後輩の二宮くんはとてもかわいい男の子だ。
たとえば甘えるのがじょうずなところ。
たとえばわたしを先輩って呼んで、遠くにいても目が合えばよってきてくれるところ。
たとえばちょっと失敗したとき、顔が真っ赤になるところ。
たとえば、気を遣ってわたしに素敵ですよ、だなんてお世辞をいつも言ってくれるところ。
「ね、かわいいなぁ」
「ふふ。ずいぶん懐かれたよね」
「そうなのかな?」
「うん。おれはそう思うよ」
放課後、同じクラスの大野くんに二宮くんのことを話したら大野くんはにこにこしながら言った。大野くんは空気がゆるゆるしていてとても話しやすい。
わたしはHRが終わっても眠りっぱなしの大野くんを、生徒会の雑用の終わりがてら起こして、まだ日の出ているうちであればこうしてお喋りしている。(そのあといっしょに帰ることが多かったけれど、最近はそれがなくなった。二宮くんがわたしのそばによってきてくれるようになってからすぐに、彼はわたしたちの教室までやってきて、いっしょに帰るようになった。はじめこそ3人で帰っていたのだけど、やがて大野くんはひとりじゃあね、と手をふるようになったのだ)
わたしが二宮くんと親しくなったのは大野くんがきっかけだった。大野くんを起すのにも慣れた夏、ふと大野君にわたしが起こすまで、だれに起こしてもらっていたの?と聞くと、ニノだよ、と言われたのだ。
――ニノ?
――うん。二宮和也。そう、今年から生徒会に入ってるよ。いっこ下なんだけど。
――ああ、わかった。賢い子だよね、猫背の。二宮くん。
――ふふ、そうそう。
偶然にも、わたしは今年から生徒会に仲間入りした子たちのことは詳しかった。みんな雑用にも協力的で、働き者ばかりだったからである。
そして、とりわけ一緒に作業することの多い二宮くんのことはよく覚えていた。彼は手際よく自分のやることを片付けることができるので、手が空いたから気にしないでください、と言い、進んで手伝いをしてくれるのだ。でもそのときはまだ、生徒会室でしか会うことはなかった。
「ほんと、いい子だよね。そんな子が後輩でわたしは恵まれてるなぁ」
「よかったよねぇ」
「大野くんのおかげだわー」
「いえーい。おれたちの後輩すごいねー」
「――先輩?」
「二宮くん!」
「あ、ニノだ」
うわさのすばらしい後輩二宮くんのご登場である。
帰りましょ、先輩。二宮くんが手をひらひらさせてわたしを呼んだ。そういうしぐさが、またいいなぁ。わたしは二宮くんをアイドルを見るような気持ちで見ているのかもしれない。
「じゃあ、おれはここでね。また明日、さん」
「うん。またね大野くん!今日もありがとうね」
「いえいえ。ニノも、またね。おつかれ」
「はい。二度寝とかしないでくださいね先輩。それじゃ」
いきましょうか、先輩。にっこりされてわたしも頬が緩む。きょうも二宮くんはかわいいかわいい、わたしたちの後輩だ。
SUGAR
(続きます / 121227 あい子)
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