時にするどい質問をする青年A 謎の事情通・初老のB氏


※深町による非殖装の意志:

「トラウマが発生しない場合はユニットでも対処のしようがないが、発生すればそれを除外できる。それがユニットの事後処理の仕様でもある」

「でもトラウマは発生し、結果的にはユニットの殖装拒否に至ってしまっています。そうなると、トラウマが発生したその時点で何が起こったかを考える必要がありますね」

「深町が意識を回復したとき、すでに戦闘が終わっていた。脳が回復しても、戦闘中の記憶は刻まれず、脳が破壊された直前までの記憶が復元される。深町が戦闘終了の光景を見ても、瞬時にはわからない状況でもあった」

「父親も、エンザイムUとなり深町を襲っていました。そのときに深町は焦っていましたが、ユニットの効果で多少はその焦りも緩和されたのでしょう。ただ、その記憶そのものが消えるまでには至っていません」

「深町にとっては、それよりも脳を破壊された記憶の方が消したいところでもあったのだろうな。ユニットもそのことを踏まえて、破損時点の状況は記憶には残さない。それはストレスの原因にもなるからな」

「となると、父親を抹殺したそのトラウマが解除されなかったのは、不思議ですね」

「あのとき、深町はエンザイムUと戦い、それが父親であるとの記憶は回復した。その後、腕だけが残されたエンザイムUの特徴的な腕を見て、過去に自己防衛で暴れた自分を思い出し、この惨状が自分によって引き起こされたものと理解した。このとき、父親を殺害したその精神状態はユニットによって感知されたはずだ。だが、それは飽くまで事後のことであり、ユニットもトラウマを解除するには、その解除方針を予め設計する必要がある。このタイムラグがトラウマが残った最大の原因と思う」

「さすがのユニットでも、瞬時にトラウマを解除する結果を出せなかったわけですか。その間に、深町は強いストレスを感じ、ユニットがあったから父親を殺害したと、そっちの方を強く念じてしまった。そしてユニットに対する嫌悪感がユニットの解除に繋がったわけですか」

「ユニットとしても、殖装が解除されたら何もできない。殖装されれば何とかなるにしても、深町の中で殖装を拒否する心理的な問題がある場合は、ユニット側としては殖装するわけにもいかない」

「そうなんですよね。無理に殖装を念じても、深町のやさしさが父親殺しをした自分を責める状態にあったので、それがどうしても邪魔をして殖装が成功してませんでした」

「ユニットは、殖装の意志の有無をどのように感じ取っているのだろうな。無<有でも、無の度合いによっては不純な動機として殖装に応じないようになっているのか、そこはまだ考える余地があるところでもある」

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