魔大陸は浮上し、リターナー含め我々は帝国との決着を付ける機会を伺っていた。
サマサの村での帝国の裏切りにより、セリスは無事帰還。
魔導師の血を引くストラゴス、リルムも新たな仲間として加わった。
誰もが世界の平和を望み、それを実現すべく各々が力をつけていた。
魔石の力を借りる者、己の技に磨きをかける者、それぞれ思い思いにだが、それもすべて魔大陸での決戦の為だ。
特に強さが際立っていたのがティナである。
ゾゾでの父親との再会から、今まで儚げな少女だったのが一変し、瞳に宿るソレはまさに戦士。
振るう魔力も、しなやかな剣捌きも、すべてが完成されていた。
だが、今もトランス状態と人間状態を維持するのは難しいらしく、不安定さからくる睡魔に手を焼いているようだった。
そんなティナを出会った時から「父親代わり」のように接してきたエドガーもまた、魔石の力を存分に借りた事で魔大陸への上陸を待つ身であった。
「かわいいブラックジャックを一人には出来ねぇからなぁ…」
セッツァーが不満そうにティナを見る。
「大丈夫よ、私、一人じゃないもの!」
ニッコリ微笑んだティナに盛大なため息をついて、セッツァーはがくりと項垂れた。
心配の種はティナじゃねぇ…、とチラリと奥のソファで読書に夢中になっている王様を見た。
「ねぇ、やっぱりティナも一緒に行かない?」
ティナの手を取り、セリスが共にと誘う。
これはこれで、セリスの隣のロックがギクリとする。
「ま、まぁ、俺は構わないんだけどさ!買い物して、ちょっと食べてくるだけだしな!」
彼的には久し振りに「買い物」という名目でセリスと出掛けられるのが楽しみだったのだが、ティナが絡むとなると話は別。
そう、今、ブラックジャックに残るメンバーが、ティナとエドガーだけになっているのだ。
セリスに手を取られたまま、ティナは困ったような顔をする。
「でも、私知ってるわ。そういうのをデートっていうんでしょう?」
「な…ッ!」
ティナの口から出そうも無い単語が出てきて、セリスの顔が一気に赤くなる。
セッツァーはつまらなさそうに「けっ!」と吐き捨てると「付き合ってられねぇ」だのと、文句を言いながら先に出て行ってしまった。
「い、いいのよ、ティナも一緒にデートしましょうよ!」
「え…でも、エドガーが…。」
ティナが言い終わる前に緋色のマントの中に包まれてしまった。
「ちょ、ちょっと、エドガー!!」
セリスの抗議も空しく、目の前の王様は余裕たっぷりに微笑んでいる。
「まぁまぁ、皆が心配するような事はしないよ。」
口をパクパクさせて唖然とするセリスを、ロックが半ば強引に連れ出す。
このままセリスとエドガーの「連れて行く・面倒を見る」だの、面倒臭い事になったら日もトップリ暮れてしまう。
「大丈夫だって、ティナが一番強い事くらいセリスだって知ってるだろ?」
ロックの言う事も一理あるが、相手が悪すぎる。
行く町先々で「美しいお嬢さん」だの「君のような女神は見た事がない」だの、とにかく手癖が悪い王様なのだ。
ありとあらゆる不安な想像で胸をいっぱいにしたセリスは、すっぽり抱きすくめられてしまったティナに向かって叫ぶ。
「あぁぁ〜、もう、ティナ!何かあったらトランスしてでも逃げるのよ!!」
まるで断末魔のようにセリスの言葉が扉が閉まると共に消えた。
マントから顔を出したティナはエドガーを見上げて呟く。
「…いってらっしゃい、言えなかった。」
「そうだね、おかえりなさいはちゃんと言おうね。」
蕩ける様な笑顔でエドガーは答えた。
ラウンジのソファにティナを座らせると、エドガーはてきぱきとお茶の用意に取り掛かる。
初めてティナがフィガロに来た時も、不安がるティナを落ち着かせる為に紅茶を淹れたのを思い出す。
ミルクは多めで、砂糖は少しで…。
彼女が好むほど良い加減にしたミルクティーを差し出す。
「ありがとう…!」
ティナはエドガーが淹れてくれる紅茶が大好きだった。
