「文化祭と言えば、青春よねっ!」
そんな訳で文化祭の実行委員になった愛子だが……
「愛子君! 青春の申し子である君なら、俺達の熱き思いを理解してくれるよな!」
「愛子ちゃん! 清く正しく美しい青春を守るため、私達と共に闘いましょう!」
「こんな板挟みの青春なんて嫌…」
気が付くと、握りたくもないキャスティングボートを握らされていた。
その翌日。
「横島サン、文化祭が待ち遠しいですノー」
「あんなもん別に面白くも何ともないだろ。○らめき高校みたいに美術部のヌードデッサンがあるなら話は別だが」
「ヌードは流石に無理ジャろーが、ミスコンなら水着審査位は」
「お前は転入生だから知らんだろうが、1年の時もミスコンは企画段階で立ち消えになったんだ。しかも、同じ事を20年以上も延々と繰り返してるそうだから、今年も期待できないぞ」
「横島さんにしては諦めが早いですね」
「あるかどーかも分らぬ水着審査より、確実に見られる美神さんの入浴タイムの方が俺にとっては重要なだけだ」
ガラガラガラ…
「おはよー」
「愛子、朝から教室にいないとは珍しいな」
「ポスターを修正してたのよ。アホな男子が企画通る前にフライングで刷っちゃったもんで」
「ポスターって……おおっ、ついに待望の水着審査がっ!」
「よく見てよ。『ミス』のすぐ左上にシール貼ってるでしょ」
「あっ確かに…………………………え゛?」
そこには『男子』と小さく書かれていた。
「何だこれは? 『男子ミスコン』ってまさか、かつて春高で開催されたというあの伝説のイベントの事か?」
「そのまさかよ。ミスコン推進派と反対派が完全に拮抗していたから、とりあえず今年はこの企画で妥協する事にしたのよ」
妥協案を提示した張本人は、その事をおくびにも出さない。
「とにかく各クラスから候補者を最低1名出す事が決まったから」
「愛子さん、何故僕の方を見るんですか?」
「決まってるジャろ」
「優勝候補筆頭だからな」
「マ、マジですか!?」
「当り前だ。お前以外に適任者がいる訳なかろうが」
「嫌ですよ! そーゆー変態じみた行為は横島さんの管轄でしょ!」
「○宿2丁目の住人を差別する言動は感心できないな」
「でも、横島君の女装姿も見てみたいかな♪」
「愛子! 余計な事言うんじゃない!」
「と言う訳で、緊急HRの始まりジャ」
「こら、タイガー! クラス委員でも日直でもない癖に勝手に話を進めるな!」
「じゃあ私が実行委員権限で招集するわね」
「こら〜〜〜〜〜っ!!」
結局、「面白そうだから」という理由で、横島を2人目の候補者とする事が全会一致で一旦は決まった。ちなみにピートの件は議題にすら上らなかった。
「『2人目』って、僕のエントリーは決定事項ですか!?」
「そうよ。と言うより、ピート君を前提にこの企画は成り立ってるから」
「僕の人権はどうなるんですかっ!」
「そもそもバンパイヤハーフに人権ってあるのかしら…」
ピートが愛子に抗議している傍らで、横島は参加要綱を熟読していた。
「あ、俺参加資格ないわ」
「ないって……どの事項に該当するのよ」
「ここだ、ここ」
第6条 次に挙げる者は、コンテストに参加する事ができない。
(中略)
5.プロの女装者。なお、仕事で女装し、その対価として金銭その他の財物を受領した事が1度でもある者は、これをプロとみなす。
「本当?」
「ああ、キーやんの名に賭けても嘘じゃないと誓えるぞ」
「そこまで言うなら信じますけど、納得いかないなぁ…」
「ワシもジャ…」
「ふっふっふ、ユニコーンすら魅了した俺の美しい姿を皆に見せられなくて残念だなぁ〜♪」
「ふぅ……本当に残念ね」
ちなみに一部の女子は本気で残念がっていたという。
そして、あっという間に文化祭当日。
「エントリーナンバー32番、2112円で土木研究会が落札しました」
「肉体労働は嫌やぁ〜〜〜〜〜」
ズルズルズル…
会場にドナドナが流れる。これで32回目。
「さぁ〜て、ようやくお前の出番だな」
「どこがミスコンなんですか! ただの人身売買じゃないですか!」
「ミスコンとチャリティーオークションの二つの案を折衷したらこうなったのよ」
「つまり収益の一部は確実に恵まれない人に還元される訳だ。神父が聞いたら大喜びだぞ」
「で、残りの一部は?」
「生徒会の予算、先生達に渡すリベート、文化祭の打ち上げ…」
「はぁ……とにかく、恵まれない方の取り分が増えるよう頑張ってきます…」
もはや、ピートを『縛』の文珠で拘束する必要もなくなった。
そして彼は自ら奴隷市場へと向って歩き出す。
講堂内に響き渡る司会者の声。
「皆さん、大変長らくお待たせしました。本日の最高の逸品!」
ピートにスポットライトが当たる。
「それでは最初は十円から「100万!」
ざわざわざわ…
「おっと、いきなり本日の最高額を更新!」
「誰ですか! 非常識な額を提示したのは……ってエミさん!?」
「ふふふ……この絶好の機会、逃してたまるものですか」
筋金入りのピートすとーかー登場。
「200万!」
「ゲッ! 何でおたくがここにいるワケ!?」
「それはこっちの台詞です! お兄様! 今すぐ私が助けて差し上げますから!」
「アン、頼むから学校壊すのだけは止めて…」
ピートの頭痛の種がまた1人増えた。
「300万!」
「何で令子までピート争奪戦に参加するワケ!?」
「転売するためよ。あんた、買う?」
「お断りよっ! 何でおたくの懐を私が潤さなければならないワケ!!」
美神令子。エミに嫌がらせするためなら、金と暇を惜しまない女である。
「500万!」
「1千万!」
「2千万!」
どんどん吊り上がる落札価格。そしてついに、
「1億!」
大台を突破。流石にこれ以上は放置できないので
「ストップ! 予定最高価格に達したので、競りはこれで締め切りとさせて頂きます」
「「そんなの聞いてないわよ!」」
「パンフレットにちゃんと明記されておるんジャが……お約束のように小さな文字で」
「重要文書は隅々まで読む。これがプロの鉄則よ♪」
「くっ…」
「美神おねーさま! 1億1円でピートおにーさまを売って下さいっ!」
「ごめんね〜〜実は先約があるのよ。一晩でいいからピートと一夜を共にしたいって」
「ピート一晩で億単位って、一体どこの有閑マダムっすか」
「邪兄ズ事務所の社長さん」
「「「「………」」」」
ピートが後ろの貞操を守れたか否かは、神の味噌汁。
[平成17年5月15日更新]