「どこへ行くの」
不安。ぶわっと突風が吹くようにそれに襲われる。なんでもない、後姿なのに、どうしようもない不安が宿る。なにをしたって彼は、此処を離れていってしまう。予感。「ふうむ」伏犠は髭をなぞって、笑み、私を一度腕に収めた。
「すぐ帰ってくるわ。案ずるな」

取り残されて、虚ろに日々が過ぎていく。彼の”すぐ”は抽象的で、実際にどれほど掛かるかわからない、心懸かり。伏犠が何処へ行ったのかも知れず、憂患するにできない。不毛な考えが募る。生死もわからず、事情もわからない。もしかして、愛する人でもできたのか。そんなの、・・・ひどい。焦燥に駆られる。


「何年、経ったのかなあ。どこで、なにしていたの」
大剣を担ぎ、いつかと同じように玄関をくぐりやってきた。
豪快な笑いを飛ばして、左腕で抱き寄せられる。ああ、「少し、な。坊主等に手を貸してきたんじゃよ」もう、「そう、なの。ああ、」何してたかなんてどうでもいい。「帰ってきて、よかった・・・」懐かしい心地に、自然としがみつく。頭上からの声と、鎧の硬さ。離れたくないと、願った。