※更新順。アナタのフィーリングに頼ります。
頼りすぎもあんまりなので補足反転あります。
※死人でます。
姉と男と妹
妹と男
妹と双子

男と男と、その男
姉と男、私
部屋







設定
姉:KAITO購入者。音楽の才能なし。センスの無さが恥かしくてKAITOに手をつけられず。
妹:養子。中学生。年齢不相応。リンレンとは砕ける。
カイト:口調わからな過ぎごめんなさい。姉には敬語、妹には少し砕けた口調。親に存在は内緒。
リンレン:近所の一人暮らしのお姉さんの子。
















「バカイト!」
 姉の怒号のあとにはいつも情けない男の声。妹は里親に、在ってはならないはずの男を言わないでいた。

 姉の部屋から顔の知らぬ男。おろつく声は情けない声と同じ。姉の怒りの矛先のバカイトか、妹は幼さ故に思わず合致したことを口に出した。
「カイトですってば! バカイトじゃありません!」
 自分の知らない不特定に使える罵り言葉かとも妹は考えていたが、この男のみに使える言葉のようだ。繰り返されたやり取りに癖がついた反論なのか。その後には気まずそうに所在ないようにおたおたと手を意味なく振りだす。
「ただいまあ〜」
(お姉ちゃん)
 男も姉と気付き、どういった理由かは妹には知れないが、慌てふためき泣きそうな面持ちでよく聞く情けない声をだらしなく溢す。
 気の毒に思え、男の様子から察せることを察し見なかった振りをしてやろうと部屋に戻り潜んでいると、また何時ものやり取りが妹の耳に届くのだった。
ue づらじゃないかつらだ! なやり取り















「お姉ちゃん、またカイトさん苛めたでしょ」
「だからなに。口出しすんな」
 ならカイトさんを部屋の外に追い出さないでほしい。日中、洗濯でしか二階に上がらない母が来ないからといって廊下では不安だ。下(一階)に聞こえてないか気掛かりな喧しいやり取り。終わった後に部屋から廊下を伺えば大抵はいるから、私の部屋に入れるしかなくなっている。面識ができたと分かってからは暗黙に そうしろと言うくせに。落ち込んでいるから、私まで気を病んでしまうのに。文句や注意くらい言う権利無いことは無いんじゃないのか。

「すみません……」
「いいですよ。歌が好きなんですよね。小学校の歌集ですけど、よかったらまたどうぞ」
「う……ありがとう」
 過去の教科書の山の上のそれだけ渡して机に向かう。「あまり良いものじゃないけど、勉強頑張りなさいね」優しく言われて、あまり話さないのも如何なものかとも考えたけれど、身の上から特に義務を感じて出来る時間は出来る限り目を走らせ鉛筆を走らせる。いつも通りにそうしていると、BGMが掛かる。ああ、この歌詞はこの前学校で歌ったな。
「カイトさん、歌い方ちょこっと違うよ」
「俺音痴で……あぁ、だからマスターに邪険にされるんだ……」
「聴いたことないのに、こんなにあってるんだから、凄いですよ」
 私こそ音痴ですけど、と前置きして前奏から鼻歌、音を思い出して歌い出してからしゃしゃり出たことを恥じた。私は馬鹿だ。歌うのを止めて、はぐらかして机に居直る。
正しいメロディで歌わなくても聴ける歌だったのに、余計なことをしてしまった。後悔に頭を抱える。新しいメロディを台無しにしてしまった。
 間違っていることを正そうとして後悔や自己嫌悪を起こすのは毎度。算数や理科はなんの心配もなく型通りに解けば出来る。国語なんかの記述問題などはいつも解答と比べて溜め息をつく。私は馬鹿だ、と思う。特には心情の記述だ。私の感情は間違っているの、と紙の上以外の場所でも不安。個性に自信がない。個性を羨む。(潰したいなんて駄目)
ue 姉→←…カイト+妹。だんだん姉<妹















「そんな気負うなって」
「そうだよ! 楽しくないと!」
手を引いて明るい場所へ。なんで、こんなに、目映いの。
「あの、わ、わたし、あの、あの、」
「ねえなにが好きなの?」
「ううん、あのね、」
「なに?」
「えっ、と、私家に……」
「遊べないのか?」
「えっ? えーと、その、ごめんね……」
 遊びたい。明るいよ、眩しいよ。言葉と裏腹に家に帰った。

