日差しを受けて赤く光るトマトは、つやつやしていてとてもおいしそうだった。


「きれい」


とって入れて、とって入れたら、かごの中はすぐにいっぱいになる。
ぎっしり。これが、血となり肉となって、彼と、いろんな国の人たちを生かしている。
ぱちん、ぱちん。
そう思うと、この作業が神聖なものに感じる。
アントーニョはすごい。世界中のひとのためになるものを、こんなにたくさん、広い畑でせっせと育てている。





「よっしゃ!もうええかなー、助かったわぁ、ちゃん」

「お役に立てて光栄ですよー」


近寄ってきたアントーニョが、トマトでいっぱいになった籠をひょっ、と片脇に抱えなおした。
捲った白いシャツから見える、日に焼けた腕。その腕がわたしに伸ばされる。


「おおきになぁ」


わしわしなでられると、とろけそうになった。力強いのにやさしいてのひら。
見上げる視界に降り注いでくる光がまぶしい。
男のひとの、匂いがした。











ひそやかなひかり





(短いですが、初夏っぽく /120517 あい子)