神出鬼没のヘンな喋り方をする女サムライ。
飄々とした態度でのらりくらりと冗談ばかりを言っているが、なかなかに手練れの雰囲気を滲ませている
ひょうきんもので人懐っこいが、何やら妖魔に対しては割と容赦がない。──”約束”とのことだが
本気を出すと陽炎のように人ならざる気配が立ち上り、揺らめく。その影は八つ首の竜のようでもあり──
太刀筋、飛び道具、果ては魔法に特殊なブレスまで。あらゆる攻撃を見切り、捌くその実力はたぶん本物
背に誰かを護りながら、離れた邪悪の首を撥ね飛ばすその切っ先は、常人に見切ることは不可能だろう
どれだけ切れ味の鋭い刃を打とうとも。
どれだけ強い加護を掛けようとも。
万物はいずれ、耐えず、折れ、砕け、朽ちてしまう
……ならば。折れれば次を、朽ちれば代わりを、用意し続ければいい
──かつて英雄を求めた人々が生み出した英雄武装、その一つ『不朽の刃』
永劫に砕けぬ刃に対し、"消耗した部品"を取り換え、刷新していく、曰くつきの武器
──どれだけ武器が頑強であろうと、それを振るう生身は容易く朽ち果てる
持ち手が死ねば、次が受け継ぎ。次が死ねば、そのまた次が
振るい続けてきた先代たちの記憶と、記録と、技術を、上書きして
そうやって出来上がるのは。延々と終わりもなく刃を振り続ける、剣狂いの英雄だ
そこに個人の意思などなく、ただただ"刃を振るうもの"としての最適化だけが行われる
人を消耗品とみなした、忌むべき武器
──しかしながら。ごくごく早い段階で、
悪竜に有象無象の財貨と一緒に巻き上げられ、戯れに手に取られたのが運の尽き
本来人を対象としていた人工物は、悪竜暴神を相手にするには容量不足も良いところで
一柱の悪竜を人の形に押し込めたのを最後、人格の複写上書きをする領域全てがエラーを吐いた
──所詮、人の浅知恵などそんなもんである