「かきねの、かきねの、まがりかど〜♪」

秋と言えば、落ち葉の季節。魔鈴は公園で落ち葉焚きをしている。

「おたく、こんなとこで何してんの?」
「分った〜〜〜。おイモ焼いてるのねぇ〜〜〜〜〜」
「違います」

何処からともなく、呪い屋と壊し屋が参上。

「エミちゃ〜〜〜ん、『壊し屋』って私の事なの〜〜〜〜〜」
「当り前でしょ。イモ焼いてないなら、一体何焼いてるワケ?」
「イモリです。何なら見せましょうか?」

グサッ。
ヒョイッ。


魔鈴は、イモリの黒焼きを串刺しにし、それを2人の目の前に曝した。










余りにバイオレンスな情景なので、この間の描写は差し控えさせて頂きます m(_ _)m





「ふぅ……やっと、暴走も収まりましたね」
「他人事みたく言うんじゃないの! 元はと言えば、おたくのせいでしょ!!」
「エミちゃ〜〜〜ん、怒っちゃだめぇ〜〜〜〜〜」

公園は台風一過のように一変していた。他に誰もいなかったのが不幸中の幸いである。

「お詫びに、このイモリを使って魔法薬を作って差上げましょう」
「魔法薬? 何の?」
「小笠原さんが今、最も必要としている薬です」
「あ、分った〜〜〜。痔の薬ね〜〜〜〜〜」
「痔なんか患ってないわよ! 誰よっ! そんなデマ流してるのは!!」
「えぇ〜〜〜っ、だって、令子ちゃんが〜〜〜〜〜」
「あの女……いつかピーの穴に神通棍突っ込んでヒーヒー言わせちゃる」
「まぁ、ご所望なら痔の薬もこれで作れますが」
「患ってないって言ってるでしょ!」
「とりあえず今回はホレ薬を作りますので」

ピクッ。

2人の耳が反応した。





所変わって、ここは魔鈴の店の厨房。

「これが魔法の薬のレシピ本?」
「はい。この前ロンドンで古書を物色してたら手に入りまして」
「でも、この本変なの〜〜〜。何で古文で書いてるの〜〜〜〜〜」

冥子が言う古文とは、女学生の頃に彼女を悩ませたアレの事である。

「暗号代わりですよ。昔も今も、向うの人達にとって日本語は『悪魔の文字』ですから」

グツグツグツ…

「後はとろ火で30分煮込めば完成です」
「まるで邪慰安シチュ〜みたい〜〜〜〜〜」
「こんなモン一体誰が食うのよ…」
「大丈夫ですよ。煮汁を2、3滴料理に混ぜれば効き目は充分ですから」

そして30分後。火を止め、熱を冷まし、そして漏斗で小瓶に詰めて……。

「はい、どうぞ」

魔鈴は薬の入った瓶を2人に渡した。





そしてその夜、

「えっとぉ〜〜〜どっちが塩でどっちが砂糖だったかしら〜〜〜〜〜」
「ふっふっふ……これをピートに食べさせれば…」

乙女2名は、翌日の作戦決行のための準備に余念がなかった。

「ま、いいか〜〜〜〜〜両方入れちゃえば〜〜〜〜〜」
「あ、そうだ。一応念のため…」










そして翌日。正午過ぎの学校。

「腹減った〜〜〜〜〜」
「もう死にそうジャ〜〜〜〜〜」

「2人とも吼えない方がいいですよ。余計にお腹空きますから」
「相変わらず侘しい青春よねぇ〜」

いつもなら、ピートに弁当の差し入れが届き、自称親友2名がそれを奪い取るという微笑ましい場面となるのだが、この日は少し違っていた。

ガラガラガラ…

「ピートぉ♪ お昼作ってみたのぉ〜♪ 食べてぇ♪」

明らかに場違いな女性が教室に乱入してきた。

「ねぇ、あれ誰?」
「知らな〜い。多分すと〜か〜じゃない?」
「なるほど、確かにそういう感じするわね」
「自分は相手が好きだから、相手も自分が好きだと勘違いするタイプ? 男女を問わず、あーゆーのに付き纏われると厄介よね〜」


エミは笑みを絶やさないが、青筋立ってるのだけは隠せない。

「おおっ! エミさんの手料理ジャ!」
「この裏切者ぉぉぉぉぉっ!!」


自称親友はしっとマスクに変身……

「はい、これはあんた達の分」
「おおっ! 大感激ジャ〜〜〜〜〜!」
「この果報者ぉぉぉぉぉっ!!」


しなかった。無論、単なるついでで作った訳じゃない。
ピート以外に食われてしまったら、元も子もないからである。

「「「頂きま〜す」」」

パクッ。
モグモグ。
ゴックン。


「美味しいですね…」
「特にこの煮物はプロはだしですジャ」
「でも意外っすね、てっきりピートの方が豪勢な内容かと思ってたけど」
「そんな事したら、おたくらピートの分食おうとするでしょ。それじゃ意味ないワケ」

