デジモンドライブ〜十二体の暗黒デジモン〜


第1話「冒険の始まり」


 2000年。研究者達が、コンピュータの中に未知なる生命体がいることを突き止めた。
 コンピュータプログラムである生命体はデジタルモンスターと名づけられ、各国の研究者達によって調べられた。
 当初は、コンピュータの中に生物など存在しないと言う否定派と、存在を認める肯定派とに分かれ、
それぞれの間で激論が交わされて来た。
 しかし、デジタルモンスターの長とも呼べる存在、イグドラシルが人間世界にアクセス。
人類にデジタルモンスターについて全てを語った。

 それから4年。否定派もその半分以上がデジタルモンスターの存在を認めるようになり、全世界に発表。
ついに人類はデジタルモンスター、通称デジモンを世界中で認知するようになる。

 さらに時は過ぎ、西暦2007年1月3日。
 物語はお台場に住む一人の少年から始まる。


「やった、ついに手に入れたぞ――!!」
 両手に15cm四方の長方形の箱を持って掲げながら、一人の少年が部屋の中でくるくると回っていた。
 彼の名は燈野太陽。お台場小学校に通う5年生。
「お年玉でようやく買った新発売のデジヴァイス・DD……くぅ〜、早く遊びたいぜ!」
 ベッドの上に腰掛けると、太陽は箱の包装を破くように解いていく。
 全ての包装を剥がし終えると、中から箱と同じ長方形の、やや厚めのカードが現れた。
 大きさはテレフォンカードぐらいだろうか。厚さは携帯とほぼ同じか、それよりやや厚い感じである。
 表面の上部には液晶画面。その下はボタンなのか、円形にX印が施されている。
 カラーリングはオレンジと左右に走る銀色のライン。
 太陽はそれを両手で握り締め、嬉しさに頬が緩み、にんまりとした笑顔になる。
「よーし、早速電源を……」
 左側にある切り替え式のスイッチを入れる。カチっと云う音と共に、液晶画面が光り、
ぴんぽろーんと云う音と同時、よく見るBAN○AIマークが現れた。
 そして英語で「ようこそ」と言う音声メッセージと共に、日付入力画面が現れる。
 太陽は下にあるボタンで操作するんだな、と判断。慣れた手つきで日付を合わせて行く。
 決定ボタンを押し、次は時刻入力画面へ。太陽は部屋に掛けてある壁掛け時計で時刻を確認。
 午後2時15分と入力し、決定ボタンを押した。
 次に名前入力画面へ。ローマ字入力のようだ。太陽の学校では英語も科目として入っている。
 少し迷うような手つきで【TAIYO HINO】と入力、決定ボタン。
「これで全部かな……」
 全ての設定を終え、いよいよデジタマが孵るのを待つだけだ。……しかし。
 10分経っても何も起こらない。
「あれ?」
 普通、携帯ゲーム機のデジタマは5分程度で孵る。然し、10分経っても何も起こらない。
 まさか、故障か不良品か? そう懸念し、いやもしかしたら
何かやらないといけないのかと太陽は取扱説明書に手を取った。
 因みに太陽は取扱説明書はあまり読まない性格だ。本人曰く「面倒臭い」だとか。
「…………ダメだ、何も書いて無い」
 特に何かしなければいけない訳でも無いようだ。だったらなんで? 太陽は首を傾げる。
 その時、デジヴァイス・DDが眩く輝き始めた。
 一体なんだ!? 太陽がそう口にした途端、何故か、切ってあったパソコンの
電源が起動し、太陽はその中へと吸い込まれてしまった。
「うわああああああああああっ!!!」
 後に残ったのは、がらんとした太陽の部屋だけだった。



