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 浮かれた人々の喧騒が響き渡り、煌く光と軽快な音楽の競演が夜の帳さえも打ち払おうとするかのような雑踏の中を少女が歩いていた。
 長い黒髪をふわりと靡かせ、弾むような足取りで、時折小走りになりながら。
 誰もが目を留めるような美貌に、幾人かの若者が声を掛けようかと考え、そして実行することなく諦めていた。
 少女の浮かべる喜びに満ちた──そして若干の恥ずかしさも滲ませた──表情を見れば、この聖なる夜に彼女が向かうであろう場所にどれほど大切な人が待っているか容易に想像できるから。
(……少し遅れてしまったかしら?蓬莱寺君の話ではすっかり元気になったと言っていたけれど、あまり待たせては風邪を引いてしまうわね)
 少女──美里葵は自分を待っているであろう少年へと思いを馳せた。
 同時にこの1年足らずの間に彼女が足を踏み入れた非日常の世界を回顧する。
 入学したての頃、周りに溶け込めずにいた彼女を持ち前の明るさで引き入れてくれた一番の親友。
 一見いい加減なお調子者のようで誰よりも義に篤い青年剣士。
 強面の外見とは裏腹に生真面目で細やかな心遣いを忘れない通称真神の番長。
 彼等との結びつきは今日までにどれほど強くなっただろう。
 更に妹が出来た事も彼女に訪れた大きな変化だった。
 金髪碧眼の少女を紹介した時は、流石の両親も驚き戸惑っていた。
 しかし今では当の葵自身が羨む事もあるほどの溺愛ぶりを見せている。
 その他にも様々な出会いと、時に哀しい別れを繰り返してきた。
 そしてその全ての中心にいたのが緋勇龍麻──葵の頭上に煌々と輝く宿星《菩薩眼》と最も深い繋がりを持つ少年だった。
 そうして思いを巡らせている内に、何時の間にか目的地へと着いていた。
 穏やかな雰囲気を纏い静かに佇む少年を目に留めると、葵の表情が一層綻んだ。
「ゴメンなさい、遅れてしまって」
「大丈夫。僕も少し前に来たばかりだから」
 駆け寄る彼女を優しい笑顔が迎えた。
「葵の方こそ良かったのかい?今日はマリィのバースディパーティも兼ねて家族で祝うんだろ?」
「うん、そっちは夕方からやってたから。途中で抜ける形になってしまったけれど、事情を話したらマリィも快く『いってらっしゃい』と言ってくれたわ」
「そっか。……なら、少し歩こうか」
「ええ」
 2人は歩きながら色々な事を話し合った。
 彼等が出会ってからの事。
 出会う前の出来事。
 そしてこれから訪れるであろう未来を。
 どれほどそうして歩いただろうか。
 葵は一軒の花屋に目を留めた。
「あの、ちょっと待っててもらって良いかしら?」
「どうしたんだ?」
「ちょっと買いたい物が……すぐに戻るからっ!」
 言うと龍麻の答えも待たず、葵は花屋の中へと飛び込んだ。
「いらっしゃいませ」
 明るい声で出迎える店員に軽い会釈を返すと、目的の花を探して店内を歩き回る。
 やがて探していた物を見つけて葵の足が止まる。
(あった……)
 彼女の胸が高鳴る。
(この花に私の想いと──勇気を乗せて)
 それは龍麻が今日と言う日に自分と会うことを望んでいると京一に聞かされた時から決意していた事
だった。
「すみません、これを下さい」
 僅かに震える声で店員を呼ぶ。
「はい?──あ、これですね。1本で宜しいですか?」
 葵が頷くと店員はにこやかにその花を包んでくれた。
「ありがとうございました」
 そんな声も耳に入らず、緊張の面持ちで店を出る。

 そして大きく息を吐き、龍麻の元へ戻ろうとした所で当の待ち人がいない事に気づいた。
(え?)
