時にするどい質問をする青年A 謎の事情通・初老のB氏


※センサーの性能について:

「センサーの機能は、外界の情報を得るために、様々なエネルギー線を感知し、それを殖装者に伝えている。物理空間で活動するにあたり、有用な感覚器官であることは間違いないだろう」

「視界も、センサー自体が前後に動き、また左右が別々に動くので、かなり広い視野を一度に把握できそうです」

「人間の目では不可能な状況を可知できるのがセンサーの大きな役割となる」

「暗闇でも恐らくは大丈夫でしょうし、ユニットの環境適応度を高めるには有効な機能ですね」

「その場合、見えないことが多いわけだから、センサーが独自に感知し、それを殖装者に教える必要がある」

「危険察知のために常に周りを監視するシステムと、あとは焦点対象物の物性もわかるようですね」

「物性察知機能もまた高度な機能だな。センサーは広範囲の光学的分析が可能で、その物性が容易にわかるようになっているのだろうな。あとは、それら感覚を殖装者の種ごとにどううまく伝えているかだな」

「厳密に詳細を伝えるのは難しいのでしょうね。知能が高ければある程度見えれば後の判断は殖装者自身に委ねているかと思います」

「それはあるかもしれんな。完全な感覚的統一よりも、最低限必要な情報を確実に伝えられれば良いわけか。人間なら、感覚野ごとにセンサーの情報を振り分けられるために、詳細に情報が伝わりやすくはなっている。そういう生物なら多くの情報が伝わるが、あまり感覚に頼らない生物では、ユニット側から感覚自体を提供する必要があるかもしれんな」

「そういえば、センサーには壁越しだったり、通常では見えないところでも見通せる機能もありますね。その性能も、バルカスですら微妙にしかわからなかった蛹内部が、詳細に分析ができたことでした」

「蛹は強電磁波を発しており、それがクリスタルの透視能力を邪魔していた可能性もあるが、蛹の殻が外界との遮断性能が高かった可能性もある。これらの透視妨害がありながら、センサーはそれらを意に介さずに透視ができたことになる」

「殻は、元々宇宙船の組織(あるいは金属球の材質も含まれるか?)でできていたので、その関連で殖装体なら殻を透かせたのだと思います。問題は、電磁波が乱舞する状態でどうやって内部情報を得たかですね」

「電磁波そのものに内部情報が含まれている可能性もあるが、それも確証がないな。第一、それならバルカスにも読み取れた可能性もある。まあ、暗号化していたらわからないだろうがな」

「暗号化されたらきついですね。それはともかく、バルカスに詳細がわからなかったあたりも、クリスタルとセンサーの分析能の違いにあるのは確実ですが、電磁波に載せて殻の内部情報が外に漏れだしている情報なら、クリスタル自体に頼るのではなく、分析機を作って分析しますよね」

「確実性を求めるならそうなるが、それには時間もかかるし、本当に殻の内部情報が電磁波と共に漏れてきているかはわからないからな」

「そのことは置いておくとしても、結局は殻の内部を見るためには何らかの方法がないとだめですよね。通常は、見たい対象から出る透過性の超短波エネルギー波を感知するか、ユニットから透過エネルギー波を発して、その反射により内部の物体を知るなど方法があります」

「ユニットから発するエネルギーが、蛹の電磁波を透過するほど強ければよいのだが、ガイバーも生体ゆえ、自身の細胞を傷つけるような余計に強いエネルギー波を発するとは考えにくい。再生でしか保証できない細胞の損壊させる機能は、ユニットではなるべく禁止しているはずだからな」

