蛇にうなじを噛みつかれた。
という夢をさいきんよく見る。


「なんの暗示ですかねぇ」


ここまで毎晩のようだとこれはもしやなにか意味があるのではないのでしょうか。
わたしが言うと、あまり感情の読みとれない本田さんの顔に、うっすらと笑みが浮かんだ。


「ふふ、蛇ですか」

「はい。かぶっと」


やさしく笑われてしまった。ちょっと深く考えすぎなのだろうか。
でも妙な夢なのだ。 姿は見えなかったけれど、それが蛇だということを夢の中、わたしは確信しているのである。


「悪夢とかってわけじゃないからいいんですけどね」

「そうですか、それならよかったですね」


お夕飯に使った食器を、本田さんが洗ってわたしが拭く。
ふりむくと、窓から月が見えた。満月。
今日も、同じ夢を見るのだろうか。








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がぶり。
ああ、またあの夢なのか。でもそれならばもうすぐ目覚めるだろう。
いつも蛇だ、と確信したら夢は終わりだ。
噛まれながら変に冷静な頭の片隅でそう黙々と考えていたのだが、今回ばかりは勝手が違うようだった。首筋にまわっていたと思われた蛇が、形を伴ってわたしの喉元のまで這い上がってきたのである。これにはさすがに奇妙な夢を見続けてきたわたしでも驚いた。
あ、噛まれた。
つめたい歯の感触が妙にリアルだ、と感じた瞬間、目が覚めた。
今日は趣向がちと変わっていたが、どういうことなのだろう。ぼやける頭の霞が消え、だんだんと視界がクリアになる。


「……おや、夢から覚めてしまったのですね」


そう言って喉元から顔を上げたのは本田さんだった。本田さん。


「あの、」


はっきり言って謎だった。いや、はっきり言わなくたって誰だって起きて自分のベッドに男性が(それが一緒に住んでいる人であったとしても)(保護されている身なので反抗しがたいところではあるが、とりあえずこの部屋はわたしのテリトリーである)いたらしばらく固まるだろう。
なぜ本田さんがここにいるのか。なぜ。
わたしの首に指を滑らせているのか。


「ひゃっ」


くすぐったくて声を上げると思わずその辺にあったものを掴んだ。
本田さんの着物だった。


「私の秘密を教えてあげます」


本田さんが艶やかに微笑む。
そしてわたしの首筋に、キスを落とした。


「ずっとあなたが欲しかったのです。さん」


身も心も、ずうっと。








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「本田さん、」


どんな表情をするのだろうかと暗い心で考えていたが、こわばりの解けたさんが見せたのは笑みだった。
いとおしそうに、自らの首のうしろのあたりをなでる。


「お言葉ですがね」


わたしはとっくに、ひとりではなくここに住むことを選んだ時点で、あなたのものだったのですよ。

















底無し沼ごと抱いてやる





(ヒロイン夜這いされてみようぜと意気込んで打ったんですけど、こんな日本さんにされると怖いっすね! title by alkalism /120521 あい子)