はじめさん
74点
悪魔が本当にこの通りの名前負けの存在だとしたら、 まさしくここでの悪魔は人間の嫌な部分を映す「鏡」でしかない。 このような手で自分の中の嫌なものを吐き出している二人には、 いつか来る当然の結末であろう。 ある意味、「おーい、でてこい」に近い作品である。 逆に悪魔が名前通りのモノであったと考えるなら、 すべてが悪魔に仕組まれたことだとも考えられる。 では、あとの26点はどういうことなのかというと、 後期の乾燥しきった星作品を思わせる雰囲気の中で わずかながらの生々しさが鼻につく。 それはこの時期まだ星が 完全に現実から逃げ切れていなかった証明であろう。 わたしの星の人物評は 「嫌な事から逃げつづけた数少ない男」である。
ホシヅルさん
100点
傑作。何回読んでも面白い。 スペインの言い伝えに基づいているが、この言い伝えそのものが星さんの創作。人間の心理をじつにうまく描いてあって、今回読み返してもわくわくした。最も好きな星さんの作品の一つです。
九条ゆやさん
100点
細かいつっこみはありましょうが、こういうブラックなお話が 大好きなもので(^^ゞ
しげまるさん
85点
背筋が凍るミステリー。 世にも奇妙な物語にそのまま流用できそう。 「アイデアの法則」から言うなら、 これは悪魔+サディズムといったところでしょうか。 「キュー」と鳴いたり、大きさが小動物サイズだったりと、 人間のサディズムをかきたてる設定が絶妙ですね。
星さんは安易になりやすいから悪魔物は書かないようにしている とおっしゃってましたが、これは文句なしの傑作でしょう。
にゅる兄さん
99点
出た! 大好きな作品の一つだ〜!!!だぁ〜だぁ〜だぁ〜(エコー)
子供のころ、虫やカエルをいぢめた経験はありませんか? そういった原始的欲求を、たっぷり満たしてくれる話なんだよな〜。 相手は悪魔だし、罪悪感のないところがメッチャよい。
【他のよいところ】 ・深夜12時を待つ、ヒマつぶしの描写がよい。 ・無限の廊下をつくる作業の、具体的かつ詳細なところがよい。(読みかえしたら、そうでもなかった) ・ペンフレンドがスペイン人なのがよい。 ・悪魔の「一秒に一歩ずつ」という、機械的ブキミさがよい。 ・「キュッ」「キューッ」「キューキュー」という悲鳴がよい♪ ・ネズミなみにホウキ(棒)で、たたくところがよい。 ・大きな耳をひねってやるところがよい。 ・「ジャムの壷(つぼ)」という言葉の響きがよい。(瓶〔びん〕じゃないのね〜) ・タバコで身もだえするところがよい♪♪♪ ・「なんとひどいことを」という、弱い非難がよい。 (ただし、ハンマーとハサミは、なにか汁が出てきそうでよくない)
と、いろいろポイントの高い作品なのに、なぜ、100点満点ではないのか? それは、初めて読んだときから結末に不満があったからさ。最後のほうで、妻が「偶然」、あわせ鏡をするところが気にくわんのじゃ〜。 ムリヤリ作ってる感じがする。(星さんらしくない)
しかし、最初(つかまるところ)から、すべてが悪魔の計算だったとしたら? 妻の行動も、悪魔にあやつられた結果なのかもしれないな〜。
【おまけ】 ・13日が金曜日になる確率は「43/300」だそうだ。次の「13日の金曜日(14日の土曜日)」をまてばよかったのにさ。 ・真鍋さんのイラスト(新しいほう)、時計が「12時44分」になってるってばさ。
つぼさん
95点
その昔,合わせ鏡という言葉も知らなかった頃, 鏡に鏡を映したらどうなるのだろうとの素朴な疑問を試してみました。 そこに広がった不思議な世界。ずいぶん神秘的に感じました。 それからずいぶんしてこの「鏡」を読みました。 あの無限に続くような鏡の道なら,本当に悪魔が走ってきてもおかしくないだろう。 しばらくは13日の金曜日は鏡を見るのがこわかったですね。 何にもできない,ただ哀れな鳴き声(泣き声というよりはこっちの字かなあ?)をあげ 許しをこいつづける…。 そして迎えたこの結末…。こんな方法もあったのか,という驚き,じわじわ広がる恐怖。 忘れられない作品です。 あの悪魔のみじめさは演技じゃないんだろうと思う。 ところで,昔手紙をくれたといスペインのペンフレンドはどういう結末を迎えたのでしょうね。
さすらいびとさん
75点
悪魔の性格設定もおもしろいし、13日の金曜日の伏線もいいし、完成度は高いなあ・・・とは思うんですが、残酷描写がきついのと、登場人物に感情移入しにくいのがどうにも・・・。
このニュースはどう報道されるんでしょう? 部下おもいの優しい人だったのに、どうしてこんなことになったのか・・・ってみんな言うんでしょうね。
結局、悪魔って、自分が与えたものはまとめて取り返すのね。
おなじ系列としては「凶夢」があります。どちらも、子どものいない夫婦間で増殖していくサディズムの物語です。読み比べるとおもしろいかも。
ひかるさん
66点
この夫婦、なんて残虐な…と恐ろしくなりますが、格好のストレスのはけ口を手に入れた人間はああまでなってしまうのでしょうか…。
情けなくだらしのないように見えた悪魔が二人にもたらしたのは、やはり幸福ではなく悪夢でした。
呪いをかけるとか直接不幸をもたらすよりはるかに恐ろしい、間接的な恐怖を感じました。
ほしつるさん
65点
昔から憂さ晴らしにペットをいぢめる人はいたけど,最近は子供まで殺しちゃうもんな。トムトジェリーみたいにペシャンコになっても元に戻るとでも思っているのだろうか。
話はとてもよく出来ていて好きなんだけど,残酷物は苦手なので減点。私の中では「キューッ」と鳴くのはゴマちゃん(by少年アシベ)と決まっているのよ。
余談ですが,家の『ボッコちゃん』初版(文庫じゃないの)と文庫版(20刷)で比べてみたところ,これだけの違いを見つけました。
鼠→ネズミ,猫→ネコ,物淋しい→ものさみしい,再び→ふたたび,何か→なにか,「・・・・鼠?」→「・・・・ネズミでも出たの?」,電燈→電灯,壺→(フリガナ追加),次の朝→つぎの朝,僕→ぼく,鬱憤→(フリガナ追加),この頃→このごろ,ずい分→ずいぶん,閉める→(フリガナ追加),体に→からだに,鋏で→ハサミで,誰にも→だれにも,勿論→もちろん,何気なく→なにげなく,罵りあった→ののしりあった,何事も→なにごとも
殆どが漢字を平仮名に直しただけの変更ですね。「何か」なんて簡単な漢字は変えているのにも関わらず「壺」「鬱憤」などはフリガナが付いただけというのも不思議です。文字の雰囲気を変えたくなかったのかな? 最近のでは平仮名化はさらに進み,「鬱憤」が平仮名になってますね。
シュンスケさん
99点
中学生の頃読み、深く印象に残っていた作品です。 ホシ計画の投稿にあたって読み返し、「ああ、これだ!」と思いました。 「なんだ、いいことばかりじゃねえか!」 と思いきや、最後になってどんでん返しが待っていました。 悪魔って、人間の心の中に住んでいるのだと思いました。
大好きな作品です。
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