そうこうしてる間に、3人とも完食。

「ね、ねぇピートどうだった?」
「とっても美味しかったです。エミさんがこんなに家庭的な女性だとは思いませんでしたよ」
「……それだけ?」
「……何がですか?」
「変ねぇ……全然効いてないわ。まさか横島やタイガーに間違えて……いや、それはないわね。あの2人にも何も起ってないし。もしかして失敗作? そうよね、そうに決まってるわ。第一、日本語で書かれていたという時点で怪し過ぎるのよ。魔鈴も馬鹿よね、あんなデタラメな本に金出すなんて。でもまぁ、少しは彼女に感謝」
「エミさん、何を1人で呟いて…」

ピクゥゥゥゥゥン!!!

ピートの身体に異変が起った。

「ど、どうしたの? ハッ! これはもしかして!」

ピートはいきなり立ち上がるとエミの目の前

「ピートぉ♪ カ・モ〜〜〜ン(はぁと)」

を通り過ぎ、一目散に

「横島さん! 実は前から貴方の事が!」
「ホモは嫌じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


横島に突進するが想いは届かず、

ポムッ!

「あ〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

『離』の文珠で世界の彼方まで飛ばされる。

「横島! ピートに何するのよっ!」
「それはこっちの台詞です! エミさん! 一体料理に何入れたんですかっ!」
「横島さ〜ん、新しいメニュー作ったんですけど」

「あの人、誰? 横島君の知り合いみたいだけど」
「目的はあのすと〜か〜女と同じみたいね。ターゲットは違うけど」


「ただのホレ薬よ!」
「何で俺に惚れさせようとするんですかっ! 俺に何か恨みでも!」
「宜しかったら試食して頂けないでしょうか?」

「おい、今度は横島に料理の差し入れだとさ」
「何っ! あいつに大人の女性は勿体無いぞっ!」


「令子の丁稚というだけで充分恨みの対象よ!」
「ピートと俺くっつける理由になってないでしょーが!」
「……誰も人の話聞いてませんね」

「ピートのような超絶美形ならまだ諦めがつくのにっ!」
「横島よ! お前も俺達を裏切るのか〜〜〜〜〜」


「私のせいじゃないわよ! 文句なら魔鈴に言って欲しいワケ!」
「タイガー! 実は前から君の事が!」
「もしかして昨日作った薬のせい? ……良かった、横島さんに食べさせる前で」

「ピートの奴、どうやら男なら誰でもOKみたいだ」
「あのタイガーに迫る位だから、俺達なんか完全にストライクゾーンだな」


「何でワシに迫るんジャ!? 横島サンならすぐそこに!」
「こらタイガー! 親友を売り飛ばすんじゃねぇ!」
「もしかしてホラ薬と間違え……いや、それはあり得ないわ。だって」

「俺達にとばっちりが来る前に、さっさと逃げようぜ」
「くわばら、くわばら…」


「僕はどっちでも構いません! さぁ、今すぐ愛の営みを!」
「横島サン! 何でワシに『縛』の文珠を使うんジャ! 相手が違うジャろ!」
「『ホ』の項目にはホレ薬しかありませんでしたから」

「あ、どうやらカップリングはP×寅で確定したみたいよ」
「どうせなら、P×横が見たかったんだけどな〜」


「ふぅ……これで後ろの貞操は守りきった。あれ? いつから魔鈴さんここに」
「どうやら、あの本はトンデモ本だったようですね」
「無責任な事言わないで何とかしなさいよ!」

「お、タイガー君の最後の防衛線が破られた」
「デジカメ、デジカメ〜☆」


タイガーの断末魔が、辺り一面に響いた。

「これも1つの青春よね〜」



その日、魔鈴は件の本を公園で焼き捨てたが、実はこれは大いなる知識の損失であった。その内容を知ったら、彼女は自分の軽率さを悔やんだに違いない。
彼女の作った薬は、確かにホレ薬であった。
但し、『惚れ』薬ではない。
『掘れ』薬だったのである。





「あ〜あ、今日は散々な1日だったな〜」

だが、彼にとっての散々な1日はこれから始まるのであった。










「横島はん……僕の想いを受け止めてもらうで、今夜は」

本物のすと〜か〜が、彼の家の玄関先で待ち構えていた。


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[平成17年5月15日更新]