じきにその姿を隠さねばならなくなる太陽が、最期のあがきのように クリーム色に統一された空間を染めていく。 昼間は穏やかで清潔な印象を与える壁や廊下が 燃えさかるようにきらめく中で、カカロットは意識を他へ移しながらぼんやりと、 校内の見回りというけして気乗りのするものではない職務を淡々と果たしていた。 まだ教室内に残っている生徒に帰宅を促すだけの、 単純な動作の繰り返しに飽き飽きしながらも、 小さく溜め息を吐いて夢想に囚われていく意識を現実に引き戻し、 もう何度口にしたのかすら分からなくなった台詞を機械的に発する。 虚偽で塗り固められた笑顔を浮かべるのは、昔から得意だった。 「もう5:30だぜ。早く帰れよ。」 「はーい。」 カカロットにとっては関心の的にすらならぬ夕陽にさえ感嘆する彼女たちが、 まろやかな頬を赤く染め、先生に話しかけられたとはしゃぐ声も、 未だたった一人の青年に気を取られている男の耳に届くことはなかった。 担任をもっているという気安さもあり、カカロットが些か乱暴に踏み入った 最後の教室には、先ほどまで己の思考を奪っていた青年が 勢いを増した斜陽に包まれ、静かに一人で腰掛けていた。 予想だにしていなかった状況に、わずかに目を見開いた カカロットの表情がふっと緩む。 気付けばつい癖で、何故か顔を上げないベジータの頭を撫でていた。 「こんな時間まで待ってたのか?よかったんだぜ、先に帰ってても。 けど今日はせっかくお前が待っててくれたんだし、一緒に帰るか。」 「・・・・・・・・。」 「先に駐輪所行ってろよ。オレもすぐ行くから。」 「・・・・・・ッ。」 自分の言いたいことだけを口早に述べ、背中を向けたカカロットのスラックスを、 ベジータは何も言わぬまま静かに、しかし慌てて掴んだ。 俯いたままでも感じられる男の漏らした苦笑のせいで、 ますます顔を上げられなくなる。 何か言おうと思っても、からからに渇いた喉や舌は引きつるばかりで 何の機能も果たしてはくれなかった。 「・・・どうした?何か言いてぇことがあるんなら遠慮すんなよ。・・・・ベジータ?」 「・・・・・・・・。」 発言を促しても相変わらず沈黙を守り続けるベジータに、 カカロットは内心大きな溜め息をこぼした。 下校時刻を過ぎた校内は閑散としていて、見回った限りでは 己のスラックスを離す気配すら見せぬ彼が、最後に残った生徒だと思われる。 正直なところ、今すぐにでもこの場を立ち去りたかったのだ。 物憂げに目を伏せるベジータの頬には睫毛が長い影を落としており、 紅く染められた姿は儚さすら感じさせる。 脆く頼りない雰囲気をまとった彼を抱きしめ、口づけてやりたいと訴える 衝動が今にもこの身を突き破ろうとしていた。 どうしたものかと思案に暮れるカカロットを捕らえたまま やっと意を決したベジータは、怒りとも悲しみともつかぬ色を浮かべる顔を上げた。 今にも泣きそうな、しかし鋭く睨みつけてくる眼差しから目を逸らすことができず、 自分が小さく息を飲んだ音が聞こえる。 カカロットの中で、何かが綻びはじめていた。 「ベジ・・・・・タ?」 「何でお前、俺のこと避けてるんだっ?」 「・・避けてねぇさ。今だって話してるだろ。」 「嘘だ!!今日だって目を合わせたの、これが初めてだろっ!!」 興奮で顔を赤く染めながら強く糾弾するベジータの姿に、 カカロットは小さく自嘲的な笑みをこぼした。 いくつになっても純朴で素直なままの彼が自分を煽る。 世界も大人も、この自分でさえも、お前が思っているほど綺麗ではないのだ と残酷で自虐的な事実を突きつけ、鈍く光る闇色の瞳を曇らせてやりたい。 ふさぎこむ彼と怠惰な劣情に身を任せ、傷を舐めあうように抱きあいたい。 ただその一心で行動する獣のような自分を、未だ清らかさを失わぬ彼は 侮蔑を込めた眼差しで睨むだろうか。拳を放つだろうか。 それでも欲望は既に抑えきれぬほど大きく成長してしまっていた。 「んんっ!・・・はっ・・ふ・・・・・んぅ。」 性急な行為に似合わぬ慎重さで、ゆっくりと甘い口腔を犯す。 突然の愚行に力む舌をほぐすように優しく撫で、理性を奪うようにしゃぶる。 静かな教室に響くピチャピチャという湿った音と、鼻から抜ける 普段の彼からは想像もできないほど淫靡な溜め息に高ぶっていく自分を、 カカロットは冷めきった瞳で静かに見つめていた。 名残惜しげに唇を離すと、混ざりあった唾液が艶やかに糸を引く。 