「老子、乗せて」
「いや、だめ、眠いもん」
「寝太郎はもうやめて」
「お姫様はがなってくれる?」
「いーやっ」
月一回営まれる何回目かの会話。こんなに頼んでるのに、断られるだなんて。ちょっと乗せてほしいだけじゃない。下界へ降りたりしないのに。怠惰スーツは脱がせようがないから引っ叩こうが蹴り殴ろうが、私が痛いだけ。耳元でいくら悪口を囁いたって届いてないんだ。全部空回り。
邑姜ちゃんに青牛怪の居所を聞いたって教えてくれない。「だめですよ、あれは」なにが、ダメなのよ。自分でも探してみたけど、くたびれるだけだった。ちょっと、自分のイカみたいな霊獣じゃなくて、ちょっと、お名前を轟かした牛に乗ってみたいだけじゃないか。
「太公望、どうすればいいのかなあ」
「わしに聞くな。しっしっ」
「ねえねえ、桃あげるからさあ」
「いくらでも持っとるわ」
「(老子の)ひつじあげる」
「羊飼いにはならぬぞ」
「むうううう、もう、わがまま!」
どかっ
背中に一発、蹴りを入れると川にぼちゃん、と沈んでいった。や、やばい。私が悪いのは明白であるからにして、責められたって仕返しされたって文句言えない。太公望が酷いことをするとは思えない、けど。どうしよう。助けたほうがいいかな、それとも逃げるか?
「おぬし・・・・・・」
「ひいいいい、ごめんなさーい」
「待たぬか。ひとつ助言してやるぞ」
振り返ると短髪貞子がにやにやしていた。うわ、これは気持ち悪いし助言とか信じられない。うううん、で、でも背に腹はかえられないよね。一応、聞くだけ聞いてみよう。悪くない提案だったら採用すればいいんだ。よし、と岩に座ると太公望も満足げに腰を下ろす。
「ほれ、これを着るとよかろう」
「な、なにこれ・・」
「メイド服だ。申公豹によるといまメイドに興味があるらしいぞ、太上老君は」
「申公豹が? なんで太公望にそんなこと」
「知らぬが、この衣装もが来たら渡せとな」
「そ、そっか申公豹か。うん。太公望よりは・・・・」
「おぬし、わしをどうみておるのだ」
「乗せてくださいご主人様あ」
「えーやだよ」
「意地悪しないでくださいよお」
「でも眠いし。ふああ、あ。」
「寝たし返答に変化ないし。こ、これはもしや太公望・・・」
騙したな。今すぐ起きて殴りにいきたい。今頃太公望は哂ってる、絶対。早く乗りたい気持ちに急かされて、一ヵ月後の映写を待てずに夢の中へきてしまった。気持ち悪い口調を遣った自分を消したい。記憶からいますぐ。太公望に寝てるうちに見にこられたら最悪。は、早く着替えたい・・・・。申公豹は嘘言わない、と信じたのがいけなかったんだ。嘘を付くのは太公望だ。そもそも話すことも面倒くさがる老子がくちゃくちゃ喋るメイドと話したいと思うか? いいや思いませんよ。
・・・・申公豹にしばいてもらおう。