終りは、唐突に訪れる。


   わんっ! 〜輝く季節へ
第7話


「ふわぁ……」

新しい朝。いつもの様にお湯を沸かし、

トポトポトポ…

カップ麺に注いで3分間。そして、

ズルズルズルズル…

あっという間に完食。これで、残りはあと1つ。










「せんせ〜い」

近所のディスカウントに行く途中でシロと出くわし……

ドンッ!

衝突。

「あ痛たた…」
「先生っ! 久し振りにサンポでござるなっ!」
「何でそーなるっ!!」

余り邪険にするのも何なので、買い物に付き合せる事にしたが、

「おっかいものっ♪ おっかいものっ♪」
「あまり引っ付くな! 歩き難いだろーがっ!」

……今は少し後悔している。










『本日、臨時休業』

「……無駄足かよ」
「先生、カップ麺買うなら何もここでなくても」
「ここが1番安いんだ」

グゥ〜

「骨折り損と思った途端にこれか…」

くいっくいっ

「ん?」

シロが指差している。その先には……










『焼肉食べ放題。ランチタイム千円』

スパァーン!

「いきなりハリセンチョップは酷いでござる…」
「まさか俺に奢らせる気か?」
「でぇと代は殿方が持つのが常識でござろう」
「デートじゃねぇし、男女同権に反する常識があってたまるかっ!」
「でも、男と女は惚れた方が負けだと聞いた事が」
「鵜呑みにすなっ! それに、さっきと言ってる事が矛盾してるぞっ!」

グゥ〜

「……入るぞ」
「やはり先生は拙者に惚「それ以上アホな事抜かすと奢ってやらんぞ」

グゥ〜

「……涙を飲んで、今は焼肉に専念するでござる」

3匹目の腹の虫が俺のモノでない事は言うまでもない。





ガツガツガツ…





ガツガツガツ…





ガツガツガツ…





「あー食った食った」
「満腹でござるぅ〜」

とりあえず、元は取れたかな。

「有難うございました」

あれ、今店を出たのは……










『本名は、また出逢う事があればその時に…てゆー事にしといてくれ』










「シロ、代わりに払っておいてくれないか」

5千円札を渡すと、すぐさま知人の後を追う。
あっという間に追い付き、肩を叩いて呼び止める。















「……誰だ、てめぇ?」

ダテ・ザ・キラーは、浪速のペガサスを覚えていなかった。

「……すまん、人違いだ」

男はそのまま街中へと消えた。

「せんせ〜い」

ようやくシロが追いついた。

「払ってきたか。じゃ、釣銭をよこせ」

俺が右手を差し出すと、シロはお釣りを返した。

「……………え?」















千円札は4枚あった。

「シロ、これで全額か?」
「足りないでござるか?」
「いや、その逆だ」
「だったら良いではござらぬか」

何だか、嫌な予感がした。










徒然なるままに歩いていると、向うから

「やあ、シロ君。おはよう」
「おはようでござる」

唐巣神父と、

「ピートおにーさまっ♪」
「ピートぉ〜(はぁと)」
「はぁ…」

両手に花の色男がやって来た。

「売れ残りのオバサンは、頭丸めて尼寺へ行ったらどうですかぁ〜」
「毛の生えてない小娘に、そんな事言われる筋合いはないワケ」
「はっはっは、仲良き事は美しき哉」
「先生、呑気な事言わないで助けて下さいよぉ〜っ(泣)」

他愛もない痴話喧嘩の、

「出でよっ! ゴリアテ!!」
「タイガー! やっておしまいっ!!」

「ワシの出番これだけ…」

巻き添えを食っていたあの頃が懐かしい。

「シロ、そろそろ行くぞ」
「止めないでよいでござるか?」
「触らぬ神に祟りなしだ」

ピートの断末魔が背中越しに聞こえたような気がする。










「アーメン」










嫌な予感が現実化しつつある。

ドンッ!

肩に衝撃が走った。

「おい! どこに目ぇ付けてやがんだ、このガキ!」

1分後、チンピラはボロ雑巾になっていた。

「大丈夫でござるか?」
「いや、大丈夫も何も、俺が絡まれた訳じゃないし」

そう、絡まれたのはシロの方。
チンピラは、俺の事など見向きもしなかった。
それどころか、背後から蹴りを入れても俺には反撃しようとしない。
考えられる理由は唯1つ。





「あら、こんな所で何をしてるのかしら」
「美智恵殿」

いつの間にか、隊長が俺達の背後にいた。

「丁度良かったわ。また、ひのめの事お願いするわね」

隊長は、ベビーカーをシロに預けるとすぐさま立ち去る。
やはり俺には見向きもしない。否、できない。
当り前だ。見えてないのだから。

「にーに、にーに…」

果して、彼女の眼に俺はどう映ってるのだろうか?





「先生、やっぱり拙者が」
「いいんだ。俺にやらせてくれ」

俺は今、ベビーカーを手で押している。
この状態ではひのめちゃんの目線の先を窺い知る事はできないが、それ故に俺は安堵している。
今の俺の複雑な感情を、彼女達は理解できないであろう。
いずれにしても、終局はそう遠くない。










夕焼けが近づいている。
俺は、知らず知らずの内に夕焼けが映える場所へ向っていた。


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[平成16年9月1日更新]