「文珠と魔装術はお互い使わない…ってことでいーか?」
「ああ。それと、道場を壊すのもなるべく避けてくれ。後で怒られるのは俺だからな」
「俺に言わせれば、お前の方が手加減できるかどーか心配なんだが……」
「安心しろ。食事抜きに比べれば、多少のことは我慢できる」

バトルを手抜きしたくてたまらない手加減できる男、横島。
バトルマニアの本能をかろうじて食欲で抑える男、雪之丞。
対照的だが、それ故に無二の親友であった。





ここは闘竜寺。
雪之丞の彼女……いや許婚者の実家であり、ごく近い将来に雪之丞自身の家になることが約束された場所である。
てゆーか、既に雪之丞の家そのものだ。
彼は弓家の家族全員から愛されている。本人は、

「飼い馴らされてしまったような気もしないではない」

と内心思っているが、それでも現状を心地よく思っていることは確かだ。
大切な家族がいるというのは幸せ以外の何物でもない。
彼は今、最高に幸せである。



「ところで、髪は伸ばさねーのか? 正式に婚約したんだから、もう坊主のままでいる必要もねーだろ」
「もう慣れちまったからな。……お前らも笑わなくなったし」
「まだ根に持ってるな…」

別に根に持ってはいないのだが、ほじくり返されると恥かしい類の過去であることは否定できない。

「でも、何も窓に目隠しをする必要はねーだろ。産業スパイを警戒する何処かの町工場じゃあるまいし」
「戦士にとって新技は特許と同じだろ。それより始めようぜ。早いとこお前に試してみたいんだ」
「へいへい」





「新しい技を試してみたいから来てくれ」

雪之丞から電話でこう告げられた横島は、めんどくせーなと思いながらも雪之丞の頼みを聞き入れた。
別に友情に篤い訳ではない。食費を浮かすためなら、多少の努力は惜しまないというだけの話である。
それに、新技とやらに少し関心があったことも確かだ。少なくとも0%ではない。
コンマ未満ではあるが。



「あ、弓さんお邪魔しまーす」
「こんにちは横島さん。雪之丞なら道場で体をほぐしていますわ」

ごく普通の挨拶をする2人。挨拶代わりのセクハラ……という光景は、ここでは見られない。
親友のステディだから手を出さない…という訳ではない。
お寺だからという理由で神妙な気持になるようなタマでもない。
単に、性欲に食欲が勝っているだけだ。
ある意味セクハラよりはるかに失礼である。





道場には、横島と雪之丞だけ。
お互い目線を外さない。

勝負の合図。

柱時計が鳴った。










勝負は、一瞬でついた。










横島の敗因。それは、雪之丞から目線を外さなかったこと。










柱時計が鳴ると同時に、強烈な閃光が発せられた。




















雪之丞のから。










「サイキック猫だまし……とは全然違うな。霊力に全く変化が見られなかったし」
「使い所は同じだが、霊力を温存できるのが利点だ。もっとも、スキンヘッドの手入れが面倒だが」
「でも、一体どんな原理で光ってるんだ?」
「ふっ、それは企業秘密だ」

横島も深くは追求しない。
ツルッパゲになってまで新技を会得したいとは思わないから原理などどーでもいい。
そんなことより今日の晩飯。

「折角だからひとっ風呂浴びていけ。晩飯にはまだ間がある」
「じゃあお言葉に甘えて」

銭湯代が浮いてご機嫌の横島は、早速風呂場へ向かった。
雪之丞は、ポケットから何かを取り出した。




















それは、




















乾電池。
 

back menu next
[平成16年9月1日更新]