 まさか帰ってしまったのか、と言う不安が彼女の心を覆う。
「龍麻……?龍麻──!」
 声を呼び、辺りを駆け回る。
 と、不意に近くの路地から人影が現れた。
「あ、龍麻!……どうかしたの?」
 いきなりいなくなった事を咎めようとしたものの、彼の様子に心配する気持ちの方がもたげ上がった。
 葵は以前にも一度、今と同じ龍麻の目を見た事があった。
 それは彼の眼前に広がる炎の記憶。
 彼が救いたいと願い、そして叶わなかった1人の少女を見る時の目だった。
 それは予感であり確信。
 思えば葵が彼の傍に居てあげたいと想うようになったのはその目を見た時からかもしれない。
 おそらくは龍麻も彼女が全て見抜いている事を悟っていたのだろう。
 この僅かの時間に起きた出来事を包み隠すことなく話して聞かせた。
 要約すれば不良に追われていた少女を助けた、それだけの話。
 ただ少女の持つ瞳の色が彼に辛い記憶を呼び覚まさせたのだという。
「そう……。なら、次に逢う時は救ってあげましょう?その人を」
「ああ」
 そして2人は再び歩き出した。
 しかし今度はどちらも言葉を発することなく淡々と足を運ぶだけだった。
「ねえ、龍麻──」
 沈黙を打ち破ろうと葵が口を開きかけた瞬間、不意に龍麻が足を止めた。
「龍麻、どうし──あっ!」
 龍麻の視線を追って目を向けた葵は、その光景に息を呑んだ。
 そこにはキラキラと輝く巨大な光のキャンドルがそびえていた。
「綺麗……」
 普段見慣れた筈のそれが、今は眩いばかりに彼女の目を奪った。
 そしてその輝きは彼女の勇気を後押しするのに充分だった。
「あの、私、龍麻に上げたい物があるの」
「え?」
 キョトンとする龍麻を尻目に、葵がいそいそと鞄から先程の包みを取り出す。
「メリークリスマス」
 そう言って彼女が差し出したのは1輪のバラだった。
 彼女の無垢な心を映し出すかのような、清楚な美しさを持つ白いバラ。
「僕に?」
「ええ。この花に込められた花言葉を私の想いとして貴方に贈りたいの」
 純潔──または清らかな愛。
 真神の聖女とまで呼ばれた彼女にそれ以上に似合う言葉も無いだろう。
「ありがとう。……でも、僕は今日何も用意していなかったんだ。ゴメン」
「ううん、良いの。ただ──」
 そこまで言って言葉を詰まらせ、思わず下を向いた。
 その頬は朱に染まり、口から心臓が飛び出してしまうのではないかと思うほど鼓動が強く胸を打つ。
「ただ、私の我が侭を、1つだけ聞いて、貰えるなら……」
 震える声でようやく言葉を搾り出した。
 眩暈がしそうなくらいに頭の中が熱を持っている。
 おそらく敵と対峙している時でも、これほどの勇気を搾り出すことは無かったのではないか。
 と、突然肩に手が置かれた。
 顔を上げると優しく微笑む龍麻の顔がすぐ傍にあった。
「何でも言って欲しい。僕に出来ることなら何でもしよう。誰よりも──葵の事が大切だから」
 それを聞いた途端、葵の口からは自然と想いが吐き出されていた。
「私、今夜はずっと貴方と一緒にいたい──」
 その言葉に、龍麻は強い抱擁で答えたのだった。


 今、2人は龍麻の部屋に居た。
「──綺麗だよ」
 薄明かりの中、一糸纏わぬ肢体を露わにした葵の姿が龍麻の眼を奪っていた。
 普段抜けるような白さを誇る肌は、今は興奮と羞恥にほんのり赤く色づいている。
 豊かな胸は仰向けになってもひしゃげる事無くそびえ立ち、やや大きめながらも色素の薄い頂は彼女の纏う清楚なイメージに相応しい。
 無駄な肉の一切無い腹部は理想的な曲線を描きながら括れ、柔らかな丸みを帯びた腰周りへと続いていく。
 程よい肉付きを見せる太股の付け根では、そこだけ色濃い叢が彼女の最も大切な部分を覆い隠していた。
「あまり……見ないで……」
 全身をくまなく伝う視線を感じ、思わず身を捩る葵。
 だが龍麻はそれを押さえつけると、柔らかな双丘へと手を伸ばした。
 軽く力を入れただけで指先に心地よい弾力を返しながら形を変えていく。
「あっ……んふ……」
 緩やかな刺激を受けて、葵の口からは思わず吐息が漏れた。
「ん……くふぅ……は……ぁ……んん……」
 優しく撫で回すようだった指の動きが、次第に膨らみを揉み解すようなものに変わり、やがては強く捏ね回すほどに変化していった。
 それに伴い葵も熱にうなされたかのような表情を見せ、声にも艶を帯び始めた。
 更には薄桃色の乳首までが徐々に硬く盛り上がっていく。
 掌の下でその変化を感じ取った龍麻は、おもむろにその片方を口に含んだ。
「ああぁぁぁっ!?」
 それは微かに唇が触れる程度の行為であったにも関わらず、鋭敏になっていたその部分には強すぎる刺激だったのか、葵は声をあげて身体を大きく跳ねさせた。
「ご、ゴメン」
 予想外の反応に、思わず謝る龍麻。
