向かいのソファでココアを啜る骸をうんざりと見やり、恭弥はわざとらしくため息をついた。
 ふたりの仲はすこぶる悪い。宿敵ではあるが決してライバルではなく、お互いに早く死ねばいいとさえ思っている。だが、最近骸は少しだけ態度を軟化させているようだ。きっかけは、恭弥が屋根裏の子供を話題にしたこと。そしてそれ以来、骸は執拗に雲雀にかまってくるようになった。
「恭弥くん」
「名前で呼ぶな。気持ち悪い」
 ふん、と鼻を鳴らすと、骸はこめかみに手をやって、まるで頭痛でもこらえるかのような顔をした。
「ずいぶんまともに育ったとはおもったんですけどね、やっぱり君はアレによく似ている」
「は?」
「こちらの話です。……そうだ、並盛と黒曜の境目あたりにね、きみにずいぶんそっくりな男がいるんですよ。来週あたりは誰の目にも見えるようになる、そうしたらきっときみの耳にも入るでしょうから、いまのうちに教えておきます」
 六道輪廻だの契約だの、普段からオカルトじみたことをよく言う男だが、この言葉がそれらとまったく違うことは恭弥にもわかった。それほどまでに重く鋭い。だが、素直に認めるのもしゃくだったので、ふたたび鼻を鳴らして返事がわりにした。
「『見えるようになる』っていうことは、今は見えないということだろう。それなのに、なんでおまえみたいなパイナップル如きが存在を知ってるわけ」
「……彼はね、並盛、というか、きみのうちに帰りたいんですよ。でも、わけあって並盛町には入れない。だからまわりをうろうろしているわけです。それでね、どうして僕にそれが見えるのかという話なんですが」
 そこで骸は一度言葉を切り、空になったカップをローテーブルへ置き、腿に腕をのせて指を組んだ。
 声は低く、かつてないほど真剣な顔で、一言一言かみしめるように、彼はその話を始めた。とてもとても長く陰鬱で重たく、そして自分さえも殺してしまいたくなるような話だった。
「僕もちょっとどこから説明したらいいかよくわからないんですけどね……ねえ恭弥くん、僕はもう長いこと生きている。その間にね、何をなくしてでも手に入れたいものをみつけました。ひとつだけ、たったひとつだけです。でもそれには、殺してやりたいほど憎らしいひもがついていた」