彼女は怒るとき、はらはら涙を溢しておこる。
相手を責めるために口にした言葉でも、それは結果的に彼女自身を傷つけるものになって、彼女をも抉るのだ。
でもそれがどうしようもなく憐れでかわいいから、俺はを虐めてしまう。


支配欲?独占欲?
――もっと、俺のために。









「――どうしてっ…そういうこと、言うの…」


アントーニョに強く言われると、情けないことにわたしはすぐ泣いてしまう。泣きたくない。ほんとはなにを言われたって毅然としていたいのに。


「……ごめんなぁ、ちょっと言い過ぎやんな。…でも、がかわいすぎるからあかんねんで?」


腫れたわたしの瞼に、アントーニョの唇が落とされる。アントーニョはひどい。
さんざん言ってわたしを怒らせたあと、甘いことばや唇でわたしを惑わせる。そうなったら、わたしはどんな気持ちでいたらいいかわからなくなってしまう。
戸惑いからわたしが気づいたときにはもう遅くて、彼の腕の中でわたしはすっかりあたためられてしまっている。
そういうことだ。


…、なぁ、好き、好きや、」

「あ、アントーニョ、」


わたしの手首――の、鬱血して青くなっているところに、アントーニョが唇を寄せる。くすぐったくって、ちょっと痛い。
うらめしく思ったって、わたしは毎回アントーニョに絆されて、すきだって感じて、でもそれでいいと思っているのだ。わたしを痛めつけてもすぐに泣きそうな顔をして、ごめんなぁ、と言うから。


わたしもすきだよ、と言うと、このままずっとこうしてたい、とアントーニョが呟いた。














ジオラマエデン





( /120601 あい子)