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時にするどい質問をする青年A
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謎の事情通・初老のB氏
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※ユニットを長期間身につけることでの人格形成:
「ユニットをまだ長期間身につけ続けた人間はいないので何とも言えませんが、もしユニットが心理的干渉(精神ケア)を行っているなら、その影響は無視できないですよね」
「常に理想的相談相手がいるようなものか。ユニットではそれよりも作用としては確実さがあるのだろう。心理的不安を取り除けるのは人類の夢でもあるが、苦しいからこそ突破できる心理的抑圧もある」
「精神的成長は一辺倒にはいかないですね。あまり過保護にしすぎても人間味が薄くなってしまいそうです」
「過保護とまではいかないが、明らかに良くないストレス因子は取り除いてはいるのだろう。だが、これをやり過ぎると確かに危機感そのものがなくなってしまう」
「でも、常にユニットを身につけている降臨者は、ガイバーゼロに対して危機感を覚えましたし、それに対し冷静とは言えないまでも対処していました。この点での強いストレスは危機感として現れているので、ストレスを取り除いたとは言えないようい思うのですが」
「それを問うには、降臨者がどのような生物で、人間のようなストレスを抱えるのか、そのあたりから考える必要がある。だがそれに関する資料が今のところほとんどない」
「言われてみれば、人間と同じように考えるのは無理がありますね。それなら人間に起こった心理作用を直接考えた方がいいですね」
「深町は、近年特に成長が著しい。これは深町の性格が、過酷な戦いを経験して得た成果でもある。このことでユニットが関わっているかどうかを検証してみるか」
「今の深町の成長が100%深町によるものでないとは思います。戦いを切り抜けるガイバーという武器があったからこそ、今まで生き残れたのもあります。それと、戦闘に対する切り替え、このことに関してユニットが関与したようにも思います」
「平和ぼけというと語弊があるが、いわば戦闘訓練を積んでいない少年があそこまで戦えたのは、ユニットの仕様としてあったか、元々戦闘生物として作られたがゆえに、そのスペックを引き出されたかのどちらかだ」
「本能として戦う意志があれば、それを引き出すことで戦いへの慣れがでますね。問題は、それがユニットによって戦闘的性格が固定される場合ですね」
「深町を見ると、ユニットを身につけている間は確かに戦闘的な優位性が見られるが、身につけていないときは、なるべくユニットとも関わりたくない、そういった性格が見られた」
「生存本能として仕方なく戦う結果になったとしても、それもユニットの殖装者保護の仕様から仕方ないことでしょうね。ただ、ゾアノイドと言えども一応人である相手を殺害しても、そのストレスを感じずに済んだのは、ゾアノイド=化け物として考えれたからと捉えたのか、深町の深層心理については謎が残ります」
「ユニットが精神的負担を解放するのは、まず同族を傷つけた場合の心理的悪影響だな。普通の少年にはあまりにも過酷な状況だ」
「最初は化け物扱いしても、それが後々普通の人間が調製され、ゾアロードの命令で戦わされていると知った後でも、それによって自我が崩壊するストレスに至ることはありませんでした。やりたくはないが、仲間を守るためには仕方ないとの意志の強さによって耐えられたわけですが、その耐性もユニットが与えた可能性があるわけですね」
「深町が戦ってから年数もそれほど経っていない。毎日が戦場ではその成長も早かろうが、普通なら精神的に潰されてもおかしくない。ユニットができることは、深町の選択肢、その中でも心理的折り合いがつけられたところで悩まないように固定することなのだろうな」
「それが仲間を守るという心理ですね。仲間を守るためには仕方ないということを心理的決着としてゴールさせるのがユニットの作用ということですか。本来なら、ここに至るまでに悩みながらかなり長い時間がかかるものですからあり得ることですね」
「ぶれの少なさは、多くの場合人間にとって悪くはないだろう。ただ、悩まない人間の成長もまた問題視されることだ」
「少年の多感な時期なだけに影響も大きいですよね。でも、常にユニットを付けているわけじゃないので、そこがまだ救いかもしれません」
「一概にユニットが干渉しすぎるかはわからないが、心理的影響を懸念するならなるべく身につけるべきではないだろうな。ただ、深町の場合は使用頻度がそこそこあったせいか、すでに早成の感が否めなくもない」
「その方が仲間をしっかりと守る面では良いですが、本人がユニットによる成長に疑問を感じらまた厄介なことになりますね」
「それもユニットを身につければ解決するかもしれんがな。心理的に殖装を拒否する場合もあり得るから、人間の心理は難しいものだ」
「深町のように悩める市民だからこそ色々考えられることでもありますね。巻島は心理的に成長度が高いために査定も難しいです」
「それでも多少の経験を積んだり悩んだりはするだろうが、巻島の場合はそれが現れにくい。巻島ならずとも、元々心理的抑揚の少ない人間でも、結果は同じかもしれんな」
「深町は感情面で人間的というか、そこだけはユニットの影響がなかったと思いたいですね」
「ユニットがその性格を引き出し、結果的に戦闘面で折り合いを付けさせる結果になった、ということも考えられるがな」
「それならユニットに対して肯定もできなくもないですね。深町もユニットの恩恵を感じていれば、そこにユニットとの共存という折り合いもつきそうです」
「共存で済むならいいが、長期間身につけることでユニットへの極度の依存症も発生しそうだ。これはユニットにとってはプラスだが、殖装者の精神的な不安心理はユニットによって除外されなければならない。ユニットにとっては矛盾するようだがな」
「完全に依存状態なら、常にユニットを身につけておくのでしょうが、今のところ必要が無ければ殖装を解除しているので大丈夫だと思います」
「戦闘以外で便利だから使うという安易なところでも使うようになったら、それ自体も依存としてはあり得る。だが、人間ではその依存症気質がはっきりしているからユニットによって依存症が解決され、結果的には元のある程度依存の状態に固定されるのだろうな」
「地球人が、もしユニットを普通に使っていたなら、服と同じく依存と感じないレベルになるのですが、そのようなことはあり得ないでしょうね」