「翔ちゃんすごいよ盛大にねぐせが」
はい、と鏡を渡す。寝ぼけ眼でそれを見た翔ちゃんは、ぱちぱちと二回まばたきをして、ぱたりとまたベッドに倒れてしまった。あらら。
「・・・ありがと・・・」
「うん。あ、お湯張ってこようか」
「うん・・・」
掠れた声で返事をする翔ちゃんに、ついくすり、とわらってしまう。全くもう。
バスタブはつるりとしている。どこに指をすべらせてもそうで、わたしは感心する。
さすがだ。ねぼすけなのに。巷でよく言うあれだね翔くん。ギャップ萌え!
ぐあっと蛇口を全開すると、ものすごい勢いでだばだばとバスタブの底にお湯が跳ね返りながらたまっていく。まあこれなら15分やそこらでいっぱいになるだろう。
さて。
「そろそろ起きあがろうか翔ちゃん」
ベッドまで戻り翔ちゃんを起こしにかかる。布団を肩まで下げてゆすると、ううん、と返事とも寝言ともとれる声を出した。まだおねむですかねぇ。
そのままするする、ちょっとずつ布団をひっぺがしていくと、翔ちゃんが寝返りをうってわたしのほうを向いた。
「・・・・・・」
「うん。さあ朝です」
起きてよ、と言いつつ彼の大変なことになっている髪の毛をいじると、謎の重力とぬくもりに襲われた。
気がつけば布団の中である。せっかくはがしたのに!また入っちゃったよわたしまで!
もぞもぞと謎の重力によってわたしを布団の中に引き込んだ要因である翔ちゃんの手が、わたしの肩をさがして動き回った挙句、いったん静止したと思ったらより奥へとわたしをひきずりこんで最後にはがっちり抱きすくめた。
あ、あったか!寝起きの体あったけぇわ!ぐええっしかしなで肩で一瞬ほっせえと思えば意外と実際に見て触ってみるとそうでもなくて細マッチョな翔ちゃんの腕でホールドされると身動きが取れん!
「しょ、翔ちゃーん・・・起きてよー・・・」
これはどうしよう。
ああ、お風呂、お湯が・・・・・・翔ちゃんバスルームが大変なことになります。
朝を縁取る指
(120902 あい子)
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