「うーん、それなら壁の向こうの感知してから、ほんの数秒ほど強いエネルギー照射を行って透視するのはだめですか?」

「いやいや、それは本末転倒だろう。壁の向こうの存在を、透視エネルギー照射を行う前にどうやって知るのだ?」

「あ、それもそうですね」

「今の意見はあながち捨てたものではない。もしかしたら、センサーが壁越しに察知する能力と、その物体を分析する機能は別々のものかもしれん」

「分析できずとも察知する能力がセンサーに備わっているわけですか。でも、結局察知するには透視機能がないとだめですよね?」

「壁越しの物体、特に生体に対する感知能力があれば良いわけだ。壁越しでも分かるには、普通の物体とそうでないものの差を感知する機能が必要となる。生体が発する特有のエネルギーを感知すれば、察知性能はおおよそ満たされる」

「生体特有というと、生体エネルギーとかですかね」

「生体エネルギーが壁を透過できるかはわからないが、可能性の1つではあるだろうな。生体エネルギーを分析して詳細を知ることも可能かもしれんが、情報源としては足りない場合は、ユニットから内部情報を得るための透過エネルギーを発し、その反射で内部情報を知ることになる」

「生体とそうでないものの差は、壁越しであってもセンサーから見れば明瞭に分かるわけですか。生体はそれで良いとしても、生体以外のものは察知できないのでしょうか?」

「それについても、内部を見るための距離を2つのセンサーをもってその交差位置として測って見るだけの話になる」

「でも、その方法では、電磁波をかいくぐって内部の詳細な情報を見るには難しいんですよね?」

「・・・。確かにそうなる可能性が高いな。やはり別の方法があるのかもしれんか」

「透視と考えると、どうしても透過エネルギーに頼りがちですが、降臨者のテクノロジーはそこで止まっているんでしょうか?」

「エネルギーを感知するだけではなく、その先があるということか」

「例えば、次元を操るテクノロジーがあれば、空間そのものを覗き込むことができるんじゃないかと」

「ふむ、それならどれほど透視に対して物理的妨害があっても、空間を直接覗ければ100%見れるわけか」

「これも例の1つではありますが、可能性として考えれば面白いですね。現空間にいながら他次元を通して見れるなら、どんなに隠しても無駄になります」

「それでも、あまりにも遠い座標の設定は難しいだろうから、現在位置から数十メートル程度の空間、つまりセンサーで直接届く範囲なら、直接空間座標を計算して視界を持つという感じだな」

「そうですね。正確な座標もそうですが、惑星上であれば常に自転で動いているので、逐一正確に計算しながら座標設定しなければ特定座標を見ることは困難です」

「視界の範囲なら、目の前の特定座標は自転していても計算でわかるかもしれんが、遠い場所では難しいだろうな」

「遠い場所だとなぜ難しくなるのでしょうか?」

「例えば、魅奈神山の内部状況を探りたい場合、一度は入った場所だから、そこからどれだけ動いて来たかを正確にメタルが記憶しており、自転周期を換算し次元座標を割り出せるとする。これが随意にメタルから情報を引き出せるなら、行った場所ならどこにいても見ることが可能になる」

「それが可能だとして大きな欠陥があります。殖装したままなら良いですが、人間はちょくちょく殖装を解除するので、解除した間の移動距離などはメタルでも知り得ません。再び殖装した後に補正するとしても、その情報は人間の記憶が元になるので、どうしても正確性に欠けます」

「それもそうだな。やはり次元透過システムは、目の前にあるものに限られるか」

「目の届くところで、座標が設定しやすければ可能でしょうね」

「どこにいても情報が得られるなら便利とは思ったがな。まあ、次元透過システム自体が仮説にしか過ぎないことではあるがな」

「そうですね。仮説であれですが、特定の座標空間を直接覗き込むとしても、空間に穴を開けるわけじゃなく、その情報だけを正確に得るだけになりますね」

「空間に穴を空けずに見る方法か。微細な穴が無数に開けば、光学的な情報として見ることも可能になるのだがな」

「どういう方法かまではわかりませんが、特定座標空間との物理的接点は必要になるのでしょうね。その結果、対象が何かとい質を知るのに必要な情報を仕入れ、分析していくのでしょうね」

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