自分から誘って体を開き、受け入れる癖に、体を重ねるたびに傷付いたような顔をする。
理由を聞いたところで、何でもない、平気だから、続けろと返されるだけだった。痛みが辛いのなら、と言えば痛い方が良いとすら。
一度は一つになったというのに、余計に何を考えているのか分からなくなる。
他人を理解しようなど到底無理な話だ。腕の中に納まっている片割れは、赤の他人以上に遠かった。

 乞われるままに抱きすくめ、口付け、組み敷いた。眉根を寄せ、途切れ途切れに喘いでいる相手を見下ろす。
視線に気付いたのか、涙で潤んだ目で見返してきたが、そこに普段の意思の強さはなく、どこか遠くを見ているようだった。
心は置き去りにしたまま、体はただひたすら貪欲に快楽を求める。その繰り返し。
本当は何が欲しいんだ。
汗で額に張り付いた銀糸を指で払う。翳した手を何気なくそのまま滑らせ、虚に宙を見つめる瞳を塞いだ。
と、引き攣るような呼気を漏らし、びくりと体が震えた。驚かせたのだろうか。掌を退けると、今度ははっきりとした紅い瞳と視線が合った。
嫣然と微笑み、迎え入れるように両腕を伸ばしてくる。
その姿に、これは償いなのだ、そう思い込もうとする。彼を抱きながら、自分もまた溺れているのを自覚していた。

 こうして触れていれば満たされると思っていた。二人に戻ってからずっと。
何度体を重ねたところで渇きは癒えることはなく、終わりのない飢えがじくじくと体を蝕む。
足りない部分は、きっと片割れの中に全部置いて来てしまったのだろう。空っぽの自分を今だけでも埋めたくて縋り付く。
彼が困惑しているのは分かっていたが、説明できないし、する気もない。拒絶されないのを良いことに、快楽に身を任せた。

 不意に周りが暗くなって、引き戻される。いつの間にか眠ってしまったのだろうかと驚いて、小さく声を上げた。
視界はすぐに戻り、目の前に相手の姿を認めて安堵する。垂れ下がってくる金糸に肌をくすぐられて、笑みが零れた。
全部が欲しくて手を伸ばす。一見無表情な青い瞳を、知らないものは見逃してしまう程度ではあるが、感情の色が掠めるのがおかしかった。
もう一度一つになりたいと言ったら、どんな顔をするだろうか。もう一度その手で。
これが望み。
自分を殺した手で優しく愛撫され、痴態を晒す。覆い被さってくる相手に腕を回し、足を絡めて、より深いところで繋がろうとする。
奥を抉られ、擦られて、背中を弓なりに反らせた。全身が震え、熱い吐息が漏れる。
君が奪ったんだから、返してもらうよ。何もかも。その背に爪を突き立て、昏い愉悦に口の端を歪めた。