 ここはデジタルワールド。
 その中のさらに中枢。中心に水色の宝玉球が置かれている。
 その宝玉球の正面から見詰め、跪いている一体のデジモンがいた。
「どう云うことです……イグドラシル!」
 白いマントに白いボディ。メタルガルルモンの腕とウォーグレイモンの腕を
持つ聖騎士、オメガモンは言を荒げながら叫んだ。
「口を慎めオメガモン。イグドラシルの御前であるぞ」
 彼の叫びを嗜むように、漆黒の躰を持つ巨体な聖騎士、クレニアムモンは言った。
「だが!」
「落ち着けオメガモン。叫んでも何も始まらない」
「しかしデュークモン!」
「あーやだやだ。ちったぁ落ち着いたらどうだい、リーダーよ。ま、俺様はお前を
リーダーだなんて最初(はな)から認めてないがな」
「何?」
 ロードナイトモンの蔑むような言葉に、オメガモンの瞳が据わる。
「まぁまぁ二人とも」
 その間に割って入るように、デュナスモンが一触即発の二人を嗜める。
「喧嘩なんかしてる場合じゃないでしょう。イグドラシルからのお言葉を聞かなくちゃ」
 口調はどこかおかまっぽいがデュナスモンの言う通りだ。
 そう思ったオメガモンとロードナイトモンは互いにそっぽを向きつつ、改めてイグドラシルへと向かい合う。
「済みませんイグドラシル。……しかし、今の指令は本当ですか?」
 オメガモンの問いに応えるように、宝玉が青く発光する。
 彼らはそれを肯定と判断。
「御意。イグドラシルの御心のままに。……全デジモン抹殺に着手します」



 場所は変わり、緑広がる草原が広がっていた。
 そこにうつ伏せで倒れていた太陽は、鼻に止まっていた蝶々のくすぐったさで目が醒めた。
「……ここは?」
 むくりと上半身を起こし辺りを見回す。一見するとただの草原。しかし、空を見て彼は驚いた。
「なんだ……あれ?」
 空に広がっているは普通の青と白い雲。だが、普通ではありえない、電子部品みたいなものが薄く見えている。
 それだけで、ここが普通の世界ではないことに、太陽は気がついた。
「ここ……どこなんだ?」
 立ち上がる。すると、どうにも頭が重い。
 抑えようと右手を出した瞬間、何かに触れた。
「起きた、太陽?」
「うわわっ!」
 頭上に声。太陽は驚いて「それ」を頭から引っぺがしてぶん投げた。
 ぽよんぽよんと数回バウンドして木の幹に激突し、それはぐったりとなった。
「いってぇ!? おい、何するんだよ!」
 しかしそれも一瞬で、怒りを孕んだ声で丸い物体は怒鳴る。
 太陽はただそれを呆然と見詰めるしかなかった。

