「聴覚部のユニット発現では、目とは違って外部から見た状態が全くわかりませんね」
「耳たぶのように軟骨でできた集音組織は発現には無関係ということか、そもそも聴覚的要因は不要と考えたのか、そこはよくわからないな」
「肉体にはそこかしこに軟骨組織があるので、軟骨が理由で発現しないというのも違うように思います。ということは、聴覚が不要ということでしょうか?」
「一応は外部音声は聞こえているようだから、何らかの形で再現している可能性はある。ともかく、耳たぶの発現がない以上は、集音性は確実に落ちるはずだ」
「聴く機能としては、ユニットに備わっている思念波による通信があるので、殖装体同士の会話だけなら集音性もそれほど必要ないのですけどね」
「深町が殖装体以外の対話で不通になったことはない。この場合、ユニットにより意図的に増幅されたのか、思念波に変換されて伝わったのかはよくわからないな」
「増幅方法としては、ユニットの組織部分が体感で感じた大気の振動を増幅して伝える感じでしょうか」
「まあそんな感じだろう。詳しくは別項目で述べるとして、耳たぶの発現がない理由を考えるか」
「聴覚部に少しでも穴が空いて入れば、多少は聞こえやすくなるのでしょうけどね」
「そこも目と同じく、耳が外部露出していないのは、爆音や真空状態などで内耳を保護する必要があるのだろうな」
「真空中では基本的に音は聞こえませんし、そうれば多くの場合思念波通信に頼らざる得ません。降臨者の生活環境がわかりませんが、ユニットはあらゆる環境下でも対応するようにできているのですね」
「それでも一応聴覚が残っているのは、殖装後も使い勝手が良いように感覚は残してあるのだろうな。これもある意味では殖装者保護の枠内でもあると推測される」