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現パロ小十佐15禁SS「free fall」

※R-15程度の性的描写がありますので、閲覧にはくれぐれもご注意ください。
続き

かすが、それ美味しい?新発売のやつ。…まあまあ?そう?
俺様もそれにすれば良かったかな~。
……はあ。
…え、ため息つくほど飲みたいのかって?いやいや違う違う。
トフィーナッツ・ラテの話じゃなくて、あいつの話。
あいつだよ。片倉君。同僚の。
なんか最近変なんだよねえ…
俺様が友達と電話したりしてたら、「誰と話してたんだ?」とか聞いてくんの。
あと片倉君からの電話とかメールにすぐ出ないと、「どこか行ってたのか?誰かと会ってたのか?」とか問い詰めてきたりすんの。
「何それ束縛?そういうのうざいんだけど」っつったら黙るんだけど、その後ずーっとむすーっとしてんの。
何なんだろねーあれ。ちょっと早めの更年期?
あの人、恋人にはもっとサバサバしてるタイプかと思ったのになあ……、意外だったわ。
…うん?あれ?
なんでそんな毛虫を見るような目つきになってんの?
……恋人?うんそう。
なんか一応、俺様たち付き合ってるっぽいよ?
あれ?言ってなかったっけ?
いつからって?いつからってことになるんだろ。
はっきりと「付き合いましょう」「はい」って言ったわけじゃないからなあ……
うーん。初めてやった時がお付き合いのスタートってことになるなら、二ヶ月前?
でも軽めに済ませたやつも含めると、もっと前か……
……え、何?
生々しい?
…まあ、夕方のカフェで喋るような内容じゃないわな。
悪い悪い、この話やっぱやめるわ。
………ん?何?何なの?
やっぱり聞きたいの?そうなの?
なあんだ、かすがもやっぱりそういうの好きなんじゃない……
あ、ごめんなさい。ほっぺた引っ張るのやめて。痛い。痛いです。いてててていててててて


えーと、そもそもの事の始まりは三ヶ月前かな?
会社の同期で集まって飲んでたんだよ。そうそう、慶次。知ってるでしょ?
あいつの家に皆で酒持ち寄って。
そんで酒入ったら、ついついいろんな話漏らしちゃうじゃん?
受けるかな~とか思って「俺、昔男のちんこ舐めたことある」って言ったのね。
…うん、あるんだよ。この話もしてなかったっけ?
あれ?おっかしいなあ……かすがにはしたと思ってたんだけど……
いやいや違うって、俺ゲイじゃないって。専門は女の子だって。
それはかすがだって知ってるでしょ?
いや、あれは不可抗力っつうか、高校の時に親ともめて家飛び出したんだよ。
でも全然金持ってなくって、友達んちだと親に見つかるし、宿どーしよーって思いながら街歩いてたらおっさんに声かけられてね。
飯食わせてくれて、その後ホテルに連れてかれたの。
でまあ当然やらせろみたいな話になるじゃない。でも尻掘られるのだけはイヤだったから、手でなんとか…手がダメなら、せめて口で…俺すっげえイボ痔なんで、突っ込まれたらリアルで死ぬんで!!みたいに必死に言い募って。
それで実際口だけで我慢してくれたんだから、今考えるとあのおっさん結構いい人だったよな。
…てな話を酒の席でもしたわけ。皆だいたいドン引きでさ、中にはゲラゲラ笑ってる人もいたけど。片倉君は隅っこの方で黙々と飲んでて、あんまり話に絡んでこなかったんだけど、俺の話聞こえてたみたいで明らかに引いてた。
その後皆酔いつぶれちゃってさ。真夜中になって、俺と片倉君だけが起きてて。
なんかあっちが俺の方ちらちら見るから、いたずら心が湧き上がってきてさ。
片倉君、さっきの話聞こえてたでしょ?
男に舐められるのってどんな感じなのか、教えてあげようか?
って言ったら、なんかモゴモゴ言ってたけどあ、これはまんざらでもないんだなって思ったからそのままトイレに連れて行って、舐めてやったんだよね。
…うん、我ながらなんであんなことやっちゃったのかなあ……。酒の勢い?
まあとにかく口で抜いてあげて、終わったらさすがに疲れたから皆のところに戻って雑魚寝したんだわ。
次の日の朝お開きになって、俺と片倉君は家の方向が同じだから、一緒に電車に乗ってたんだけど。
そしたらいきなり「夕べはお互いにどうかしてた。俺は忘れることにする。だからお前も忘れてくれ」って言われてさ。
それがもう、地球がこれから滅びるんじゃないかってくらい悲壮感溢れる表情でさ。
さすがにおいたが過ぎたかなーって俺も反省して、「わかった。全部忘れるよ」っつって、その場はひとまずそれで終わったんだ。