「で、お前は誰だよ?」
 胡座を掻きながら太陽は丸い物体に問う。
 丸い身体にエリマキトカゲのような襟巻きが付いており、尻尾が生えている。
「オレ、フリモン」
「フリモン?」
「そう。お前の世界で言う処の、デジタルモンスター」
 フリモン、と名乗った物体は尻尾をフリフリさせながら言った。
「デジモンだって!? ……じゃあここは」
「そう。デジタルワールド」
「俺……どうしてこの世界に」
 記憶を辿る。
 確か、お年玉でようやく買ったデジヴァイス・DDの電源を入れてあれこれ設定して……
何も起こらなくて変だなって思って説明書読んでたらいきなり光って、
おそれでパソコンの中に吸い込まれたのだ。
「これに何かあるのかな」
 そう言って太陽はデジヴァイス・DDを取り出す。それを見た瞬間、フリモンの尻尾がピーンと伸びた。
「それは選ばれし子供だけが持つとされるデジヴァイス!」
「選ばれし子供?」
 太陽は反芻するように言う。フリモンは興奮しているのか、こくこくと物凄い勢いで首を縦に振る。
「まぁなんでもいいや。元の世界に帰るにはどうしたら良いんだ?」
「え、帰りたいのか?」
「当たり前だよ。こんなテレビやゲームも何も無いところに居たって詰まらないよ。
デジモンは好きだけど、デジモンは所詮データの中の生き物だし。
兎に角、お母さんも心配するし、早く現実世界に戻らないと」
「太陽……」
 フリモンは悲しげな瞳で太陽を見詰める。まるで「それは違うよ」と言っているようで。
けれど、彼にその瞳の意味は伝わらない。
「取り敢えず歩いてみる。何かわかるかも知れないし。じゃあね、フリモン」
 一人歩き始める太陽。フリモンは慌ててその後を追った。
「付いてこなくて良いのに?」
「良いじゃないか別に。オレ達はパートナーだぜ」
「誰もそんなこと頼んで無いよ」
「まぁまぁ」
 フリモンは言いながら頭の上に登る。どうやら気に入ったらしい。
「ちょっと、重いよ」
 太陽がフリモンをどかそうと両腕を伸ばした時だった。
 ドォーンと言う激震と共に、太陽の背後を覆うように影が伸びている。
「なんだ?」疑問に思い振り向く。「……なんだあれ!?」
 太陽の背後には、翼を広げた巨大な鳥が立ち塞がっていた。
「あいつは……サンダーバーモン!」
「サンダーバーモン!?」
 太陽がオウム返しで尋ねる。
「デジヴァイスであいつのデータが解るはずだよ、太陽!」
「どれ……?」
 太陽はデジヴァイスを取り出す。液晶画面には確かにダルダモンのデータが表示されていた。
「サンダーバーモン。アーマー体、巨鳥型、データ種……」
「キュエエエエエエ!!!」
 甲高い鳴き声と同時、サンダーバーモンが翼を羽ばたかせる。
 無数の羽が電撃を帯び、太陽とフリモンへと降り注いで行く。
「うわああ!」
 太陽はギリギリその攻撃を躱すが、サンダーバーモンの猛攻は止まらない。
「こっのおおっ!」
 フリモンが相手の顔目掛けて飛ぶ。
「フリモン!?」
「シッポビンタ!!」
 自身に付いている尻尾を遠心力を利用して思いっきり振り下ろす。
 パシィン! と言う高い音が響くが、サンダーバーモンを僅かに牽制する程度しか出来ない。
「キュオオオオ!!」
 サンダーバーモンは片方の翼でフリモンを弾き飛ばす。
「うぐっ!」
 地面に激突し、フリモンは苦しそうに悶絶する。
「フリモン!!」
 太陽は慌ててかけより、フリモンを抱き起こす。
 身体はあちこち傷だらけで、とても苦しそうだ。
「……フリモン」
「だい……じょう……ぶ、だよ」
 弱々しく、口を開く。喋らなくて良い、と太陽は叫ぶが、フリモンは言葉を続ける。
「たい……ようは…………オレが……まも……る」
 太陽は思う。
「俺は今まで、デジモンはただのデータだと思ってきた。でも、違う、違う!
デジモンは生きている、生き物と同じ……生きているんだ! やい、サンダーバーモン!
これ以上俺のパートナーを傷付けてみろ、許さないからな!!」
 ぎゅっとフリモンを抱き締め、太陽は目の前に立ち塞がる巨大な鳥を睨みつける。
 サンダーバーモンは雄叫びを上げて大空高く飛翔。一気に急降下して来た。
「ギュオオオオオオオオッ!!!」
「太陽はオレが守るっ!!」
 フリモンは太陽の腕から抜けると、渾身の力を篭めてサンダーバーモンへと突進する。
「ダメだ、フリモ――ン!!」
 手を伸ばしてとめようとするが、間に合わない。
 しかし、太陽がぐっとデジヴァイスを握り締めた時、眩い光がフリモンを包み込んだ。
「え?」
 光に包まれたフリモンの身体が分解されていく。いや、違う。新たな姿となっていく。
「フリモン、進化ぁ―――!
 叫び。金色の輝き。サンダーバーモンも光に目を奪われ、急降下を止めた。
 フリモンの身体が変わり、4本足の新しい身体へと成長する。
「レオルモン!!」
 いや、それは進化。デジタルモンスターが持つ特徴の一つ。自身の身体(データ)を分解、
再構成して更なる身体を得る、まさにデジモンだけが持つ力。
「レオル……モン?」
 初めて見るデジモンの進化に、太陽は驚きを隠せない。
ゲームの中では今までだって普通に見てきた。けれど、実際にこうして見るのは初めてなのだ。
 凄いと思った。純粋に、かっこいいと思った。
「レオルモン。成長期、聖獣型、ワクチン種……」
 けど、進化しても成長期だ。成熟期と同じかそれ以上の力を持つアーマー体に勝てるはずが無い。
「レオクロー!!」
 レオルモンは空中でホバリング停止しているサンダーバーモンに向かって鋭い爪を立てて跳躍、切り裂く!
 僅かにダメージはあるものの、致命傷とまでは行かない。レオルモンは着地し、もう一度必殺技を与えに飛ぶ。
 しかし、サンダーバーモンの攻撃はさらに激しさを増す。翼に電撃を集中させ、
レオルモンに向けて羽ばたかせる。巻き起こる風は竜巻となり、稲妻を帯びて迫り来る。
 これがサンダーバーモンの必殺技「サンダーストーム」だ。
「逃げて、太陽!」
「で、でも」
 迫り来るサンダーストーム。だが、レオルモンは一歩も退かない。いや、退けない。退いたら太陽が危ない。
「大丈夫、太陽はオレが守るから!」
 レオルモンと叫びと同時、重く響く叫びがあった。

