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午後八時を回った頃。女子寮の自室で過ごしていた双樹咲重は、チャイムの音に応じてドアを開いた。
確認もろくにせずに開鍵したのは、この時刻にクラスメイトとの約束があったからだ。
「こんばんわァ、咲重お姉様」
クラスメイト…椎名梨花は、いつものようにちょこんと小首を傾げながら、愛らしくお辞儀をした。
その様子につい笑顔になりながら、双樹は椎名を招き入れ鍵を掛ける。
今夜は手芸の達人である椎名に、レース編みの手ほどきを受ける約束でいるのだ。
無論それはひとつのダシであって、一晩中女同士でしか出来ない話で盛り上がりたい、というのが
本音であるが…。
「もう咲重お姉様は、お風呂を済ませましたのね。その新しいベビードールも、
とっても素敵…よくお似合いですわ」
椎名が持参した荷物を、部屋の片隅に纏めながら言う。
「ありがとう。リカのネグリジェも、フリルがとても可愛いわ」
どちらともなく見詰め合い、眼を細める。
「あァ、そうでしたわ。リカ、今夜はリカ研で焼いたクッキーと、お茶をお持ちしましたの。
 お家から送って頂いたのだけど、とっても美味しいお茶ですのよ」
小さなテーブルを床に用意した矢先、椎名がポン、と手のひらを打つ。
彼女が持参したパッチワークのバッグを探ると、クッキーの詰まった紙の包みと、
名のある紅茶メーカーの洒落た小さな缶が現れた。
「ありがと、嬉しいわ。じゃあ早速淹れようかしら」
双樹が受け取ろうと手を差し出すと、椎名はふるふると首を振る。
「お姉様。今日はリカに淹れさせて下さいませ。お姉様は《生徒会》のお仕事などで
 お疲れなのでしょ?お姉様と一緒に頂くお茶ですもの、それくらいリカが用意いたしますわ」
微笑む椎名に、双樹も応じ、「まあ…じゃあ、お願いするわ」と言う。

 双樹は椎名が紅茶を用意する間、レース編みに必要な道具や菓子をテーブルに広げて待った。
普段なら、顔見知りとはいえ客人に茶を淹れさせるなどということは、彼女のポリシーに
反するのであるが…実際にその日は《生徒会》の仕事とはまた異なる、堪える出来事があり、
双樹には椎名の気遣いが心底嬉しかったのだ。
 茶の用意をする椎名を、双樹はぼんやりと見つめていた、小さな体でテキパキと茶葉を計ったり、
カップを温めている様子につい見入ってしまう。
今の椎名は、お馴染みのメイクを落とし整った素顔を晒していた。メイクで完璧に作り上げた
昼間の彼女も勿論魅力的が、素顔もまたなんとも言えず愛らしく、少なくとも双樹は
この自然な状態の彼女を気に入っていた。金色の柔らかな巻毛と相まって、絵本の主人公として
登場する外国の少女のようだ。
大人びた外見とうらはらに、少女趣味のある双樹は、椎名を憧れを持って見つめた。

以前の椎名は素顔を極端に隠し、親しい人間にすら夜、風呂を済ませた後は会わないというほどの
徹底振りだったのだが、今でも例のメイクは続けてはいるが、現在のように寮内ならば素顔で出歩く
こともそう珍しくは無くなった。以前ほどその姿にこだわっていないのだろう。
あの化粧は椎名の仮面…そして椎名はその仮面で、自分を守らなくとも良い程の『強さ』を身に付けたのだ。
そして、椎名をそんなふうに変えたのは、一週間前にこの學園を去った、あの《転校生》ではないだろうか。
あの《転校生》…彼は、双樹の想い人とは大分異なるが、やはり他人を惹きつける抗いがたい
魅力を持っていた。派手な外見に似合わず、どうしても内に感情を秘めがちだった双樹は、
次々と襲い繰る困難に立ち向かってゆく《転校生》の前向きな姿に、自分の本当の気持ちを
さらけ出す為の勇気を貰った。
(そう…アタシの本当の気持ちを…)
そこまで考えて、胸がズキン、と痛む。《転校生》…九龍に貰ったのは、前へと進む勇気。けれど…

