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時にするどい質問をする青年A
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謎の事情通・初老のB氏
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※センサーによる光学的感覚の付加・補填:
「センサーを種に関わらず発現させる意義は、感覚の統一性によりユニット殖装体の連携を図ることにあると思われる」
「それは大事ですね。種によっては視覚すらない生物もいるでしょうし、そういった場合でも、ユニットを通してイメージを交換すれば対話も成り立つきっかけにはなります」
「無論、完全な一致情報とはならないだろうが、それでも意志が疎通できるレベルは保っている、というよりせめてそのレベルにないと意味がない」
「情報を処理するのは、殖装する者の肉体構造であり処理中枢なわけですから、種によってそれが違えば感覚の絶対一致なんて不可能ですね。それよりも、種ごとに理解できるレベルで、あれは何これは何と指し示して、異種族間の共同研究の研究でも役立つ共通意識が重要になりますね」
「そこまでユニットが改良されるまでには、種そのものの生命観研究に至るまで幅の広い研究が必要になるな」
「センサーの情報を翻訳してどう伝えるか、その翻訳がメタルなのかセンサーそのもので行っているのか。おおよそ、それはメタルで行っていると思いますけどね」
「他にも、殖装しているときだけ、ユニット自体に発生する共通の第二の脳があるとも考えた。だが、仮に第二の脳によって共通項がもてたとしても、殖装者の意志の投影がなければ意味がない。第二の脳では共通の意識をもっても、それは第二の脳であって、主役である殖装者の意識ではない。この脳が殖装者の脳と融合したとしても、それが自分であると認識させられるのもどうかと思う」
「第二の脳との融合ですか。ユニットはそこまで殖装者の改変を行っているのでしょうか? むしろ殖装者を改造せずに済むからこそ、ユニットは優秀なんじゃないでしょうか」
「殖装状態については謎が残るが、ユニットの概念は強度な改造という押しつけではなく、殖装したことによって欲する機能をもらいうけることにつきるからな」
「第二の脳よりも、メタルそのものが、感覚的な部分を受け持ってなるべく共通項をもてるようにする方が、ユニットの役割としては自然だと思います」
「うむ、ややこしいことは避けた方が無難ではあるな。何でもかんでもユニット便りでは、殖装者自身の個性が失われることにもなる。ユニットを種を越えて身につけることで、殖装者たちは一様に機能上は没個性となっているのがある種皮肉ではある」
「話をセンサーに戻そう。センサーなしでも装着品としては優秀ではある。だが、ユニットと自身でも、センサーがない不具合もある。それが無意識状態での防衛行動だ」
「自己防衛行動では、動く物を敵味方関係なく襲いかかるあれですか。殖装者が気絶状態では、その視覚情報が使えないので、ユニット自身のセンサーを使って対応するわけですか」
「ユニットといえども、メタルが無ければ不死身ではなくなる。メタルだけは何とか守ろうとする行動として、外部環境を把握し、安全圏に逃げ込む、あるいは戦って安全を得るなどの行動を取ることになる」
「確かにそれは重要なことですね。センサー無くしては無理な行動でもあります」
「その代わり、センサーを基軸に感覚を得るために、それ以外の感覚は便宜上抑えられる可能性もある。人間が殖装した場合ではそのようなことはないようだが」
「そうですね、視覚が増えても特に違和感もなく行動できるようですし、かなり上位のレベルで包括的に処理しているとしか考えられないところですね」
「違和感を無くすことは重要だな。感じさせないように脳を改変することもそうだが、そうしなくても済むように、メタルが殖装者の特性に沿って情報を違和感のない形に変えて与えているのだろう」
「ユニットが標準的に装着されるなら、それぐらいはしておかないと優秀とは認められないでしょうね。」
「人間が人工メタルを作っても、この点すらクリアできない可能性が高い。対人間にだけなら改良もできるが、異なる生物種に対応させるその千変万化ぶりはとても再現不能な部分だろうな」
「そこまでいくと、まさに神の領域になりますね。人間も長く生きればそのうち到達できるのでしょうけど、今はまず難しいのでしょうね」
「そう期待したいものだがな。科学水準が降臨者ほどに達すれば、ユニットの改造は思うままになる」
「ユニットの改造ですか。これ以上に改良可能かはわかりませんが、可能性は否定できませんね。欲張らずに考えるなら、センサーの改造ぐらいはできそうです」
「そう言われれば、センサーは改良させれる前提でユニット自体に発現している意味もあるかもしれんな」
「そうですね。メタルの性能をより高めた開発がされれば、センサーだけを改良するだけの話です」
「必要な感覚を得るために、殖装者そのものの改造ではなく、ユニットの改造で済ませられるのも大きなメリットだ」