収穫日和である。


本田家の広い庭には、わたしがここ最近手塩にかけている家庭菜園がある。
本日の収穫を見てわたしは思わず笑ってしまう。まだまだ採れそうだ。元気でいいなぁ。春きゅうりのざらざらした皮をそっとなぜた。


色鮮やかな野菜たちを小さなダンボール箱に入れて、縁側から家の中に戻る。襖を開くと、菊さんが背中を丸めて文机に臥せっていた。
どうしたのかと思い、野菜箱をそばに置いて近づいてみる。


「あれ?…、ねてる」


すうすう寝息を立てている。気持ちよさそうな寝方だなぁと思った。しかし端正な寝顔です。わが夫ながらほんとほめちぎってもほめちぎっても足りないよ。まったくねぇ。
つやつやした髪をなでる。かすかな空気が菊さんの睫毛をゆらした。


「ん…、」


なにかをつぶやくように唇が動く。


さん、」


わぁ


わたしはこらえきれなくなって、でもできるかぎりそうっと、起こさないように気をつけながら菊さんに抱きついた。はたから見たらちょっと誤解されかねない感じである。抱きつくというか、まあその、覆いかぶさってるように見えますよね。やさしく抱きつこうとすると。


「…すきです」


はしたない、とプンスカされてしまうだろうか。――それでもいいや。
菊さんの横顔が至近距離だ。


「あれ?」

「…っ」


顔を赤らめた菊さんと、目があいました。











きみの心臓





(たぶん王道寝言ネタですが、一度打ってみたくて… インスピレーションはThemeさまの囁くお題5 5.眠る君へ より。フィニッシュ!!/120518 あい子)