黒瞳を潤ませながら、ぼんやりとこちらを見上げてくるベジータの唇に 軽やかなキスを落としたカカロットは、しかし重く軽薄な笑みを口元に貼りつかせた。 「これで分かっただろ?オレはこういう意味でお前が好きなんだ。」 「・・・・・・・・・。」 再び俯いてしまったベジータの姿に、大きな後悔と自責の念ばかりが カカロットの胸に渦を巻く。 いずれ言おうと思っていたことだ。決定的な別離が少し早まっただけじゃないか、 と到底納得のいかない理屈に自身を押し固めベジータに背を向けたカカロットは、 突然もの凄い力で腕を引かれるのを感じた。 「ベジータ!?」 「・・・・・・。」 気がつけばまさしく目と鼻の先にピントのずれたベジータの顔が見えた。 そういえば、唇にも何か柔らかいものが触れている。 呆気にとられる自分の前で、手の甲で口を拭ったベジータは 予期すらしていなかった言葉を告げた。 「俺だって一緒だ、バカロット!!!」 「・・・え、・・・・えぇ!?オ、オレもお前も男だぜ。」 「知ってる。」 「しかも血つながってるし。」 「従兄弟だからな。」 「それにオレはお前の先生やってんだぜ。」 「それも知ってる。」 「・・・・何とも思わねぇのかよ?」 「少しはおも・・・カカロ・・ット?」 「・・・・・オレ今まですっげぇ我慢してたんだけど。」 「知るか。」 突然肩にしなだれかかってきた大きな男の背を何となく撫でてやる。 自分より10年も先に生まれた、図体ばかりが大きな男が情けない顔をして 体重を預けてくるのが、何故か可愛らしかったのだ。 胸の奥で感じたくすぐったさに、カカロットの肩に顎を預けたベジータは 小さく花がほころぶような笑みを浮かべた。 今まで一度も感じたことのなかった、この仄かな幸福感は嫌いじゃない。 カカロットの暑苦しい体温も、わずかに香る汗の匂いも嫌いじゃない。 しかし帰宅を促す藤色に塗られた空を窮屈な姿勢で見上げたベジータは、 のしかかってくる重い身体を離そうと男の胸に触れさせた手で、 強請るようにきゅっとワイシャツを握っていた。 生暖かい舌が耳朶に這わされる。 今日も友人と学び、遊び、騒いでいた教室で聞かされるくちゅっという淫靡な音に、 ピクリと震える身体も紅潮していく頬も、たちまちかすれていく声さえも抑えられない。 穏やかな時間が一瞬にして艶かしく変化していくことに、 ベジータは思わず焦りを含んだ声を発していた。 「ぁっ・・・・カカロット!」 「ゴメン、オレ我慢できそうにねぇ。なるべく優しくするから、いい、か?」 「・・・・・・・・。」 しかし返された声もまた、同じように焦燥を抱いていた。 何よりカカロットの奥深くに棲む疼きがじくじくと静かに、 しかし確実にその存在を誇示している。 だからなのかもしれない。羞恥心に苛まれながらも小さく頷いてしまったのは。 「・・・痛くねぇか?」 「だい、じょうぶ。」 「ならよかった。」 小さな机を寄せただけの硬い床に寝かされ、ゆっくりと制服のボタンを外されていく。 小さく浮き出た喉仏に落とされた口づけが、 これから始まる非常識な行為を思い描かせる。 乱れはじめた呼吸に戸惑いを隠せず、ベジータはぴくりと小さく身体を震わせた。 大きな期待とそれ以上の不安に襲われても、 未知の領域に足を踏み入れてしまった自分にはなす術もなく、 ただ縋るように堅く男のシャツを握り締めることしかできなかった。 ぬめった唇に、舌に触れられるだけで身体がビクビクと震え、 無意識に快楽を追ってしまう。 初めての行為にも反応を返す自身が信じられず、 ベジータはすべてを追いやるようにぎゅっと瞼を下ろしていた。 首を舐め、鎖骨を食み、脇にまで伸びたカカロットの口唇は、 大きな反応を見せる箇所を何度も往復している。 しかし熱心に脇腹に痕を残していたそれに突然胸の突起を吸われ、 ベジータは高い嬌声とともにぐっと背を軋ませた。 「はぅっ・・・ん、あぁ!・・カカロ、ットぉ。」 「・・・お前可愛すぎ。どうかなっちまいそうだ。」 「ぁっ、ハァ・・・も、や・・だぁ。」 「何が嫌なんだ?すげぇ気持ちよさそうなのに。」 「だ、っておれ、ひぁっ・・ん、からだ、へん・・・だからっ。」 「変じゃねぇさ。オレだってヤバイくらい気持ちイイんだぜ。今すぐイきそうなくらい。」 「ひぁっ・・・・で、もっ・・・ん、やぁぁ!」 張りつめた陰茎を軽く撫でられただけで、恐ろしいほどの快感に襲われる。 