本当にやり殺されるんじゃないかって思って正直ちょっと恐かった」とも言われた。
彼との関係について開き直ることも退くこともできなくなった今、「真田が好きなのに他の男と寝ている」という事実が彼に及ぼす精神的な負荷についてはどうすることもできない。
だからせめて、身体だけは労わってやりたかった。快楽だけを与えてやりたかった。
それが欺瞞なのは重々承知の上だった。


上下に動く彼の細い腰を掴み、腰を使って下からゆっくり突き上げる。
「あっ…あっ……!」
忍が身体を弓のようにしならせる。
そのまま雁で彼の感じる部位を丁寧に擦る。
彼は身体をびくびくと痙攣させ、先端からとろとろと透明な液を零す。
「そこ、やだ、旦那…」
「なんでだ。良くねえのか」
「違う…そんなにされたら、もう持たないから…」
彼は未だに俺より先に達くことを躊躇する。軽い口調とは裏腹に、身分差に対して厳格な考えを持っているのだ。
「つまらねえことを気にするな。いいから先に達け」
俺は両の掌で彼の脇腹をやわやわと撫で上げる。そこも彼の弱い所なのだ。
「だ、旦那は…旦那は気持ちいい?俺、ちゃんと気持ちよくしてあげられてる?」
頬を紅潮させ、きつく眉根を寄せて快楽に耐えながら、彼はなおも俺を気遣う。
「ああ、俺もじきに達きそうだ」
「だ…だったら…」
彼は切なげに潤んだ瞳で俺を見る。緑がかった色を放つその瞳を、本当に綺麗だと思った。
「せめて、一緒にいきたいよ…」
「………」
俺は彼の身体を突き上げながら、彼の紅く色づき硬く勃ち上がった乳首を指で摘んだ。それと同時に、彼の今にも弾けそうな性器の裏筋を親指の腹で優しく撫で擦る。
「あっ!!あっ……旦那、やめてよ…!」
彼は身を捩って逃れようとするが、俺の指はそれを許さない。
ついには彼は泣き声を上げて、
「やだって……!もう、我慢できない…っ」
その瞬間に俺は彼の中に白濁を迸らせる。
それを感じて緊張の糸が切れたのか、彼も陰茎をびくびくと脈打たせながら、堤の決壊するかのごとく白い粘液を先端から溢れさせた。


忍は力なく床に横たわっている。
「すまねえ、無理をさせたか…?」
俺は傍らに横になり、指で忍の髪を梳く。
「ううん。大丈夫だよ…」
「俺とするのは辛いか?」
「ううん。旦那は優しいよ…でも旦那って体力が化け物じみてるし、そもそもでっかいからさ」
いかな俺様と言えども、回復するのにちょっと時間がかかるのよねーと笑っている。
「すまねえ、猿飛」
俺はもっと回数を減らさなければと反省する。
すると忍は髪を梳いていた俺の手を取り、すりすりと頬擦りした。
「でもそんなのどうでもよくなるくらい、旦那とするの気持ちがいいからさ…」
そう言うと、事後の疲れと快楽の余韻を浮かべた目でこちらを見る。
「…猿飛、すまねえ」
「何…?」
「もう一回いいか」
「…え?」
「勃った」
「ええ~~…」
さすがに忍は嫌そうな顔をしていたが、「しょーがないなあ、もう」と苦笑を浮かべて俺の首に腕を巻きつけた。
「でもさすがにちょっときついから、あんまり辛くしないでね?意地悪もあんまりしないでね?」
「…努力する」
そう言うと俺は忍にそっと口付けた。


表面的に見れば、俺の今の状況は幸せそのものだっただろう。
しかし、相変わらず心の蟠りを解くことができずにいた。
彼はあの祭の日以来、真田の話を一切俺にしなくなっていた。
おそらく、情人に昔の男の話などすべきではないという彼なりの弁えなのだろう。
確かに俺は真田の話を聞くたびに嫉妬してしまうだろうし、彼の気遣いによって助けられている部分は大きいと思う。
それでも、果たしてこれで良かったのだろうかという疑念がいつまでも胸に渦巻いている。
彼にとって真田とは、これまでの自分自身と重なる存在といって差し支えないはずだ。
それなのに真田の話をできなくさせてしまったのでは、彼が彼自身を発散させる場を結果として潰してしまっているのではないかと気がかりなのだ。
彼と肉体関係を持つようになる前、彼は少しずつではあるが真田の話を俺にしてくれるようになっていた。
もしかすると俺は少しずつ手繰り寄せられていたものを、浅慮によって手放してしまったのではないか。
その思いがいつまでも晴れずにいた。


再びの行為の後、ついに意識を失ってしまった忍を見つめながら、俺は深く溜息をついた。
この頃めっきり溜息が増えてしまっていた。