歯をみがいていると無心になる。ぼーっとしながらしゃかしゃかしていると、ばたん、と音がした。シャワー終わったか。わたしも入ろうかな、まだ時間あるし。蛇口をひねって歯ブラシを洗い、うがいをしながら着替えのことを考える。なに着よう。まだ寝たりないのかあんまりいい組み合わせが浮かんでこない。
・・・・・・・・・っていうかばたんていったのに智くん出た??
はた、と鏡を見ると普通に後ろに立っていた。智くんはわたしが気づいたとわかったからかうれしそうにあ、という口の形をする。
「さっ ささささ 智くん」
「おっ気づいたー」
「すいませんやっと気づいたけど!けど!風邪引くよ!なんで全裸待機!??」
「無になって歯みがきしてるからおもしれーなーと思って」
「服を着てから!!せめてパンツはいてからにしてよおおぉおあっち向いてええ」
「物音で気づいたらやじゃん?」
ねぇ?と鏡越しでわたしに同意を求めてから脱衣籠から智くんはトランクスを手に取る。あっちむいてと頼んだので智くんはわたしに背中を向けている。日に焼けた肌。きれいな背骨が湾曲した。 よし、はいたな。
「髪べっちゃべちゃじゃん」
「まだ乾かしてねーもん」
「あーでも智くん、髪の毛ぺったんこでかわいい」
振り向いて乾いたばかりのバスタオルで智の短い髪をわしゃわしゃふいてやると、むっつりした顔の智くんがお目見えした。
「うるせーよ」
「かわいいわたしの智くんってことでどーかな」
冗談ぽく言うと智くんは黙った。引き締まったお腹に目がいく。智くんはそういうのを、わたしにだけ注いで生きてるわけじゃない。彼はまぶしい世界のためのひとだ。
「、おまえはおれのだよ、ぜんぶ」
智くんはわたしをすぐ甘やかしてしまうのだからこまったものだね。
スポットライトのうらがわで
(20130108)
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