炎色反応 第三章・30
「お前もいい格好だな、ティス」
途端にオルバンに揶揄され、かっと頬が赤らむ。
連続して太いものをくわえ込まされ、射精された尻から白濁があふれ出しているが分かったからだ。
「何回してもらった? その量じゃ、一回じゃないだろう。二回か。それとも三回?」
怒っているという感じではなく、オルバンは笑いながらそう聞いてくる。
だが本当に機嫌がいいのではないぐらいもうティスにも分かる。
「……イーリックさん、だめ!」
剣を落としても、彼はまだ諦めるつもりはないらしい。
掴みかかろうとしたところを魔法使いの蹴りが見舞った。
胸の真ん中を蹴られ、ぐっと息を詰めてイーリックは壁に叩きつけられてしまう。
「お前も見目はまあ、悪くはないんだがな」
オルバンは壁際に座り込んだようなイーリックの側に近寄り、投げ出された足を軽く蹴った。
「オレはもう少し中性的な方が好みだ。残念だったな、イーリック」
手が振り上がる。
ティスは無我夢中で体を動かした。
「やめて! お願いしますオルバン様、なんでもしますからその人だけは殺さないで!」
オルバンがこちらを向いた。
強い印象のある両眼にじっと見つめられると、背筋に寒いものが走るのが分かる。
「お願い、なあ」
含み笑いをしてつぶやくと、彼はおもむろに衣のどこかに手を突っ込んだ。
取り出されたものに気付いてティスははっとする。
青い石のはまった精霊の指輪。
「……レイネさんの…………?」
おそるおそる水の魔法使いの名を挙げると、オルバンはにいと笑ってそれを右手の小指にはめた。
青い石が輝き始める。
彼の指先から噴き出したのは、銀の糸と見まごうような細い水流だ。
レイネが使ったのと同じ魔力の糸は、まだ動けないイーリックの体のあちこちに巻き付き始めた。
「他人の石じゃ、やはり加減が掴みにくい」
具合を確かめるように、オルバンは青い石のはまった指をくいくいと動かす。
可愛らしいようなしぐさとは裏腹に、イーリックに巻き付いた糸が急激に締め上がった。
「ううッ」
「やめて!」
苦悶の声を上げる彼に顔色を変え、ティスは痺れたような体で必死に身を乗り出す。
不自由な手がベッドから滑り、勢いで床に転げ落ちてしまった。
痛みに顔をしかめながら、床を這いなんとかオルバンの足元に辿り着く。
魔法使いはその様を、無関心な瞳でただ眺めていた。
「お願いです」
どれほどオルバンが怒っているかなんか承知だ。
自分を持ち物として扱うこの男は、己の承諾なしにこの体を他人に任せることを決して許さない。
これ以上逆鱗に触れればティスでさえどうなるか分からない。
だが虫のいい頼みと分かっていても、頼まざるを得なかった。
「お願い……後生です、オルバン様。その人を許してあげて下さい。どうか、殺さないで、見逃してあげて下さい」
「奴隷の分際で、盗人の処遇をご主人様におねだりか」
ふんと鼻を鳴らし、オルバンは今度は火の精霊の指輪を輝かせた。
レイネが落火と呼んだ、見慣れた光がティスに向かって来る。
それは白い頬を浅く切り裂き、一条の傷を作ってまた空中に戻っていった。
「どうしても、そいつといっしょに死にたいらしいな」
言われてイーリックの方を見れば、むき出しの腕や足、そして首に巻き付いた糸の周囲が鮮血を吹いている。
オルバンがもう少しだけ力を加えれば、彼の体はばらばらにされてしまうだろう。
「オレに逆らうなと何度も言ったはずだ。お前はそれも忘れてしまったのか?」
全身を冷や汗が伝う。
火の精霊の力のみならず、気付けば水の精霊の力まで身に付けたらしい魔法使い。
ティスなどから見ればやっぱり雲の上の存在に見えていたレイネを、この男は恐らく殺してその力を奪い取ったのだろう。
彼の意思に逆らうなど、どう考えても愚かなことだとはよく分かっている。
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