「ううん、良いの。ちょっと驚いただけだから。だから……続けて?」
「分かった」
 そう微笑む葵に頷くと、龍麻は再び彼女の胸へと唇を這わせた。
 そして今度は含んだ乳首を軽く吸ったり舌で転がしたりしてみせる。
「んっ、あぅ、ん……あ、あ、はぅっ!ん、ふ、あん!龍……麻ぁ、ああん!」
 必死で声を抑えようとするも、初めての刺激にこみ上げる官能がそれを許さない。
 確実に愛欲の色が濃くなる彼女の声に、次の段階に進む頃合いと見た龍麻が右手を太股の間へと滑らせた。
「──ダメッ!!」
 咄嗟に脚を閉じようと力を入れる葵だったが、一瞬遅く龍麻の指がそこへ到達する。
 指先がにちゃり、といやらしい水音を立てた。
 生まれて初めて他人の手が触れたその場所は、溢れた愛蜜で周りの叢がべっとりと肌に張り付くほど濡れそぼっていた。
「ああ……恥ずかしい……」
 自身の淫らな変化を知られた葵が羞恥のあまり両手で顔を覆い隠す。
 しかし龍麻は構わず指で濡れた花弁をなぞりあげた。
「ああ、はあぁんっ!そこ、待っ、あぅん、ああっ!!」
 くちゅくちゅと湿った音が響く度、葵の身体が大きく痙攣する。
「あふ、く、んんっ!あぅ、やっ、あ、あん、ま、また、胸も、くふぅっ!」
 秘所への愛撫と共に乳首への吸い付きを再開すると葵の声がより一層高まった。
「葵、そろそろ……」
 恋人の普段からは想像もつかない乱れた姿に、自身も昂ぶりが頂点に達しかけた龍麻が葵の耳元に唇を寄せて囁いた。
 その言葉に薄っすら眼を開けて小さく頷く葵。
 許しを得た龍麻が猛る怒張を未通の秘唇にあてがった。
 数回亀頭を滑らせると、先走る滴りを垂らしたそれが入るべき場所を探り当てた。
「あ……あああぁぁぁぁっ!!」
 グッと腰を押し込むと一瞬遅れて葵が絶叫を上げた。
「大丈夫?」
 そう訊かれるとコクコクと頷く葵だったが、身体を強張らせ小刻みに震えるその姿はとても大丈夫そうには見えない。

 事実彼女自身、身を裂かれるような痛みに息をするのもやっとの有様だった。
 しかし龍麻が気遣って身体を離そうとすると、ギュッとしがみついてそれを許さない。
「待ってっ……ハァハァ……最後、まで……んくぅっ、私、を、ぉ……貴方の、モノ、にぃ……ぅ、お願い、だからぁっ!」
「葵……」
 必死で訴える様子に、頷くと龍麻はゆっくりと動き出した。
「はっ、あっ、ん、くぅっ、あぅ!ひぐ、ん、ふぅ、あ、かはっ、ああっ!」
 緩やかな動きに関わらず、葵の口から漏れる喘ぎには苦痛の色の方が濃い。
 形の良い眉をギュッと寄せ、目尻には涙を浮かべていても、決して止めてくれとは言わない。
 そんな健気な様子に愛おしさが増し、龍麻は彼女の唇に自らのそれを重ねた。
「ん、ふむぅ、ん、ちゅ、んぐ、むちゅっ、くふぅん」
 すかさず葵が龍麻の首に腕を回し、なんと彼女の方から舌を差し入れてくる。
「はむ、ん、くふ、ぢゅ、ちゅる、んく、む、んふ、むぐ、ちゅぅっ」
 自らの舌を相手のそれ絡ませ、貫かれる痛みを紛らわすかのようにキスに没頭する葵。
 2つの水音と2人の吐息だけが部屋の中にこだましている。
 程なく龍麻は下半身にこみ上げるものを感じ唇を離した。
「んむ、ふく、ぬちゅ、む、ふぐ、んふ、ふ、ぷふぁっ!──た、龍麻……?」
 名残惜しそうな表情で葵が龍麻を見る。
「僕、もう……」
 それだけで察した葵がコクリと頷いた。
「ええ、来て……私に、貴方の全てを……受け止めさせて……」
 直後龍麻の動きが激しさを増した。
 これまでの相手を気遣う動きから己の欲望を吐き出すそれに変化する。
「あ、は、あん、く、激し、あう、ぅぐぅ、ああっ!」
 しかし葵は痛みを堪えて龍麻の身体をかき抱いた。
「はぁっ、く、ひぁ、あぅ、ふ、あ、あ、あく、あ、あ、ああっ!」
 ぐちゅっ、ぐちゅっと肉の擦れる音が大きくなる。
「あん、はぁ、くぁ、んんっ、わ、私、あふ、私ぃ、ん、ふぅ、はぁっ!あい、愛してるっ、ああん、愛してるぅっ!ああぁっ、くは、ああぁぁんっ!」
「葵っ!」
 葵の想いを受けて龍麻が爆ぜた。
「ああああぁぁぁぁぁ────っ!!」
 身体の一番深い場所で広がる暖かい感触に、葵が絶叫を上げる。
 それが長くたなびいている間も、龍麻の怒張からは断続的に欲望を吐き出し続けていた。
 やがて全てを流し込み終えると同時に葵の声も止み、2人はゆっくりと息を吐いたのだった。

「龍……麻……」
「葵……」
 心地よい気だるさと幸福感に身を包まれ、2人は互いの身体を抱き締めていた。
 黄龍と菩薩眼。
 何者よりも強い結びつきを持つ2つの宿星。
 その星の運命に引き寄せられ2人はその想いを育んできた。
 この先も辛い戦いが待っているのは間違いないだろう。
 しかし2人は全てを乗り越えられると確信していた。