「ユニットはどのように作られ、どのような目的をもって開発されたか今のところほとんどわかっていない」
「ユニットは降臨者の言動にもあったように、彼らにしても高度な部類の発明品らしいですね。その意味でも、彼らにとって重要な、特に彼らが脆弱であれば、身に着けて何らかの形で役立つものであることは間違いないと思います」
「そうだな。人間が身に着けた場合はいろいろ発現効率が異なるようではあるが、基本的な機能面ではそれほど変わりないと思われる。その殖装体が受ける恩恵は、人類の夢ともいえる発明を多く含んでいる」
「ガイバーでは戦闘力ばかりに目が向きますが、その意味でも本来ユニットは優れた防護品なのでしょうね」
「ガイバーは強力な兵器にもなりえるが、それだけでここまで生き延びてこれたわけではない。メタル以外がどのように傷ついても、短時間で完璧な修復が可能なほどだ」
「それを可能にしているのがあのコントロールメタルですね」
「強殖組織の特性も重要だが、メタルなくして強殖組織の性能を引き出すことはできない。メタルがなければただの危険な強殖生物に過ぎなくなる」
「そうなんですよね。強殖組織にせよコントロールメタルにせよ、これを完全にゼロから再現することは地球の科学では困難と言わざる得ません」
「バルカスらの研究で、強殖組織のコントロールは何とかできておるようだが、まだ不完全さが拭えない。クロノスの科学力をもってしても、強殖組織本来の性質をつかみ切れていないのだろう」
「ユニット開発ではそれだけ降臨者とクロノスでは差があるというわけですね。でも考えてみたら、どのような設計基準でユニットが開発されているのでしょうね。といっても簡単には考えても答えはでないのでしょうけど」
「メタルが先か強殖組織が先かその出発点も謎ではあるが、発明の多くはまず対象物ありきが常識ではある。ゆえに強殖組織が恐らく先で、コントロールメタルはその制御の意味で後に開発されたことになる」
「それは同感です。ただ、メタルの製作技術自体は、既存の何かを応用したものだと思います」
「いわゆる無機制御系=コンピュータのようなものが既存の技術としてあったということか」
「無論断言できることではありますが、いきなりあの高度なメタルができたとも思えません。強殖組織は発見されたものなのか、開発されたものなのかすらもよくわかりません。なので生命科学が先か、高度情報処理技術が先かはまだ良くわかりませんね。人間の場合、生命科学は厳密には若干出遅れましたが、長い目で見ればほぼ同時に出発したとも言えます」
「人間社会は文明が開けた時点からすでに国や人種が分かれていた。ただ、言葉は違えど同じ知能を持つ種族であったことが幸いし、時間はかかったが少しずつ他国と文化を交えながら少しずつ発達してきた。降臨者のように他種族文明では、文化の起点から人間のそれとは大きく異なる。どのように文明が発達してきたかすらも、人間のそれと同じ視点で判断するわけにもいかない」
「単一種族で、メタル系細胞操作系の両方を開発すれば他種族による科学的統合など不要なんでしょうけどね。思うに、一部の天才がユニットを開発し広めたのかもしれません。降臨者の宇宙船を見ると、やはりユニットと同じく制御系が発達しており、それをもって宇宙に進出が可能になったとすれば、その宇宙船を動かすのに必要なユニットが先に開発され、宇宙に出る前に開発が終了したということになります」
「確かにそう考えても良いかもしれんな。ただし、その開発当時のユニットが今と全く変わらなければの話だ。もし、開発当初の宇宙船が今見られる生きた宇宙船のような仕様ではなく、無機質のみで作られた可能性もある。それで他種族を発見し、そこで新たなテクノロジーを得た。とするなら、まず無機質制御科学が発達し、それを応用して有機生命を操作し、現在に至ったことも考えられる」
「有機無機という割り振りが降臨者に関係があるかはわかりませんが、ユニットの仕様を見ても、確かに強殖組織=有機、メタル=無機という違った側面の科学であることは確かだと思います」
「これらのことはいくら考えてもとっかかりすらないから憶測の域を出ないことでもある。せめてユニットが降臨者(特にユニット開発者種族)のテクノロジーのどのあたりに位置しているかだけでもわかれば、その難易度によっては他種族もからんで知恵を統合した可能性も見いだせるかもしれなんのだが」