秋晴れの、気分のいい日が続いている。遠くまで霧がかることなく、骨が奇怪に道を創っているのまでくっきり見通せる。
 たしか、この見渡せる場所は全てアルレビス学園の土地って話だ。戦闘科の訓練に使ってるって聞いたけど、あんな所に行ってるなんて、想像もつかない。ロゼは…どこにいるんだろう。


 思い切って言えてたら、こんなに憂鬱にはならなかっただろう。あの時、言えてたら。
 ちゃんと、友達になりたかった。




 私っていうのは、いつも勇気があるとは限らないのだ。
 思い切って話し掛けられるときがあれば、約束を取り付けられないこともある。あの時勇気を出してなにか言えてたら、いまも一緒に話しとかできたのかも。こう後悔しても今更だ。それに、そうだ。私の勇気は簡単に消え去ってしまう。なんてことない事だって、出来なくなってしまう。

 際立つ水色の後ろ姿を見付けても、見つめることさえできない。自覚はあっても、意気地のなさは恥ずかしいから。




「ユーリ、課題わかりそう?」
「ううん、全然。もかあ…」
「習った覚えのないことばっかりじゃない?」
「だよねえ。前もだったよねえ、トニ先生…」


 友達と二人してため息をつく。
 選択必修が、残りはトニ先生のもののみとなってしまって仕方なく取った講義は、やはり前回同様。明らかに錬金術に偏った課題を出された。普通科にポンとそんな問題を課されても解るはずがない。いつも「めんどくせえ」と言っているから、錬金術科の問題の使いまわしとしか思えない。だから履修したくないんだ、あの先生の授業は。

 とにかくさっさと手をつけないといつ終えられるかわからない。資料館を友達と手分けして探していく。

 調合における素材の属性についてなんでもいいから調べて来い…って、ほぼ錬金術科の使い回しで、投げやりな課題だ。
 調合はおろか錬金術さえ大して知らないのに、なんでもいい、はない。なにが有るのかも知らないんだから、まとめにくいったら。



 入門書をいくつか見付けたものの、レポートに足る量ではない。ユーリはすぐ音を上げて館から出ていってしまった。
 一人で溜息を殺しながら筆を進めても、レポートの規定字数には程遠い。めんどくせえ、そう言いながら字数は減らさないなんて変な人! 私だって、めんどくさい。

 文句を言ったってなんにせよ、別の本を探す必要がある。めぼしい本があればいいんだけど、と思いながら司書に尋ねた。
 司書が厚いファイルを開いて暫く、やっと顔を上げた。

「奥の方にあるようですね。これが資料館の地図です。で、現在地がここなので、…線で記しておきますね」
「ありがとうございます。…あの、でも、奥側って入っちゃいけないんじゃ…」
「? そんなことは…。あら、もしかして、普通科生ですか?」
「あ、はい、そうです」
「でしたら、錬金術科か戦闘科の人とでないと、危ないので…」
「そうですか…」
「もしお知り合いが居ないのでしたら、学生課にいる赤い髪のユンを雇ったらいかがでしょう?」
「…ありがとうございました」



 そんなの、司書が探すものじゃないか。とは言えずに、言われるがまま学生課に来てしまった。
 アルバイト掲示板の前に立っているのは、よく見かける。でもこんな依頼受けてくれるのか? でも、司書が言ってたんだから、大丈夫だよね?





淡藍色3