マッシュも大きな身体に似合わず美味しい紅茶を淹れてくれるのだが、彼女には少し甘さが足りないのだ。
「今日は眠くならないのかい?」
いつも昼前にはウットリと寝ぼけ始めるのだが、今日のティナは冴えている顔つきだ。
「うん、昨日、戦いに出てないからかも。」
「そうか、調子が良いのは素晴らしい事だね。」
ティナの隣に腰掛けると、そっと額にキスをする。
出会った頃から相変わらずの事で、ティナは顔色一つ変えない。
あまり人に触れられるのが好きではないティナは、自然と触れてくるエドガーが心地良かった。
いつの間にか抱きしめていられたり、手を繋がれていたり、こうして額にキスをされていたり…。
ティナにとって「自然」である事は、何より重要なのだ。
「私、セリスと一緒に居るの好きよ?」
突然の告白にもエドガーは「うん?」と言って、最後まで聞こうとする。
言葉も感情足りないティナは、考えがまとまらない内に話を始める事が多かったからだ。
「一緒なのに一緒じゃないの。でも、セリスの事好きなの。」
ティーカップに残るミルクティーを見詰めながら、ティナは嬉しそうにしている。
そんなティナの猫のような毛に指を絡ませ、エドガーは「うんうん」と相槌を打った。
「セリスも私が好きって言ってくれるの。でもね、セリスはロックも好きなのよ?」
ティナは視線をエドガーに移して、少し困った顔をして言葉を捜す。
うまく続けられない様で、エドガーはカップをテーブルの上に置かせて両手を取った。
「…ティナはそれが寂しいのかい?」
その問いにふるふると首を横に振ると、下を俯いてしまった。
「…分からないわ。寂しいのかしら?」
まだティナは色んな感情が足り無すぎるのだ。
あまりに幼くて、あまりに純粋で、エドガーは彼女を美しいと思う反面、その綺麗さが怖かった。
ただ今は彼女を抱きしめる事しか出来ず、ただただ頭を撫で続けた。
「きっとティナもいつか、セリスのように特別に想う人が出来るよ。」
ティナが嫌がるように王の腕から離れて、その蒼い瞳を見つめる。
「本当…?」
その相手が私ならばいいのだけど…、心の中で思い留まりエドガーは微笑んだ。
また、額にキスをしようとした瞬間、ブラックジャックの出入り口が開いてセッツァーと視線が合う。
「な…ッ!エドガー、てめぇ!!」
咥えていたタバコを落とし、慌てて二人を引き離す。
「ティナ!おめぇもしっかりしろよ!!」
各自に分け与えられた部屋の一つにティナを押し込むと、セッツァーがニコニコしてるエドガーを睨み付ける。
「ほらな!イヤな予感がして戻ってみりゃ、やっぱりコレだッ!鬼畜野郎めっ!!」
「あはは、何もしてないのに鬼畜とはまたひどいな。」
飄々とするエドガーの態度が、更にセッツァーの逆鱗に触れる。
「後でセリスにも言い付けてやるからなッ!!」
覚悟しろよ!と自分の部屋へ、バタバタと入ってしまう。
「…ふむ、前途多難だな…。」
後でセリスに何と言われるのやら…、頭を痛くしたがティナの事を想うとつい、笑顔がこぼれてしまって…。
「障害がある方が燃えるとか、なんとやらだな。」
決戦前だというに、この穏やかな気持ちが複雑な砂漠の王であった。
+++ あとがき +++
なんとも勝手な魔大陸決戦前妄想です(´ω`)
うちのティナは皆から大事にされてて、本人はその事に気付いていなかったりします。
エドガーは「幻獣を守れ」イベント辺りから意識していて、ゾゾでティナが復帰してからは堂々と好きだと振舞っていたり。
何も分かって無いのはティナだけなので、危なっかしいたらありゃしないのです。
セリスはセリスでティナを妹のように可愛がっているし、セッツァーは人間離れしたティナの可愛さに中てられてるのです。
うん、皆ティナが大好きなんだよ!ヽ(´ω`)ノ
今回はセリス、セッツァー、エドガーでティナを取り合うのが書きたくて、こうなりました。
ロックも微妙に混じってるケドね(笑)