 ふっと我に返ると、ふわりと花のような香りが漂ってきた。それだけではない。
数種類の果実と思われる甘い香りもする。どうやら椎名の持参した茶は、
様々な花や果物によって香り付けられた、手の込んだフレーバー・ティーらしかった。
少しして、椎名がティーカップを二つ乗せたトレーを運んできた。
テーブルに置くと先ほどの香りが湯気を纏い、心地よく鼻孔を擽る。双樹の重く沈みかけた心が、
すっと軽くなったような気がした。
「いい香り…これは…マルコポーロね?學園の寮でなんて、滅多に飲めるものではないわ」
上機嫌の双樹に、椎名もはにかんで応える。
「喜んでいただけて嬉しいですわァ。香りが強いので、もしお姉様のお気に召さなければ
 申し訳ないかとも思ったのですけれど…」
「いいえ、そんなことないわ。私、このお茶大好きなのよ。でも…」
少し怪訝そうに首を傾げた双樹に、椎名も少し不安そうに問いかける。
「…どうかされましたの?」
「うーん…以前と少し香りが違うような気がするけれど…配合が変わったのかしら?
 まあいいわ、リカの持って来てくれたこれ、以前飲んだものよりずっと美味しいもの」
カップに口を付けながら、ありがとう、と破顔する双樹に、椎名も嬉しそうに微笑むが、
その裏に隠された焦燥に双樹が気づくことはなかった。

紅茶とクッキーを摘みながら、暫く二人はレース編みと他愛の無い話題に時間を費やした。
気付くと時計の針は、もう九時近くを指していた。一時間も同じ場所に座ったまま
レース編みを続けていたのだ。流石に疲れて双樹は、椎名にも休憩を促し柔らかいベッドに腰掛けた。
その隣に双樹に倣って、椎名もちょこんと座る。
 椎名の凄いところは、どれほど会話に没頭しているように見えても、双樹が手順を間違えると
直ぐに気付いて修正してくれるのだ。そんなやり取りを二度三度経た双樹は、感心して呟く。
「あなたってすごいのねえ、リカ。どんな小さなことでも、良く見ているのね」
「フフッ。それはそうですわ。だってお姉様の…咲重お姉様の事ですもの」
少しもじもじした様子で、双樹を上目遣いに見る。
「リカは、咲重お姉様がだァい好きですの」
「嬉しいわ。私もリカのことが大好きよ」
二人の間のこんなやり取りは日常茶飯事であるので双樹もいつもの調子で椎名に答える。
「それにしてもお姉様のバストは、本当に立派ですわよねぇ。」
不意に椎名がその身を乗り出し、その曲線をベビードールの上から触れる。
「大きな胸から、引き締まった腰…まァるいお尻まで…とても、とっても素敵なライン…」
同性に触られる分には抵抗はないが、流石に椎名の行動が唐突だったので、双樹は少々ぎょっとした。
「ちょ、ちょっと、リカったら…」
「お姉様ったら。女同士ですのよ?そんなに恥ずかしがらないでくださいまし」
双樹が控えめに拒むのを、解っていながら椎名はそれでも触れるのをやめようとはしない。
くすくすと無邪気に声を立てる彼女は、しかしいつしかその眼に妖しい光をたたえていた。
「ふふ、この唇も…ルージュも塗ってないのにつやつやで…ホント、美味しそう…」
椎名の指先は今度は双樹の頬を辿り、頤に軽くあてがうと、柔らかな下唇の弾力を幾度か確かめるように
撫でた。覗き込むように自分の顔を近づけ、反応に困っている双樹を一瞥するとそのまま唇を重ねる。
「…んッ…や、やめなさいッ、リカ…こんな冗談ッ…!」
精一杯の力で椎名を、しかし傷つけないように押しのけようとした双樹だったが、
なぜか全身に力が入らず、逆に自分がベッドに倒れこんでしまった。
(な…何?どうして…)
確かに疲れてはいたが、こんなに急に力が抜けるほどではなかったはずだ。第一、さっきまで普通に
レース編みをこなしていたし、ベッドにも支えを用いずにきちんと座していられたのだ。
双樹が困惑していると、椎名が低く呟いた。
「…効いてきましたわね」
その言葉の意味するところは一つ。椎名は、双樹に一服盛ったのだ。
「…リカ、一体、なにをしたの…?」
徐々に痺れるような感覚が支配する中、問いかける双樹に椎名は言う。
「まだお気づきではありませんのォ?お姉様も良く御存知の…媚薬、ですわよ」
双樹ははっとした。迂闊だった。あの紅茶の、微々たるものだったけれど香り付けの差…
いつか自分が、九龍から貰い受けたものと同じ、あの薬。結局自分は、それを使うことは無かったが…
内から込み上げるような火照りは、その作用に相違なかった。

