「。その傷、どうしたんだ」
わたしのブラウスのボタンをはずし終えてから征十郎が言った。え、と示された場所を見ると、たしかにそこには赤々とした一本の傷があった。
やってしまった、と思った。ぜんぜん気にしてなかった。
これは呼び出されたときにできたのだろう。あの子たちの爪は鋭く、長かった。
帝光中学校において赤司征十郎、というか、キセキの世代と呼ばれる彼らを知らない生徒はいない。そして、彼らの女の子になりたいと強く願う子たちは星の数ほどいるのだ。
「ぶつけたんだと思う。気にしないで」
「・・・痛いか?」
首のつけねにできているその傷をながめながら征十郎は聞く。心配してくれているのだろう。いま気づいたくらいだし、平気だよ、と頭を振ると、そうか、と言った。
「じゃあすぐ消えるように」
「っひ」
ぞわわわ、と背筋をなにかかめぐった。のからだはきれいなんだから。言いながら傷跡をねっとりと舐められる。荒い息がかかって、はぁ、とときおりひときわ大きな息遣いがきこえる。電流みたいなものがこみあげてめまいがした。場所も相まってまるで吸血行為だ。そこの皮膚だけどんどん敏感になっている気がする。ひどく破廉恥なことをされている気分になってくるのに、嫌だとは言えなかった。
うしろから抱きしめられるようにして、角度を変えながら飽きもせず征十郎は続ける。せいじゅうろ、う、と彼を呼ぶと、彼はわたしの腰にまわした、入学当初よりかなり逞しくなってきた腕を、上へ、上へ。
舐めて、隠して
(帝光中時代。普通のイケメンな感じで title by capriccio / 121227 あい子)
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