「深町の場合、火傷跡まで再生されたと言ってました。何もそこまでと思いますが、これも違和感がなくなるための措置というわけですね」
「火傷というと、本来は医療的な治療対象にあたる。ただ、この火傷跡はかなり前に生じたもので、それが直接殖装者に害になることはまずない。その場合には個性として区分けされることになるようだな」
「それは、殖装者が痣や傷を苦痛に思った場合にはそれらは消えるということでしょうか?」
「苦痛を取り除く際に、記憶の改ざんをすることは、ユニットの殖装者保護の観点からはあまり有効ではない。であれば傷を治すかと言えばそうはならないと思う。生命に対し中立的な部分は、個性の維持の名目で残していくはずだ」
「精神的苦痛はユニットを付けても続いてしまうわけですか」
「そのことは別の項目でも話したが、恐らくはストレス回避の意味で精神的ケアはあると推測している」
「なるほど、心理的側面を直接解決するわけですか。それは記憶の改ざんではなく、傷を苦痛とする記憶はそのままにそれを無視できるレベルに意識をもっていくというわけですね。それならわざわざ整形する必要もなくなりますね」
「全く苦痛を消すわけではないと思うが、自分の力で忘れ去れる程度には持って行くのだろう。自傷行為で死なれても困るから、多少精神面の自律的成長が歪曲しても、そういった理由なら干渉はするのだろうな」
「火傷跡のように、初殖装時に登録された個性は、生命に害がない場合に限り個性と見なされるなら、指先が無くなったりする場合でも再生されないわけですね」