「お姉様は香りに敏感でいらっしゃるから、あんなことを仰った時には本当にヒヤヒヤしましたわ。
 けれど、リカの持ってきたお茶だから、と、疑わずに飲んでくださったのは本当に嬉しかったですの」
椎名はやっと上体を腕で支えていた双樹に圧し掛かり、そのままベッドに沈めた。
「騙してしまってごめんなさいね、お姉様。でもこれは、二人の夜をもっと素敵にするために
 必要なことだと思いましたのォ」
甘えるような声音で寄ってくる椎名を、しかし双樹は受け入れることは出来ない。
「こんなことはやめて…確かに私もあなたが好きよ。でも、おふざけでもこんな事出来ない…
 私の…この身体は…ただ一人のヒトの為に…」
「…リカも、おふざけのつもりでこんなことは出来ませんわ。…それに、お姉様は…
 手に入りもしない殿方の為に、貞操を護り続けるおつもりですの?」
甘い口調は一変し、低く真摯に告げられた椎名の言葉は、双樹をこわばらせた。
「…なん、で…」
「リカ、見てしまいましたの。偶然用事が有って行った《生徒会室》で。
 …お姉様が阿門サマに 拒まれるそのお姿を…」

 見られていた。その事実よりも、椎名の言葉で蘇った夕方の記憶が双樹を苛む。
…九龍に、自分の真実の気持ちを打ち明ける、その勇気を貰ったはずだった。
墓守の役目から開放された阿門が、自分を拒絶するはずはないと思い込んでいたかもしれない。
勇気を振り絞って、阿門に好きだと、愛していると−−−そう告げた。…しかし。
『双樹…俺には…その気持ちに応えることは出来ない』
返ってきたのは、そんな残酷な一言だった。
 勇気を出したはずが、折角これまで暖めてきた想いを無残に打ち砕いた。
絶望して双樹は我を失った。阿門の足元に取りすがり、自分を抱いて欲しいと…そう訴えたが、
阿門はただ目を伏せて、すまない…とそれだけ言い残して、去っていったのだった。

まだあれから、半日も経っていない。必死で何もない素振りを装っていたのに、
しかもこんな状況で再び事実を突きつけられ、双樹の身体はカタカタと震えた。
やっとの思いで声を振り絞る。
「き、きらいだって…言われたわけじゃ、ないわ」
「でも阿門サマは、お姉様を恋人にする気なんて無い。お姉様は阿門サマの一番には、
 どうしたってなれないんですのよ」
「い、一番じゃなくったていい…アタシは、アタシは阿門様さえ居ればっ…!」
「…そんなのリカが許しません」
ショックのせいで益々体の自由が利かなくなっている双樹のアゴをくい、と持ち上げ、
自分の方向を向かせて椎名が言う。
「お姉様は、リカの一番…唯一の人なんですから…」
そのまま圧し掛かると、椎名はまたも口付けした。先ほどより深く、執拗に。
唇を割って舌が入り込み、音を立てて絡み合う。媚薬の効果か、不本意なのに気が遠くなるほど
…キモチイイ。罪悪感と恐怖を抱きつつも、ただ成すがままになって双樹はぼんやり椎名を見ていた。
「ねえ、咲重お姉様ァ…直ぐにリカを一番に好きになって欲しいとは言いませんの…
 ただ、リカの事をもっと良く知っていって欲しいんですの…だから…」
椎名の指先が、双樹の胸の中央で結ばれたリボンをつい、と引く。リボンは呆気なく解け落ちた。
「リカにもお姉さまのこと、もっと良く教えてくださいね…?」