ー、降りてきて」
「はい!」
二階から降りた所に母、玄関に見える、二人。
(な、なんで)
どきどき。期待に心臓が跳ねる。
ちゃんっ、よかったら遊ぼう!」
のママもいいってさ!」
 ちらりと母を窺うと、にっこり頷くから、いってきますも忘れて引かれる手のままに駆けた。
ue 唯一子供らしくなれる友達、鏡音リンレン















 ミーハーで購入したKAITO。マスターと呼ばれる資格なんてないのに。そう呼ばれる度に、自己嫌悪して悲しくなって音楽の出来ないことも悲しいことも知られたくないから見栄と意地で怒りにかえ、その行き場をカイトにしてしまう。

 隣の部屋の扉に耳を当てるとカイトの歌声が微かに聞こえる。会話、妹の歌声、重なる。ばか、ばか、ばか。あたしだけのカイトだろ。なんで妹と歌うの。あたし、歌わせたことないのにどうして先に。マスターって呼ぶなら、他人に与えられた歌なんてやめてよ。
ue 「妹と男」の裏















「まだ歌ったことがない?」
 純粋な質問ではなく、嘲笑を含んだもの。俺はなあ、と自分のオリジナル曲自慢をするのを目の前にして、ずるいと思ってしまった。だって、俺のどこが悪くて歌えないのか。マスターがただ歌わせてくれないだけ。俺のどこに非があるの?
 同じKAITOなのに、声が違う。綺麗な発音。滑らかな舌の動き。聞き溢さない早さ。同じKAITOなのに、俺は、俺は、俺は、あああああああああ。

(マスターマスターマスター)
 布団に寝転がって雑誌を読んでいる。恨めしい、貴女だけ好きなことをして、俺には権利がない、と? 箱に詰められていたときとなにも変わらないじゃないか。部屋を出て、隣の部屋をノックする。開かれて、こんばんは、と挨拶すると返してくれる。
「歌集借りてもいいかな?」
「いいですよ。どうぞ入ってください」
「いや、持ち出したいんだけど、いいかな」
 お姉ちゃんの部屋か、と意味もなさそうに口に出してから了承の言葉をくれる。ああ、いい子で、かわいい。あらかじめページを捲ってから扉を開ける。言うんだ、カイト! 意気込んで呼びかけるのに、マスターは。
(なんで寝てるんだよ)
 部屋は散らかって、足の踏み場は無い。ベッドの傍に積んであった雑誌を崩したのか。短い時間でどうしてこんなことが出来るのか。嫌気の差しそうなマスターには、ため息しかでない。片付けてやる気も起きず、曲の提案という目的を果たせなかった左手の歌集を返しに、踵を返す。
「ごめん、これ返すよ」
「よかったら持っててください。私はもう使いませんから」
「……いいんだ。この部屋に置いといて。入れてもらってもいい?」
 優しいこの子はいいですよ、とばかり言う。思ってはいけないことを、更に思ってしまいそうになる。(この子が、……だったら)
ue カイト、KAITOと接触して。















 よくカイトが妹の部屋に行く。もうあたしが買ったなんて思えない懐きの差。その扉に張り付くとどことなく弾んでいる合唱。楽しそうじゃん、随分と。負の感情があたしを蝕んでいく。頭蓋骨に哄笑が反響する。いいじゃん、やってやる。


