※兄妹の境界をしれっと越えちゃってるので、苦手な方はご注意ください ※学ヘタ? まったく残暑ってやつは手加減を知らないと思う。 おかけで最低一日一アイス摂取しないと耐えられたもんじゃない。 「あ…あづい…」 そろそろ食べたいところだった。いまうちの冷凍庫ってどのアイス入ってたっけ。アイスキャンディー?カップアイス? なくなったらいつのまにか兄が補充してくれているので、どのアイスがチョイスされてくるのかは見に行くまでわからない。わたしが買いにいったってかまわないのだけど、兄はやんわりわたしを制して学校帰りだとかで買ってくる。特に反抗してまで欲しい種類やメーカーのものがあるわけではないので、わたしはそうしてくれる兄に甘えることにしている。 それに、兄が選んでくるものにはずれはないのだ。 動こうにもだるくてめんどくさい。そのまましばらくリビングででろでろしていると、テレビを見にやってきたらしい兄がアイスを手に持って現れた。「今日もだるだるやねぇ、」今回はアイスキャンディーらしい。おそらくちょっと平たい、シャーベットみたいなかたさのものだ。ソーダ色。 ああ、タイミング良いっすわーにーちゃん。 「にーちゃん、わたしもそれほしいー」 「うん?ええよー、どーぞっ」 ずいっと差し出されたのは兄が瞬間移動でもして目にも留まらぬ速さでわたしの目の前にいない限りすでにひとくちふたくち食べちゃった系アイスである。そして溶けかかっている。 「ええー…新しいのくれないのー?兄妹だからってひどいわぁー」 「まぁまあそう言わんと。な?ほら」 あーん、と兄が催促するのでしぶしぶ頂く。 あ。 お兄ちゃんの持ってる棒付近のアイスが、溶けて、滴っちゃいそう。 「……っ」 「あっ、ごめん」 急いで反射的になめとっていた。兄の顔がすこし歪んだ。棒のとこを狙ったつもりだったのだけど、ぎりぎりで兄の指に舌先が触れてしまったような気がしたので謝った。 わたしたちは小さいころから、ものをゆっくり食べるので、アイスを食べるとき、よく両親によく早く食べないと溶けちゃうから、と注意されたものだった。アイスキャンディーなんかはとくに、カップみたいに入れ物に入っていないので、溶けかかってきているところからすぐに食べなくてはいけなかった。そこ!溶けてる!と言われるたびに、こぼして怒られないよう必死になめとっていた。 だから、兄の顔が歪むのを目撃するとは思ってもみなかった。お互いのなら、自然なことだと思っていた。 そうか、けど、さすがに手まで食べられて不快だったのだろう。 これからはやめろと怒られるだろうか。 「お兄ちゃん?」 瞳の奥がゆれた。 彼のスイッチが入ったしるしだった。 わたしは何か、彼にしでかしてしまったみたいだ。どうしたの、とわたしが尋ねるよりも、呼吸を奪われるほうが先だった。 「っんん、」 彼の唇はわたしに息継ぎすら困難にする。ため息がもれて、熱い。どっちのなのかもわからなくて、わたしは自分の思考が蕩けてきたことを知った。 「お、にいちゃ…、あ、…なにっ、いきなり――…なんでっ…?」 そこでやっと嵐のようなキスが止まった。 潤む目をわたしは瞬きで明瞭にする。 「兄妹愛?」 「あのねぇ…」 熱っぽい瞳を隠しながらにっこり微笑まれた。 息を整えていると、兄がぽそりと呟く。 「…やって、指…」 「指?ああ、指ごとなめちゃったこと?…それでやっぱり怒ったの?」 「違う……や、違わなくもないけど…怒ったんやなくて…あんなんされたらアカンよ――さいきん、家でとふたりっきりてことないし」 ふかふかだなあと思ったらソファーに押し倒されている。 「………き、兄妹はこんなことしませんんん」 「今日はリビングが広いわぁー。なぁ?」 聞いちゃあいなかった。スイッチは切れていなかったのだ。 ああ、昨晩から両親は旅行中です。 考えをめぐらせていると鎖骨をなぞられて、あ、と声が出た。目が合う。「そんなこと、思ってないくせに」彼が言う。もう兄の瞳ではなかった。「」 兄妹愛なんて、そんなの、お兄ちゃんが一番思ってないじゃない。 ただの愛では |