他の人へ嫁ぐ玄奘。幸せ一杯の玄奘。

「わたし、玄奘を好きなんだよ」






「私も、のことが好きですよ」

冗談であればいい、相手にそう思いこむのは無理があるのはわかっている。私には、もう、想いの通じた相手がいる。

「そうじゃ、なくて……どうしてわかってくれないの!? わたし、わたしこそ、玄奘を愛してるのに……っ!」

壁に寄りかかっていたが一気に近寄ってきて、思い切り抱きついてきた。圧迫感を覚えるほどで、でも女の子の細く、柔らかい感じ。私には、が親にすがりつく子供のように思えた。彼女は、きっと安心したいだけ。これまで親もなく一人で生きてきたのだ。見せることは少なかったけれど、孤独に苦しんでいた。私には、本当の親がなくても和尚様が親代わりをしてくれて、淋しげな子供たちがかえって私を奮わせてくれた。

は、そんな寺に来たばかりの子供に似ている。ただ、救われることなく大人になってしまった。この子が抱えていた淋しさを少しでも埋められる人がいたなら違ったはずだ。
『他人の気持ちがわからない』
『みんなと居るのは気持ち悪い』
そう言っていたのも、まだ知らないだけ。この旅のなかで、は変わった。たくさんの人と接していけば、補える感情、感覚はたくさんある。

「玄奘と一緒にいたいの、離れたくない」

まわされた腕が震えている。が前へ進む助力になるなら、今はに応えよう。私が支えになろう。いつでも背中を押してあげられるように。