ずきずきと脈打つような痛みがする。
急いで胃薬といっしょに頭痛薬を放り込んだ。30分ほどすれば効いてくるだろうか。はやく、はやくなんとかしなくちゃ。


子どものころは、心配してほしかった。母に、手厚く看病してもらうことがうれしかった。
いまは誰にも自分が患っていることを悟られないよう必死に薬を摂取している。


わたしは弱くない。
わたしは強い。


呪いのように言い聞かせる。
ピンポーン、と、いまいちばん聞きたくない音がした。











どうしてこんなタイミングで来てくれるのだろう。まるちゃんは、わたしがいちばん弱っているときに限ってやってくることが多い。


「そんなたくさんいっぺんに飲んだらあかんよ、痛いのはわかるけど」


まるちゃんが散らばった薬のシートを片付けながら言う。うん、とそれを見ながら答えると、まるちゃんはわたしを心配そうに見つめた。どこか気の抜けたような返事になってしまったからかもしれない。大丈夫、と言いかけたわたしの体を、まるちゃんが自らに寄せてゆっくり抱きしめた。


「ごめんね」
「俺は、自分からちゃんがちゃんとおるって知りたくて来てるだけやから。謝らんといて?な?」


ごめんね、ごめんね。うわ言のように呟くわたしを、まるちゃんが抱きしめる腕に力を込めることで安らかにさせてくれる。
だいじょうぶやで。ちゃん。まるちゃんが言った。
まるちゃんは、ひとを安心させるのがじょうずだ。
だからわたしは、まるちゃんに抱きしめられると、やさしくて、そこが世界一安全な場所だと思って、まるちゃんがいれば何もいらないと思う。


でもそういうわけにはいかないのだ。こんなにやさしいやさしいまるちゃんを、わたしがそんなふうに欲しがってはいけない。
わたしのように、彼をすきで、その安らかさを求めるひとはたくさんいるのだ。


もうじき、この夜もおわる。日付はかわる。そろそろわたしは彼を放してあげなくてはいけない。


けれど、あとほんの10分。時計の針が0時をさすまででいいから。わたしに、まるちゃんの時間をください。プレゼントとしては贅沢すぎるかもしれないけど、神様、どうかゆるして。











とけないで





(クリスマスだというのに薄暗い話でした/ 拍手ありがとうございました!!)