独りでいたい? ――





これは、なんだろう。全くの液体の血溜まりにぽてんと二つ三つと出る小さく紅い塊をつまむ。完全な固体ではなく泥のようなむにゅ、とした感触。そんなつもりないのに出てくる笑い。途切れない。どうしてか笑えてしまう。なにが可笑しいの。自問しても、心から返ってくるのは、同じもの。
「あは、あはははは、はは、っはっ、あぁっははっはっはっは、あはあ、あ、あひ、あ、ははは」


軽やかな声が綺麗に廊下を通る。アトリエへ侵入する。やっぱり、安い扉。これから現れるだろう人物を思いため息が出る。ひとつ吐き出したところで扉が開かれる。一通りアトリエ内を見回して、言う。
「一人でなに調合してんのよー。ねえねえ、なんか手伝おっか。」
「私も私も! あ、昨日作ったフィロ特製の薬品持ってるから少しあげようか?」
「(・・・うるさいなあ)」

「(今日は・・・、やらなくたって平気、やらなくたって平気、やらなくたって平気、はやくはやく寝よう)」



(不安抱えて学園にもアトリエにも入ったけど期待する気持ちだって負けてなかった勝ってた なのにどうしてこんなつらいの? なにが悪いの、なにが原因? 私? まわり? 自業だなんてそんなのいやだ。私に非が? いや、いや、ほとんどの原因は周りだ、みんなだ。だって私なにもしてない。私、ここに来るまでふつうだったもん・・・。)

「あっ、つ・・・」
ごぼっ、とはっきり音を立てて跳ねた熱湯を浴びて思わず声が上がった。アトリエに誰かいた? ああ、いた。
「君はなにをしているんだ、ぼうと手を見つめてないで冷やせ。」
「痛くないから平気。調合済ませないと、あれダメになっちゃう。」
「自分の腕がダメになったらどうする。なにかしら混ぜた液体を浴びたんだ、その可能性だってある。」
強引に水道まで引かれ、蛇口からどばどば重力に従い落ちる水をみて怯む。なんていうことなの、これは。
自ら冷やすことをしないことに苛立ったようで、また強引に腕を引かれ袖をまくろうとする。
「あ、やだ。」
鋭く布こすれする。傷に触って痛みがまわる。
「・・・、これは・・・・・・。」
「・・・ロクシスとは関係ないよ。」
手の甲まで、必要以上に長い袖。跳ねた水滴を防いでくれたっていいはずなのに、肘あたりまで被害を蒙っていた。手の平の袖の短い部分からもぐりこんだんだと思う。運がわるい。手首の傷は世間から守ってくれていたのに。

いままでは。
もう、笑いに笑って狂いたい。