ゲフェニアでの一件以来、特に大きな事件は無く平和な日々が続いた。
ナルは結局ストレイキャットの溜まり場に残る事になり、ファルとは別の生活を送る事になった。
一方のファルは相変わらず世界を飛び回り、大聖堂の秘密裏に行われる事件に首を突っ込んでいるようである。
ナルとの師弟関係は相変わらず続いており、時折、二人で洗礼を行う為に出掛ける事もしばしば。
ミカはトゥエラーシュ家の次代当主になる事を承諾したようだが、既に「魔王の嘆き」は失われているし呪いの意味もない。
それ故に、何としてでも名前だけは継ぐという事に落ち着いたそうだ。
月に一度は家に戻り、当主としての勉学を学ぶという約束でストレイキャットに戻ってきている。
たまに持ち上がる見合い話にうんざりしているようだが、そこは絶大な魔法で無かった事にしているだとか。
寿はアサシンギルドから依頼があれば出向き、生活費をギルドに納めている。
今までと何ら変わり無い安定した生活だが、ナルを通じて表沙汰に連絡を取れあうようになったファルと狩りに行く時もあるようだ。
普段は影丞とつるんではイタズラをしては、その尻拭いにユグに迷惑をかけている。
影丞は「お仕置き」という名目で半年間は「オペラ仮面禁止」になり、今は捨て値で売られていた「アラーム仮面」を愛用している。
アイアンドライバーの腕に磨きをかける為、日夜、訓練という名のイタズラに精を出しているようだ。
窓ガラスを割ってみたり、家具を壊してみたり、散々ミカに怒られても辞めない辺りが彼らしい。
ユグはステアに凶悪な突っ込みをいられらながらも、その一途な愛を貫き通しており、生傷が耐えない毎日だ。
時折ナルを尋ねてくるファルと一緒に料理を作ったり、一段と美味しい品が作れるようになったと喜んでいる。
尻尾は今も油断すると出てしまうようで、出る度にミカに踏み付けられるが気にしていない様子。
ステアは何故か商人のカリスマ性を発揮するに至った。
ゲフェンの露店街で「ボロ儲けのステア」と呼ばれ、破格の安値で物価を仕入れては売りさばいて儲けている。
お陰でストレイキャットの生活費は大黒字であるが、それを秘密にしてある寿と影丞からはしっかり家賃を受け取っているらしい。
弓の腕も相当上がったようで、最近では罠に凝っているようだ。
そして、あのゲフェニアの悪魔は…。
薄暗いダンジョンを一人の青い髪をした女のプリーストが進む。
その手には真っ赤なワインの瓶や、美味しそうなパンやチーズが詰められた籠が大事そうに包まれている。
慣れた様子で階段をくだり、モンスターにも構わず真っ直ぐに歩む。
モンスターに襲う様子も見られず、また、プリーストも構う事なく互いに擦れ違う。
大きな水晶が設置されている台座の前へ立つと、後ろから馬の嘶きが聞こえ彼女は振り返る。
「今日は遅かったな…」
聞きなれた声にふふっと笑顔を浮かべて、プリーストは籠を見せた。
「今日はね、ステア様がワインの取引きしたから余ったのを一本貰ってきちゃった」
「…酒はあまり好かん」
「ウソばっかりー、酔わないくらい強いだけでしょう?」
プリーストの手を煩わせまいと思ったのか、籠をむしるように取り上げたソードマンの男はナイトメアにそれを預ける。
名残惜しそうに手を離したプリーストは、そっと小指を顔の前に立てる。
ソードマンもそれに合わせ、無骨な防具に覆われた小指を絡めた。
声を出して笑ったプリーストは、そっと口を開く。
「今日も約束守れました…?」
「もちろん」
相手の返答に満足したように、プリーストが手を繋ぐとそっと水晶が収められている台座に手をかざす。
隣にぼんやりと浮かび上がった光のアーチを二人が潜ると、そこには静寂の闇だけが残されていた。
The end ...
+++ あとがき +++
ようやく落ち着きました「Open my heart」!
最初に用意しておいたプロット(大まかなストーリー割り)があったものの、書き足す分や削る分が手間取りました。
今、思い返せば、ココは切っても良かったかな〜なんて部分があったり…。
はたまた逆に、ココは切るんじゃなかった…なんて所もあったりします。
形としては「本編はお終い」という事になります。
最初から最後まで読んで下さった方に、めいっぱいの感謝を込めて…。
有難うございました!
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