「おかしいと思わんのか」
「何が」
膝の上に座ったそいつは小首を傾げた。
同じような作りの服でよかったよね、と手際良く法衣を脱がしていく。
「この状態が、だ」
渋面を作って吐き出すように言うと手を止め、暫し考える素振りをする。
「兄弟だから?」
「そうではなく」
「男同士だから?」
「それもひとまず置いておけ」
それはそれで大問題なのだが、今はその話ではない。流される自分もどうかと思うが。こめかみを押さえる。
そんな様子を見て、もしかして、と迷ったような声。
「突っ込まれる方が良かった?」
顔が引き攣る。
「なし崩しだったし聞かなかったのは悪かったよ。気持ち良ければ僕はどっちでも構わな」
ごすっと鈍い音がして、そいつは頭を抱えて蹲った。
グーで殴るなんて酷い。涙目で睨んでくる。
「……何なんだよ」
拗ねたような声音に、別の感情が混じる。迷子の子供のような。
「……そんな不安そうな顔をするな」
頬に触れてやる。
「俺はここにいる」
いなくなったりしない。だから。
返事の代わりに、首筋に顔を埋めてくる。
「じゃあ、続きしようか」
もう一度、いい音がした。