…でまあ、薄情なのかもしんないけど、その後はホントに俺あの日のことをすっかり忘れ果てて普通に暮らしてたんだ。
もともと俺と片倉君、同期で会う時はそこそこつるむけど、二人っきりで会うことあんまりないしね。
あの飲み会から一ヶ月くらいたった頃だったかな……、仕事終わって家に戻ってきたら、アパートのドアの前に片倉君が立っててさ。
どしたの?って聞いたら、お前と話がしたいって言われて。
家に入れるなり、「お前は気分が向きさえすれば誰とでもあんなことをするのか」とか何とか、やたらと怖い声で問いただされてさ。
いやいややんねーよ。そもそも俺、別に男好きじゃねえし。
「あん時はちょっとテンションがおかしくなってたんだよ」って言ったら「テンションがおかしくなりさえすれば誰のものでも舐めるのか」とか詰られて、もう意味わかんねえ。
そもそもなんで今更あんたに問い詰められなくちゃなんないわけ?俺が誰のものを舐めようが、って舐めないけど、あんたに関係ねえだろって言い返したら、急に弱気な顔になってさ。
「…お前が俺以外の誰かとあんなことをしてるのかと思うと、夜も眠れない」とか弱々しい声で言うわけよ。
いやそれ全然わかんねえし。第一忘れようって言ったのは片倉君の方だろ?って聞いてみたんだけど、「忘れようとしても、忘れられなかった」とかって言われて、よくよく見たら目の下の隈がひどいし、ちょっと頬こけてるしさ。ご飯あんまり食べれてないのかなあって。
へたり込んでうな垂れてるの見てたらなんかかわいそうになってきてさ、気がついたら二人とも裸になって、最後までやっちゃってた。
ん?…最後ってどこまでかって?
いや~それはほら、ねえ?
……だから、俺様が女役をやったってことだよ!!言わせんな恥ずかしい!!
…まあとにかく、そんなこんなで俺たち付き合い出したわけよ。
しかし、一発やった途端に片倉君が豹変してさあ…とにかく俺が誰か別の人と仲良くしてるのが気に食わないみたい。
片倉君と仲のいい同僚に聞いたら、「片倉は付き合ってる子を束縛しなさすぎるから、だいたい女の子の方が痺れを切らして去って行くことが多い」って言ってたのに、全然違うじゃねーか!!ものすごいヤキモチ焼きだよ!!なんだこれ!!
そんでまた、ヤキモチ焼いた後はめちゃくちゃねちっこいのが困りものでさ……
ねちっこく嫌味を言うのかって?違うよ、あの人口数は少ないから。あれこれ言ってきたりはしないの。そうじゃなくって、あのーなんだ、…ね?
……あーもう、だから、夜のコミュニケーションがだよ!!


「コミュニケーションがどうしたって?」
張りのある低い声がした。
しまった、嫌な予感しかしねえ。恐る恐る振り返ると、そこにいたのはやっぱり片倉君。
「すまねえ、待たせたな猿飛。…そちらの女性は?」
口調は丁寧だが、鋭い目つきでかすがを見る。
「えーあの、かすがっていうんだ…俺様の大学時代の友人」
「…どうも、よろしく」
かすがが片倉君に会釈した。
指名手配犯を見つめるような目つきで俺と片倉君を交互に見ている。まあ、そうなるよね……
「いかん、謙信様との約束の時間が迫っている。私はもう行くぞ、佐助」
「ああ。俺様も久しぶりに会えて嬉しかったよ。今度ゆっくり食事でもしようぜ」
かすがは鞄を小脇に抱え、そそくさとカフェを出て行った。
さっきまでかすがが座っていた席に片倉君が腰を下ろす。
ぎろりと俺を睨みつけてくる。非常に怖い。
「…今の女性、綺麗な人だったな」
「でしょー。昔からずーっと口説いてんだけど、なかなかいい返事をもらえなくってね」
「………」
口数は少ないが、片倉君が明らかに殺気立っている。パチパチと放電しかねない勢いだ。
「あのねー片倉君、かすがとはホントに何でもないんだって…メールしてみたらたまたま近くにいて、かすがもちょうど人を待ってるっていうから一緒にお茶してただけだよ」
「…どうだかな」
「あのねえ、俺が仲良くする人全員に嫉妬すんのいい加減やめてくれない?そういうの、マジで迷惑」
「…そもそもはお前が悪いんだろうが。お前が誰とでも気軽に寝るから」
「気軽にホイホイやってるわけじゃないって…」
「俺とのことも、最初はただの遊びだったんだろうが」恨みがましい目で俺を見る。
ああ……こういうの、マジでめんどくせえ。
「あんまり束縛がきついと、俺、あんたのこと好きでいられなくなっちゃうよ」
そう言うと、片倉君の表情がぴしりと固まった。
がたんと立ち上がり、店の外へと歩いていく。俺は慌てて追いかけた。
「ちょっと、どこ行くの?」
「うるせえ。お前に関係ねえだろうが」
関係ないことない。この後二人でご飯を食べて、それから映画のレイトショーを見る約束なのに。チケットも先に行ってもう買っちゃったのに。
「なあ、怒んなって…」
俺は片倉君に追いすがって必死に宥めようとした。
片倉君が店の自動ドアの前で立ち止まる。
「…わかっている。全部、俺の独り相撲なんだ……お前になど、出会わなければ良かった。あの飲み会に行かなければ良かった」
「ちょっとお~片倉君、機嫌直してよ」
「お前に出会わなければ、こんなに醜い嫉妬の感情なぞ味わわずにすんだ……俺は自分で自分が情けねえ」
片倉君は俯き、つらそうに顔を歪めている。
あともう何回かひどい事を言えば、泣き出しかねない勢いだ。
片倉君のこの顔に、俺は弱い。初めて最後までやった時もそうだった。胸がきゅーんってなって、たまらなくなる。
ガタイのいい男が弱ってるのが好きだなんて、俺ちょっとおかしいのかな?
「片倉君」
俺は片倉君を抱き寄せ、背伸びして彼の頬に口付けした。
ちゅーっとわざと大きな音を立てる。店のお客がぎょっとした様子で振り向いた。
「なっ……」
片倉君が慌てて俺を振りほどこうとする。頬が赤い。
ああ、可愛い、可愛い、あんたはすっかり俺のものだ。
「なあ、片倉君!俺と試してみようぜ」
俺は他の客に聞こえるほどの声を張り上げる。
「どこまで溺れられるのか、どこまで落ちられるのか、試してみようぜ!とことんまで道を踏み外したら何が見えてくるのか、俺はあんたと二人で確かめたいんだ」


可愛い可愛いあんたと一緒に、どこまでも。