椎名は露になった双樹の乳房に、今度は布越しではなく直に触れる。
最初は探るように皮膚の上を滑らせていたが、やがてやや力を混めて揉みしだく。
椎名の小さな手のひらで覆いきれぬほどの胸は、ゴム鞠のように弾む。
「…ぁ…はぁ…んっ…」
翻弄され、大きく揺らぐ乳房の向こう側に、陶酔に飲まれるのを必死にこらえる双樹の
悩ましい顔が見えた。すでに唇は半開きで、時折小さく喘ぎが漏れる。
頬は上気し、瞳も潤んでいる。もう大分感じているようだ。
椎名は乳房を揉みながら、屹立した乳首にくいっ、と力を込める。
「…っ…あっ…」
上体を反らせ、跳ね上がった双樹の胸がぷるん、と震える。その頂はもっと触って欲しいと
いわんばかりに立ち上がっていた。
「やっぱりイイですわぁ…お姉様の胸…おっきくて、真っ白で柔らかくて…」
左手は片側の乳房を揉む仕草を続けながら、もう片側の巨峰に顔を寄せる。
「…ココも、きれいなピンクで…食べたちゃいたいですわァ…」
言いながら椎名は、突起を口に含み、舌先で転がす。舌先できゅっ、と歯列に押し付けると、
敏感になっている双樹は声を挙げた。
「ひあぁぁっ…!!!」
幾度か、突起を勢いよく吸い上げたり、強めの刺激を乳首に与えてみる。
その度に双樹はびくん、と全身を縮め腰をよじり、太股を擦り合せて恥らうような仕草を見せた。
上半身だけの刺激では物足りなくなっている証拠だ。

椎名は双樹の望みどおりに、その手をするり、と腹部に滑らせ、両足の間に割り込ませた。
抵抗もなく開かれたそこは既に少々濡れていた。蜜壺から、キラキラ光る粘液が滴り落ちている。
「いやだわ、お姉様…ソコは男の方が入る所ですもの。あたくし達には関係ありませんわ。
 今リカが、女の子の一番気持ちのいい場所を触ってあげますゥ…」
そう言って椎名は、体ごと足の間に割って入ると、双樹の柔らかい膜に隠された
小さな突起を探り当てる。そこにぺろり、と上品に舌を這わせた。
「はあっ…!うんッ…」
双樹がびくり、と体を震わせ、驚くような声を上げる。
そこは先ほどまでの愛撫の結果か、媚薬の効能か既に朱に染まっており、過敏になっているようだった。
椎名はクスリ、と笑みを漏らすと、突起に舌を押しつけて数回舐め上げ、そのまま勢いよく吸い上げる。
「あっ…あぁっ…やあっ…!」
馴染み無い刺激に双樹は弱気な悲鳴を挙げる。
「やめ…やめてリカ…そんなところ…舐めちゃ…恥ずかしいッ……!」
椎名の舌使いに耐えきれず、双樹は懇願した。
「あらァ…もうちょっとで、とっても気持ちよくなれましたのに…」
名残押しそうに微笑みながら椎名は顔をあげる。…と、突起の下方の蜜壺が、
ヒクヒク痙攣しているのが目に入った。

「…やっぱりお姉様は、ここに男の人が欲しいのね。わかりました。リカの、この細いお指で
 殿方の代わりが務まるとは思えませんけど…」
椎名は蜜壺の入り口あたりを、指の腹でつるりと幾度かなぞる。
双樹は期待と不安を持って、開いた足の間にあられもなく秘密の部分を晒していた。
そんな双樹に椎名は、意地悪く微笑みかける。
「でもリカ、あまり男の方の真似って得意ではありませんの。…たとえば
 咲重お姉様が、リカを好きな男の人だと思って、おねだりして下されば別ですけれどォ」
椎名の言葉に、双樹が明らかにより上気し、動揺するのがわかる。椎名は続けた。
「そうして下さらないなら、ここはお預けですの。そうしたらさっきまでみたいに
 女の子の敏感な場所を、じっくり触らせてもらうだけですわ」
言い終えると椎名は、また突起を刺激する作業に戻った。ぺちゃぺちゃという
音は次第に激しさを増してゆく。時折、椎名が誘うように見上げると、双樹はとめどなく
寄せる快感の中で戸惑う様子を見せていた。
ちいさな穴は痙攣を続けていたが、それは最初の頃より格段に大きく、早いペースで震え…求めていた。
「…ほら、我慢は良くありませんわよ…」
笑みを含みながら椎名がいざなう。蜜壺からは次々と潤滑油が溢れ、誰かを迎え入れる準備を整えていた。
「も…もう…おねが、い…」
小さくあえぐばかりだった双樹が、ようやく口を開いた。
「…誰に、お願いしてるんですの?」
「お願いです…あたし…ほしいの…阿門様が…」
突起への刺激を指に変えて、椎名は双樹のほうに顔を寄せた。
「もっとはっきり、おねだり出来ますわよね?」
そう言い放つ椎名はどこか不敵で傲慢ですらあり、いつもの可愛らしい妹分の面影は失せていた。
…しかし、そんなことを感じ取る余裕は双樹にはない。

