予鈴が鳴り、ざわざわしていた教室内が静かになる。
次の古文では単語の小テストがある。小テストとはいえテストであることに変わりはないので、それぞれがいっせいに単語帳を開いて暗記しだしたようだ。逆にいうとこれはテストとはいえ小テストなので、直前に暗記して望む子が多いということだともいえるが。わたしもその一人である。


標的を頭にすりこもうとぶつぶつ言っていると、うしろから肩をたたかれた。わたしのうしろの席は氷室くんだ。窓際の列のいちばんうしろという、居眠り魔のわたしにはくじびきをするたびそこに当たってくれと願って止まない場所にいる。今回はわたしもだいぶよい席なのでいいけど。


「ごめん、さん。あの・・・消しゴム、持ってないかな、2つ。どこかでなくしちゃったみたいで、いま気づいて」
「いいよ。次、テストだからそれはきついよね」


中間とか期末だったらさらに絶望するレベルの話である。わたしは即答し、使い慣れてケースがゆるゆるになったMONO本体に爪で切り込みをいれぽっきりと折った。これで2つあったようなものである。


「はい。カッターないからちょっと汚いけど、ごめんね」


差し出すわたしの手を見て氷室くんがこれ、と目を丸くして言ったところで先生が教室に入ってくる。わたしは消しゴムの片方をひらかれていた氷室くんの手のひらに置いて前を向いた。机にシャーペンと片割れの消しゴムだけにして配られるテスト用紙を待つ。うしろから小さな声がわたしを呼んだ。


「ありがとう、さん、ごめんね。またあとで」























消しゴム割った





(20130110)