先輩と、大野さんは似ていると思う。
俺にまとわりつかれてもぜんぜん気にしなくて、むしろ甘い顔をするところとか、それをいいことにますます調子に乗って常にかまってもらいたくなった俺が、いじわるしたり嫌味言ったりしても、困ったような顔をしながら目じりを下げているところも。


ふたりがそんなお互いを、好く思っていることは知っていた。もっと言えば、放課後の彼らを見たときに確信していた。特に、大野さんなんかはたいぶキてるな、と。だが幸いなことに、先輩は自分の気持ちをまだ家族なんかに向けるそれだと思っていた。なんかね、あったかいんだよね、大野くんの雰囲気って。家にいるみたいな感じがするんだ。生徒会室で先輩を他のヤツから独り占めしていた俺が彼女に、先輩って、大野先輩と仲いいですよね、と振ったらそう返ってきたのだ。
そして大野さんの方も俺から見たら相当だろうと思っていたのだが、彼女がいないときを見計らってそれとなく探ってみると、先輩への気持ちにはどうやら気づいていないようだった。なるほど、と思った。ふたりは鈍さまでそっくりだ。


俺にとってはおいしい展開ですよ。ここから押せば、先輩は俺をあまやかしたまま、俺を意識するようになるだろうと思った。





「に、二宮くんわああ近い顔が」
「ええーだってこれくらいじゃないと先輩俺を見てくれないじゃないですか」
「やっちょっ窓からみんな見てる!とくに女子からの視線がやばい気がする!!」
「平気ですよ。せーんぱい」
「二宮くん!!!・・・そんな近くなくてもっわたし二宮くんしか見てないから!校門でキッスは死ぬから勘弁して!!」
「うふふ、そうですか?じゃあやめときます。あとのおたのしみってことですよね」
「・・・・・・あの、息継ぎできる感じでね、お願いします・・・」
「かーわいいなあ先輩は」


そしてここに至る。俺しか見えないんですって、先輩は。もちろん俺も、先輩に危害加えようとする子は容赦しないくらいにはあなたがすきですよ。まぁもっとも、一度危うく大野さんのいないところを狙われて屋上に連れて行かれそうになったのを発見して彼女を護送し、脅すつもりだったであろう女の子たちになにしてるんですか?って言ったらそれ以来誰も彼女をそういう目でみなくなった。俺ってそんな怖がるくらい冷たい目しちゃってたのかな?笑えるね。


教室の窓からの女子の視線が危険って先輩は言ったけど、あれね、みんな、俺たちのこと応援してくれてるひとたちばっかりですから。大丈夫ですよ、さん。











シュガーボーイ





(SUGAR舞台裏・二宮くんの場合 / 121227 あい子)