うわ言のように繰り返し名前を呼ばれる。探すような声音に、ここにいると囁き、汗で湿った銀髪を梳くように愛撫した。

 体を投げ出し傷付けるような行為で自分を保とうとする、あるいは忘れようとする片割れを時間を掛けて解き解し、教え込んでいく。
強引さに付き合いながらも、それとは気付かれないように少しずつ。痛みではなく、自分だけを見るように。
以前は主導権を奪われるのを嫌がり、時には抵抗することすらあったが、今は無防備に身も心も任せて腕の中に納まっている。危ういほどに。
本人は気付いていないだろう、その安心しきった様子に内心苦笑する。
自分の膝の上でうっとりとした眼差しを向けてくる片割れの頭を引き寄せ、唇を吸う。舌を差し入れると、応えるように絡めてくる。
抱えるように回した手を汗ばむ背中に這わせると、びくりと身体を震わせた。上気した肌を、どちらのものとも知れない汗が流れ落ちる。
唇を離すと名残惜しそうな溜息を漏らし、続きをせがむように首に腕を回す。顔を首筋に埋め、甘えるように擦り付けてきた。

 密着した身体の間で物欲しげに滴らせるそれに気付き、掌で包み込む。
「それは、やっ……!」
慌てて制止しようと手を掴んでくるが、構わず擦り上げた。濡れた音を立てて塗り込めるように扱かれる感触に、嫌々と首を振る。
嫌だと言いながら、それでもこの腕の中から逃げ出そうとはしない。気持ち良ければいいと豪語するだけあって、快楽の前にあっさりと陥落した。
否定の言葉はすぐに喘ぎに変わり、押し戻そうとする手は力を失って、ただ縋りつく。
「あ、あ、……も、駄目……!」
与え続けられる刺激に浅い呼吸を繰り返し、途切れ途切れに限界が近いことを訴えてくる。手は緩めずに、耳元に唇を寄せて名前を呼んでやる。
「あっ、あ、あぁああっ!!」
首を仰け反らせて体を大きく震わせると、ぎゅうと手足の指に力を入れて締め付けた後、一気に脱力した。

 ぐったりと身体を預けて、時折小さく震えながら余韻に浸る片割れの頭を撫でてやる。
「落ち着いたか」
穏やかになった呼吸音に声を掛けると、のろのろと顔を上げて小さく頷いた。片割れの肩を抱いてゆっくりと押し倒す。
覆い被さると、自分を捕らえた相手を見上げて手を伸ばし、頬に触れてくる。
「逃がさないでよ」
折角捕まってあげたんだから。悪戯っぽく笑う。
「負け惜しみを」
逃がす積もりもないが。呟いて、不敵な笑みを浮かべると、再びその唇を塞いだ。