ピートと一緒に街中を歩くと、
「ねぇ、誰かしら? あの金髪のカッコいい男の子」
「知らないの? あれが噂のピート君よ」
「で、一緒に歩いてるスケベ面と物の怪は誰よ?」
「知らな〜い」
……タイガーと2人血の涙を流す羽目になる。
「折角だから、遊びに誘ってみない?」
「だめよ。ピート君ガードが固い事で有名だから」
「大丈夫。あのスケベ面に声かければ、ピート君も無碍には断れない筈よ」
「確かにナンパ成功率0%って感じだからね。どう見ても」
「じゃあ交渉はあんたに任せたわ」
「了解〜☆」
でも、たまにはこ〜んなラッキな事もある♪
「ふ〜ん、君もGSなんだ」
「人は見かけによらないものね」
「で、そこのあんたは?」
おいタイガー、女の子3人組に逆ナンパされたのにどうして血の涙を流す?
「で、どこへ遊びに行くんですか? お金のかかる場所はちょっと…」
「ピート君の分は私たちが奢ったげる♪」
「いや横島さんの財布も心配なんですけど」
「余計なお世話じゃ!」
「大丈夫♪ そんなにお金かからないから」
目的地に着いた俺やタイガーは顔面蒼白になった。
何故なら、そこはカラオケBOXだったから。
「あの……僕、歌は全然ダメなんですけど」
「じゃあ、私達の聴いてくれるだけでいいから」
それだけで済むとは到底思えない。
「1度でいいからピート君の歌聴かせて」としつこく頼まれたら、奢られているだけにピートの奴絶対断り切れないだろう。
「横島サン、一体どーすればいいんですカイノー」
「カラオケを中止するのは簡単だが、それでは女の子達と仲良くなれんしなぁ…」
悩んだ時はとりあえず座禅。
ぽく。
ぽく。
ぽく。
ちーん。
何故か藤子・F先生の霊が啓示を下された。
「ねぇピート君、お願〜い(はぁと)」
「下手でもいいから、私達に、歌、聴かせてぇ(わくわく)」
「聴かせてくれないと、私、泣いちゃうから(うるうる)」
「わ、分りました……横島さん」
「皆まで言うな。策は講じたから思う存分歌って構わんぞ」
「あ、有難うございます…」
俺は文珠を生成した。無論、耳栓代わりではない。
3個の文珠に『遅』『田』『飴』と文字を込める。
「それでは、歌います」
「「「キャァ〜、ピート君素敵ぃ〜」」」
「何でピートサンばっか…」
「タイガー、お前は選曲に問題があり過ぎる。『マイ・ウェイ』は流石に引くぞ」
「横島サンこそ、オザキはキャラに全然合ってないと思うんジャが」
「お前にまで言われたないわっ!」
お、加山雄三か。やっぱ神父の影響か?
「ピート、口開けろ」
「はい?」
首を傾げながらも素直に従うピートの口に文珠を投げ入れる。
口が閉まると同時に、
ポムッ!
文珠が発動。
「ねぇ、今投げたの何?」
「のど飴」
「気のせいかしら? ピート君の口の中で破裂音が聞こえたんだけど」
「飴噛み砕いた音じゃないの?」
「そうかなぁ…」
「あ、ピートの歌が始まるぞ」
女の子の目が一斉にピートに向く。俺はもう1本のマイクのスイッチを入れる。
「よぞらーにーわーーあんーなーにーーーほーしーがーうたうーーー」
曲が終った。マイクの電源を切り、素早くテーブルに戻す。
ぱちぱちぱち…
「「「アンコール! アンコール!」」」
ピートは「もう勘弁して下さい」と女の子に言っているが、声は全く聞きとれない。
「ピートの奴、声が枯れちゃったみたいだな」
「えぇ〜っ」
「という訳で、ピートのシークレットライブはこれでお開き♪」
「そんなぁ〜」
「という訳で、次はこの僕とデュエットを!」
「横島サン! 抜け駆けはズルいですジャ!」
てな具合に、何とか最悪の事態は回避され……
「さよならー」
「また遊ぼうねー」
「君の歌、結構良かったよ♪」
ちなみに1番好評だったのは、冗談で入れた『金太の大冒険』だった。とほほ……。
「ふぅ……ようやく普通に喋れるようになりましたよ」
「ん? タイガーどうした?」
「ううっ、ワシもデュエット…」
結局最後まで、タイガーは血の涙を流しっ放しだった。
「ねぇ西条さん、カラオケ行こうよ〜」
「西条さんの美声、聴きたいなぁ〜☆」
「はっはっは、そこまで言われると断れないなぁ〜」
「じゃぁ1曲目は、若大将の名曲で『夜空の星』だ」
「「「キャァ〜、西条さん素敵ぃ〜」」」
翌日。美神事務所にて。
「令子、ひのめ預かってくれる? 西条君が入院したから忙しくて」
「入院?」
「女の子に刺されたんすか?」
「どーしてそーゆー発想になるのよ!」
「ニュースで見なかった? ○×町のカラオケBOXで怪音波が発生したって」
「………(冷汗)」
[平成16年9月22日更新]