「獣 王 拳!!」

 巨大な獅子の顔が、サンダーバーモンの放つサンダーストームを掻き消したのだ。
 晴れる煙。太陽とレオルモンは振り向く。
 崖の上、そこに佇むは一本の剣を腰に携えた歴戦の王者、レオモンだった。



■登場デジモン紹介

フリモン

幼年期:レッサー型 属 性:なし

太陽がデジタルワールドに来て出会ったパートナーデジモン。
首にフリルを持つレッサー型デジモン。フリルは毛の一部が硬質化して出来ており、危険が迫った際には体を覆うことで、体を護る「鎧」として使用している。 好奇心が非常に旺盛で、動くものすべてに反応してしまう習性を持つが、自身の尻尾にも反応してしまうため、尻尾を追いかけて、その場でくるくる回っている 姿を目撃されることが多い。長い尻尾に遠心力を加えた『シッポビンタ』はそれなりの威力があり、成長期デジモンでもクリーンヒットされると一瞬昏倒するこ とがあるらしい。


レオルモン

成長期:聖獣型 属 性:ワクチン

黄金色の体毛を持つ聖獣型デジモン。生存個体が非常に少ないらしく、近年まで存在が確認されていなかった。ナワバリ意識が非常に強いデジモンで、同種のデ ジモンであったとしても自分のテリトリーに進入したものには容赦しない。頭の毛は警戒時に静電気を帯び、威嚇の音を出すという。必殺技は鋭い爪で敵を切り 裂く『レオクロー』とキバで敵の急所を狙う『クリティカルバイト』:『クリティカルバイト』は成熟期のデジモンですら一撃で沈める爆発力を持つが、成功率 は低い。


サンダーバーモン

アーマー体:巨鳥型 属 性:データ

「友情のデジメンタル」で“アーマー進化した巨鳥型デジモン。雷鳴のように轟く鳴き声で雷雲を呼び寄せ、額の角で雷をコントロールする能力を持っている。 気性は荒いが仲間思いの性格である。得意技は電撃を帯びた無数の羽を雨のように撃ち出す『スパークウィング』。必殺技は電撃をまとった翼を羽ばたかせ、稲 妻の嵐を巻き起こす『サンダーストーム』。


レオモン

成熟期:獣人型 属性:ワクチン

己の心身を鍛え上げ、日々凶悪なデジモンに立ち向かう正義の獣人型デジモン。