「・・・おいしい」
「せやろー?うそやないねんで」
よく食べよく寝てすくすく成長したというのを体現したような子だとは思っていたが、まさか作るほうまでちゃちゃっとやれてしまうとは思ってもみなかった。
大学に通い一人暮らしをする忠義に「いっつもご飯作ってもらってるし、今日は俺がやるな」と言われたものの、わたしは彼をてっきり食い専だと予測していたので「ほんとにできるの?」などと言ってはらはらしながら見ていた――のだが、完全にこれは想定外の展開である。
と、いうか、彼みたいな人にここまで出来るようにさせちゃうってそりゃ、与えすぎと違いますかね神さま。
もんもんしていたものの手と口は正直だったようで、あっという間に食べ終わってしまった。悔しいけどうまいです。
「ご馳走さまでした。ちゃんと生活、できてるんだねぇ」
「見直した?」
返事の代わりにえらいえらい、と唱えながら頭を撫でると、忠義は気持ちよさそうに目を細めた。
端正な顔立ちとは、ほんとうに彼のことだ。それでは飽き足らず、天は忠義にかわいさと、料理の才能までくれちゃっている。出血大サービスにもほどがあるのではないだろうか。その彼女のわたし――いったい、なにを持っているのだろう。体は丈夫だ。めったに病気しないし、風邪を引いてもちょっとしたやつなら寝たら治る。仕事をしている身には大事なスキルであると思う。・・・うん、それくらいしかない気がする。誇れるの。
そういうことを考えながら彼を見ていると、わたしは自分が今ここで、忠義の近くにいて、彼に触れていていいのかわからなくなる。
「――こーら」
「わ」
「俺という男がこんな目の前におんのにー。いま別のこと考えてたやろ?あーもーー、余計なこと考えられへんようにしたい・・・・・・・・・や、する」
「え、や、・・・った、忠義っ!?ひゃっストップストップ!」
でも忠義は、わたしがぼうっとしているときに何をいつも考えているのかをたぶん知っている。待ったをかけるタイミングが良すぎるのだ。深みに嵌るちょうど手前で彼の声はわたしを呼び戻す。
きっともう、それができるのは彼だけだ。このひとのじゃないと、だめになっている。
「ねぇ、俺、なんかちょっとした瞬間にな、いっつもどうしてんのかなーって考えんねん。いまご飯食べてるかなぁとか、そろそろ疲れてきてんねやろうなーとかって。 だからさ、も俺のこと、いちばんに考えとってよ」
わたしが黙るとすがるみたいに、彼の胸の内をささやき、わがままを言うようにわたしを慰める年下の彼を、いつの間にこんなに愛おしいと感じるようになったのだろう。
ここにおいで
(もとからよくわからないのに加え勢いのまま打ったのでエセ関西弁がひどいことになっておりますすみません…関西弁教わりたい /120901→150509加筆 あい子)
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