日差しを受けて赤く光るトマトは、つやつやしていてとてもおいしそうだった。 「きれい」 とって入れて、とって入れたら、かごの中はすぐにいっぱいになる。 ぎっしり。これが、血となり肉となって、彼と、いろんな国の人たちを生かしている。 ぱちん、ぱちん。 そう思うと、この作業が神聖なものに感じる。 アントーニョはすごい。世界中のひとのためになるものを、こんなにたくさん、広い畑でせっせと育てている。 「よっしゃ!もうええかなー、助かったわぁ、ちゃん」 「お役に立てて光栄ですよー」 近寄ってきたアントーニョが、トマトでいっぱいになった籠をひょっ、と片脇に抱えなおした。 捲った白いシャツから見える、日に焼けた腕。その腕がわたしに伸ばされる。 「おおきになぁ」 わしわしなでられると、とろけそうになった。力強いのにやさしいてのひら。 見上げる視界に降り注いでくる光がまぶしい。 男のひとの、匂いがした。 ひそやかなひかり
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