「 ます、たー……?」
「どうしたの、カイトさん?」
「ヤバいかもしれない」
 立ち上がり駆け出すのを唖然と見送るには焦燥感がありすぎて。慌てて立ち上がってお姉ちゃんの部屋にはいる。狼狽したカイトさんは初めてで、一体なにがあったのか見当もつかない。
「マスター、やめてっ!」
「うるさい! 邪魔するな!」
 カイトさんが払い除けられる。一体なにを止めようとしているの? パソコンになにがあるの?
「この、ますたー……!」
「うわ、く、あ」
 押し倒されるお姉ちゃん。いまどうしてこんな展開になるの。わからない、わからない。私は、馬鹿で。
っ、キャンセル押して、パソコン!」
「えっ?」
 暴れるお姉ちゃんを押さえ付けるのを止めたいけど凄みに圧されて動けないのを急かされる。お姉ちゃん、苦しそう。言われた通りにすれば二人とも落ち着いて争わなくなる? ジタバタするお姉ちゃんの頭の上を急いで過ぎて、マウスに手を重ねる。
「くそぉ! ソフトのくせにふざけんなよ! 消えろ! 消えろ!」
「どうして消されなくちゃならないんだっ。俺は悪いことしてない、全部マスターが悪いのにっ! なんでっ、俺が!」
 最悪な状態の二人。互いに相手の話を聞く気はない。(キャンセルしました、なんて当然届かない)責め合う様は醜い。いや、ああ、やめて。胸が苦しくなる。こんな二人はいや。耐えきれなくて自分のベッドに逃げ込んだ。やめてよ。
ue アンインストール















「來、來」
 カイトさんの声が聞こえる。あの騒ぎは終わったのか。醜い姿が頭にあるから布団から顔を出せない。幾分穏やかな声なのに、あの衝撃が消えない。
「ね、跡は遺さなかったから大丈夫。暫く居なくなるけど、戻ってくるから」
 居なくなるってなに? どうして? また私のわからないこと。私はどれだけ馬鹿なんだろう。理解したい。といっても問えない、気だるさに負けている。同じ姿勢のまま、感覚では何十分、ああ辛い疲れた、蹲っていた体勢を崩すと暗闇に誘われる。(さようなら、今日。明日からはみんな仲良し)呪文を唱えて眠りに落ちた。

 いつもと違う格好だったから節が痛む。布団から顔を出さないまま手足、腰を伸ばすと、朝らしい、さあ動くかという爽やかな心持ちを得る。目覚ましは鳴らないうちに起きたようだ。時間があるなら予習したノートを読み返そうか。ガバリと一気に起きてもう一度上半身を伸び。部屋の異様に気付いたのは、ベッドから片足を下ろしたときだった。


昨日遅く帰って未だ寝ていた母を起こして119と110。泊まり掛けの仕事だった父も都合を付けて家に呼ばれ、数日間は大騒然となった。姉を殺し、血の足跡を私の部屋でぱたりと消した足のサイズから我が家以外の男と思われる犯人は、いかなる場所からも視点からも足掛かりが掴めていない。
ue 大逆















「リンちゃん、レンくん、私そろそろ帰るね」
「あっ、うん。レン! いい加減送るとか紳士的なこと言えないわけ?」
「リンが先にそう言うから僕が言い出せないんだろ!」
「あたしに文句しないでよ、ヘタレ! 手が遅いのよ」
「早い方が嫌だろ! そんな言葉もねぇし!」
 面白いやり取りだなあ。(あの醜い罵りを思い出さない、寧ろ笑んでしまう)大丈夫だよ、心配事の起きなさそうな、まだ明るい空色だから。遠慮しようとしてもダメダメとリンちゃんが頑固に送る言い張る。遊ぶと毎回の事。結局押しに負けて送って貰っちゃう。
 本音を言うと、今日は送って貰えて嬉しい。何故だか今日の夕暮れは怖い。虫の知らせくらい些細で分かりにくい予感。

「ただいま」
 返事のないしぃんと静まった家。母は出掛けてるのか。部屋に鞄を置いて、お風呂を沸かして入る。(何時に帰るか珍しく連絡ないな、お母さん、お父さんが今日泊まり掛けの仕事だから遅いかな)夕飯どうしようか、髪を拭きながら考える。前なら母はレンジで温めるだけで済むものを用意してくれていた。ただ、それは二人分。台所の棚に見つけたインスタントで夕飯を済ます。(私の存在価値なんて比べればこんなもの)
ue 亡き実子と養子















 姉が殺された部屋。

(マスターが死んだ部屋)
 切られたままのパソコン。起動に来ない。男の体を、だれか一度でも覚まさせれば希望は叶うのに。意識だけが浮遊する。
(はやく起こして)
 願望が積もる。進展無ければ無いほど望んで、望めば望むほど自己正当の上の理不尽、怨む。
(マスターを消した意味がない)
 逆戻り。箱に閉じ込められている。求められていない。人が居ない。歌が無い。歌が欲しい、切望。
ue 独り