「…アタシの『ここ』に、阿門様を、頂戴ッ…」


振り絞るように懇願した双樹の顔を覗き込むと、椎名は双樹の悲痛な表情とは対照的な、
この上なく満足そうな笑顔を返した。
「ふふふ。とっても良く出来ましたわァ…」
椎名は指先を突起から、穴の方へと滑らせる。確かめるように人差し指で、穴の入り口付近を
探ってから、粘液を纏わせて内部へと滑り込んだ。

指先を沈めたり、引き上げたりするたびに、そこにたっぷり溜まった愛液がとぷん、と弾ける。
幾度か試してから指を増やした。柔らかな入り口を押し広げ、ねじ込む。
「ああァッッ…!」
双樹が嬌声を挙げる。秘所の収縮だけでは足りず、足を大きく挟みこむように反応して
愛する男を受けとめようとしている。
「あンッ…スゴイッ…阿門様…あもん、さまァ…ッ!」
この手首の力だけの刺激では、全身で貫くような男性の与える快感には到底及ばない。
しかし、阿門のために操を守り続けた双樹は、椎名が相手でも十分過ぎるほどの反応を示していた。
指を二本、三本と増やす。増やすと最初は抵抗があるのに、幾度か挿入するうちに柔らかくほぐれ、
また別の生き物の口のように貪欲に受け入れていた。
「あァ…とってもいやらしいですわぁ…咲重お姉さま…」
椎名は双樹のなかを掻き回しながら、その姿に見惚れていた。
双樹はもはや羞恥も何もかもかなぐり捨て、猫のような声を挙げながらひたすら愛しい男の名を
呼んでいる。男の愛撫を想像しているのか、その豊かなバストに自ら結構な激しさで掌を這わせていた。
結局双樹が呼ぶのが男の名だということが少々気に食わなかったが、彼女の今の艶姿は自分の手に
よるものだという自負はそんな嫉妬すら凌駕した。
まるで何か、水分を多く含んだものを練っているかのような水音と、悶える双樹が軋ませる
スプリングの音、そして少女二人の荒い息遣いがひたすら女子寮の一室を支配する。

と、椎名は双樹の中の、ある感触の違う一点を探り当てる。そこに触れられた双樹は、
明らかに全身を痺れたように大きく震わせ、これまでにない反応を見せた。
椎名が探していたのはそれだった。ココを見つけなければ、男性による力任せの行為には勝てない。
自分との行為に酔わせる、決定的な材料にはなりえない。
「ああぁッ…!ソコッ…ソコはダメぇッ…!!!」
逃れようとしているのか、更なる快感を得ようとしているのか…双樹が身体を捻る。
「ダメだなんて…ここが一番良いんでしょう?ねえ……咲重」
「イヤあっ…こんなの…おかしくなっちゃうッ…ああッ…!」
「おかしくなってお仕舞いなさいよ」
椎名は双樹の両足を押さえつけ、よりポイントを絞り執拗にその部分を犯し続けた。
「…ほら、『阿門サマ』も、そろそろ達せられるそうですわ」
双樹を刺激する指にリズムをつける。次第に緩慢に、力強く。
「はァッ…あぁッ…ああああああーーーーッ…!!!」
ひときわ大きく悲鳴を挙げて、双樹は達した。ビクン、ビクンと全身を震わせ、しかし失神と同時に
全ての力が抜け、ベッドの上にしなだれ落ちた。
動かなくなった双樹の秘所から白い、小さな手を引き抜くと、指先はねっとりと糸を引いた。
滴り落ちた愛液はシーツもわずかに湿気らせていた。こんなにも濡れるものなのか、と思う。

椎名は双樹の愛液にまみれたままの指先で自分の恥丘に触れると、いつの間にかほのか
な熱を持ち、しっとりと湿っていた。彼女もまた、双樹との行為にこんなにも昂ぶっていたのだ。
呼吸も浅く、心臓も全速力で駆けたあとのように波打っている。
「ふふふ…可愛いお姉さまァ…」
気を失った双樹を、上から足先まで一望する。
「お姉様がリカをどれだけ好きか、なんて、まだ関係ありませんのよ…今は、これで十分…」
椎名は裸の双樹にぴったりと寄り添うと、その豊かな白い乳房に頬を寄せた。
「大好き、お姉様…」
双樹を征服したその歓びが、彼女を幸福に包んでいた。そして椎名は
既に夢の中にいるかのように、うっとりとその瞳を閉じた。

《終》