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小十佐18禁SS「桃尻忍のいけない修練」05(完)

続き

受像機に映る砂嵐を見ながら、政宗は途方に暮れていた。
――後半は雑念を挟む暇もなく、食い入るように観てしまった。
そのせいで、もはやのっぴきならないほど身体が昂ってしまっていた。
猿の濡れ場ごときで……屈辱だ、腹立たしい。
Shit. ムカつくが、小十郎が帰ったら一発抜くしかねぇ。
ただし、意地でも猿はオカズにはしねぇ。俺の誇りにかけて。
政宗は胸中で謎の決意を固めた。
――そういや小十郎はまだ怒ってるんだろうか。
横を向いて己の従者を確めると、小十郎は俯き、膝頭を鷲掴みにして腕をわなわなと震わせていた。
目が少し潤んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
――どうも妙だ。
政宗はいぶかしんだ。
小十郎は政宗の愚行に対して怒る時は、もっと単純に怒る。
情けなさの余り涙するなどといった女々しい真似は絶対にしない。即座に怒りの雷を落とす。
それが、今の彼はどうだ。
静かに肩を震わせ、激しく気落ちしているように見受けられる。
一体どうしたってんだ、小十郎……


――その時、政宗の脳裡に閃くものがあった。
いつもは誰に対しても厳しい小十郎が、真田の忍が現れた時だけは僅かに表情を綻ばせる。
無論それは政宗しか気づかないほどの微細な変化なのだが。
さらには、彼の畑で取れた野菜を度々忍に贈っている事も知っている。同盟中とはいえ、他国の人間をここまで手厚く遇する事も常の彼からすれば非常に珍しい。
以前に一度聞いてみたのだ。「お前、真田の忍に惚れてるのか」と。
その時は「ご冗談を仰いますな」と一笑に付されたのだが、もしかすると――
――例えば、密かに懸想している相手が他の男に犯されている所をいきなり見てしまったら、天地が裂けるほどの衝撃を受けるのではないか……
「小十郎……ひょっとして、お前」
「……何も仰いますな、政宗様…」
小十郎は再生機ににじり寄り、正面の釦を押して中から円盤を取り出した。
「このような下劣な物に大金を投じるとは……罰として、この円盤は小十郎が没収致します」
台詞だけ聞けばいつも通りの説教だが、その声は普段とは比べ物にならないほど弱々しい。
政宗は思考をさ迷わせた。
……俺は小十郎に酷い事をしてしまったのではないだろうか。
彼を元気付けなければ、と思うのだが、何を言えばいいのかまったく分からない。
「こ、小十郎」
のろのろした手つきで円盤を木箱に仕舞う小十郎に慌てて声をかける。
「…何でしょうか、政宗様」
「あの……後で受像機と再生機をお前の屋敷に届けさせてやるよ」
「………」
「そしたら好きな時にそれを見られるように…なる…が…」
言いながら政宗は、果たしてそれが彼への気遣いになるのかどうか判じかねている。
そんな事をしても、小十郎を余計に傷つけるだけなのでは……
「…お心遣い、痛み入ります」
しかし従者は深々と一礼し、陽炎のようにふらりと立ち上がった。
木箱を片手に力ない足取りで襖へと向かう。途中何度も足を縺れさせた。
――Don't mind. 小十郎……
従者の後ろ姿を見守りながら、政宗はそっと呟く事しかできなかった。