※再生に必要な養分:
「ユニットの自立再生では、アプトムのように補食対象を必要としないことが大きな利点だ」
「養分が不要な再生は、通常の科学ではあり得ないことですね」
「質量の保存からすれば当然だが、地球上では全く物質がないわけではない」
「大気中には、色んな元素が舞っています。それでも、人間が必要とする物質は足りないように思います」
「その補填方法については別に考えるとして、ユニットではそれが可能になっている。これが意味することは、周りに基本的には何もない真空の宇宙であっても、生命を維持し続けられることを意味する」
「そこなんですよね。不思議と、深町が全身再生を行った後には、疲労感などは全くなかったですし、一番良い状態で再生されていました」
「再生時に、人体の最高潮時が再現された証拠でもあるな。エンザイムの戦いでは、傷つき方はひどかったが、疲労感はもしかしたらそれほどではなかった可能性もあるが、それでも激戦であったことは変わりない」
「疲労感の査定は難しいですね。このことを難しくさせているのが、ガイバー3の疲労回復がユニットではできなかったことでした」
「五人衆との戦いでは、ガイバー3の疲労度が高く、ユニットは取りあえず傷ついた組織を回復してから解除していた。ユニットなら、この疲労も回復すべきところだが、そうはならなかった」
「そなんですよね。全身再生では、養分すら必要としない再生である上に、最適状態に保たれていました。それなら、疲労回復のために、滋養を素体に与えるなどして、回復にあたれば良いと思うのですが」
「ユニットの機能なら疲労回復も可能なはずだ。なぜそれが起こらないのかの理由だが、ガイバーの中の人がいる場合、ユニットは疲労であっても個性として見ているためと推測している」
「でも、疲労も明らかに生命活動には邪魔じゃないのでしょうか?」
「疲労物質が貯まってきたり、または活動によりスタミナが無くなってくるなどは、確かに生命活動に影響を与えることだ。だが、それが筋肉を増加させる成長の一過程であったりするため、一概には毒扱いできないところでもある」
「なるほど、疲労物質は肉体にとって影響はあるが、半ば中立的でもあるためにその対応では判断が分かれるわけですね」
「肉体破損だったり毒物であれば、ユニットは過剰なまでに反応し、その修正を行う。疲労などの場合は、その速度が最大限とはならず、また個性として見られた場合は人が持つ回復力に沿った速度でしか対応しない可能性もある」
「ガイバー3で疲労を蓄積したまま殖装が解除されたのも、ユニットでは疲労解除が追いつかなかったからというわけですか」
「という意味としか取れないだろうな。ユニットが疲労回復に役立つなら、そのまま身につけていても良かったわけだ」
「となると、全身再生で疲労を持ち込まなかったのは、ガイバー3で起きなかったことが深町の全身再生では起きたことになります」
「肉体のあるなしでは、ユニットの扱いが違うようだな。全身再生時では、最初から殖装者の肉体ないわけだから、メタルが主導で肉体を構築できる。言い換えれば、メタルができうる最良の状態を押しつけていることになる」
「肉体がある場合には、その体に見合った殖装状態になり、疲労解除するような余計な肉体干渉は行わないわけですね」
「どういった干渉がユニットとして必要になるか、この見極めはかなり難しいのかもしれんな。ユニットにおける医療的な措置が適用されるのも、この判断基準が大きく関わっている」
「ヘタに肉体への干渉度が大きいと、記憶障害を招いたりしますしね。ユニットでは殖装者を基準に、こうであるべきとの基準を設定しますが、それを押しつけたら記憶が初殖装時に戻ってしまうので、それが毎回では辛すぎます」
「うむ。ユニットでは、殖装者にとって良いとされる状態はよりよく保つが、中立となる部分ではあえて触れない。そうでないと、殖装者が主導権を持てないからだ。それでも、人間の心理からすればユニットに振り回されている感じもあるのだろうがな」
「あと、メガスマッシャーが強力すぎて、本来ある出力と活動源のバランスが取れなくなった可能性もある」
「一気にエネルギーを消耗するため、従来は可能だった体力補償が間に合わなかったのかもしれない。それが疲労回復させるのに間に合わないほどであったために、またユニット自体もこれでエネルギーを大量に消耗していたため、ユニットの維持が間に合わなかった可能性もある」
「では、巻島のときはユニットが消耗していてもまず本体の治療だけは行い、最低限生命維持ができたら、異空間でエネルギーチャージをすべくユニットの判断で殖装を解除したということなんでしょうか?」
「恐らくはとしか言えないが、あり得ることだな。だが、ギガンティックと違って、エネルギーの消耗だけが強制解除の理由にはならないのも、ユニットの特徴だ」
「ユニットでは、基本的に戦闘に向いているように設計されていないことがこのことからもわかる」