私は生まれてこのかた、男のひととおつきあいをしたことがない。 ひとつ断っておくと、年頃の女の子らしくしようという気持ちはちゃんとある。 だからそういうことをすんごく怠けている、というのが理由であるわけではないように思う。ちょっと太ったかなあ、って思ったらダイエットしてみたり、外にでるときはちゃんとおしゃれしよう、って思うから着替えには時間をかけるし、お化粧だってあまりばっちりとはできないけれど、すきだ。 しかしまったく出会いというのは私にふりかかってきてくれないのだった。運命もなにもない。ほんとに、一度も。 努力がたりないのだろう。 「たしかにわたしはふつうの人間じゃないし、いちおう、国だけど。――でも、恋くらい、してもいいと思うんだよなぁ」 「せやんなあ、フランシスなんかいっつもアレやもんなー」 アントーニョはうーん、と腕を組んで考えこむようなしぐさをする。悩ませてしまったなぁ。考えてくれるのはとても嬉しいけれど、やさしいアントーニョをあんまり困らせるのは、ちょっと申し訳ない気がする。 彼はどんなくだらない話でもいつも真剣に聞いてくれる、数少ないわたしの親しい昔馴染みだから。 「まぁ、もっともっと女をみがけ!ってことかねー。道のりは長いですなぁ。…えっと、そろそろきょうは帰るね!相談きいてくれてありがとう」 冗談っぽくまとめて、ためいきをついてしまわないように、そそくさとカーディガンを羽織る。 アントーニョといるとつい、いごこちがよくてずっと話していたくなってしまう。だからよく遊びに来ちゃうんだけれど。 ごちそうさまでした、と言って彼を見上げると、アントーニョがちょっと目をふせながらつぶやいた。 「俺は、いまのままでも十分魅力あると思うで、」 えっ?チュロスをのせてくれていたお皿をひっくりかえしそうになって、思わず聞き返すと、わたしをみつめる視線とぶつかる。 与えられたことのないまなざしにどうしたらいいかわからない。アントーニョの澄んだオリーブ色の瞳。小麦色の肌をした手。 「なんで、こんなにがかわええってわからへんのやろなあ」 焼け落ちる視界
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