生まれて初めて感じる強大な波に、ベジータは頭を振りながら怯えたような声をあげた。 男のワイシャツを掴む手に更に力がこもる。 突然胸から顔を上げたカカロットに、息が触れあうほどの距離から見つめられ 思わず顔を背けると、視界の端で彼が微笑んだのが見えた。 「お前が気持ちイイのは、オレがお前を愛してて、 お前もオレを愛してるからなんだぜ。それでも嫌か?」 「・・・・・いや・・じゃ、なぃ・・・・。」 「・・・そっか。」 唇にふわりと軽い口づけを施され、ゆっくりと視線が絡みあう。 それだけで頬を赤らめるベジータをよそに、穏やかな微笑みに まとわれていたカカロットの表情は一転して欲望を滲ませる、軽薄な笑みへと変わった。 「覚悟しろよ。」 耳元で囁かれた男の声に、期待とも怯えともとれぬ戦きが ベジータの背を駆け抜けていった。 くちゅっと淫猥な音をたてながら男がペニスを咥える様を見せつけられ、 驚きに見開かれたベジータの瞳は、今や恍惚と雫を流すばかりだった。 己の下肢に顔を埋めるカカロットの鮮やかな髪に添えられた手も、 彼の頭を引き剥がすどころか、更なる刺激を強請るように押しつけてすらいる。 すっかり蕩けた身体は、限界まで開かされた脚が訴える痛みすら 快楽として受容していた。 裏筋に舌を這わせながら窄めた唇で扱かれ、括れを強く吸われ、 とてつもなく大きな何かが奥深くから押し寄せる。 どこかへ連れ去られるような恐怖に襲われ、 思わず縋るようにカカロットの頭を抱きしめていた。 「・・・・ッカロット、カカロ、ット!・・あっ、あっ、な、んか・・・くるっ!」 気がつけば荒い呼吸を繰り返す自分を、両脇に肘をついたカカロットが じっと見つめていた。何か独特の、濃密な匂いがあたりに漂っている。 今まで何をしていたんだっけ、ともやのかかった記憶を探っていると、 ふいに頭上にいる男が不思議そうな声を発した。 「お前さ、もしかして一人でヤッたこともねぇのか?」 「・・・・・へ?何を?」 「いや、別にいい。何となく分かったしな。」 「・・・お前最近ちょっと変だぞ。」 目的語を入れずに繰り出される質問はまったく理解できず、 こちらの問いかけにも満足に答えてもらえず、 ベジータの疑問は深まるばかりだった。 眉間に皺を寄せ、精一杯の揶揄を口にしても、 カカロットは相変わらずにやにやと笑っている。 こいつ本当におかしくなったんじゃないのか、と流石に心配しはじめた ベジータのことなど気にもかけぬ風で、相好を崩したままのカカロットは、 ゆるゆると未だ幼さを残すベジータの陰茎を撫でながら嬉しそうに口を開いた。 「それより続きしようぜ。お前は満足だろうけど、オレはまだ一回もイッてねぇんだ。」 「ひぁぁっ!お、まえどこっ、さわって・・・ここ、がっこうだぞっ。」 「今更何言ってんだよ。お前から誘ってきたくせに。」 「いぁっ・・ふ、ぅ・・・う、そだ。」 「強がんなよ。正直に善がってろ。」 何度か愛撫を加えるだけで、ベジータの雄はみるみる形を変えていく。 つんと尖った乳首を口に含むと、うっすらと身体を覆う汗が控えめに舌を楽しませた。 「・・あぁっ・・・ハッ、カカロ、トぉ。」 「上手いじゃねぇか。そうやってオレのことだけ考えてりゃイイんだ。」 赤くに染まった顔で自分の与える快感に喘ぐベジータを見ているだけで、 己の中心に熱が集まっていく。 まさか叶うとは思っていなかった薄汚れた欲は カカロットの中で醜く成長し、今や嫉妬に姿を変えつつあった。 彼の視界に入る人物、彼と言葉を交わす人物、彼の記憶に残る人物に 至るまで、すべての人間をこの世から消し去ってやりたい。 そうして己以外に頼るもののなくなった彼を飽きるほど貪りたい。 その清らかな魂を、この身にあふれる汚濁で穢してやりたい。 なるべく優しくすると言った挙句がこのざまか、と深淵から込み上げてきた 自嘲的な笑いは、快楽にのみこまれたベジータに知れることはなかった。 早い限界を知らせるベジータの切羽詰った嬌声に、 痛々しいほど高ぶり、布地を押し上げている自らの男根を解放してやる。 大きく開かせていたベジータの脚を閉じると、小首を傾げた彼が 黒瞳を潤ませながら不思議そうな視線を投げかけてきた。 「オレのはちょっと厄介なサイズだからな。今はこれで我慢しろよ。」 「・・・・ぇ・・・なに、する・・、はぅぁっ!」 ぐちゃぐちゃと、すりあわさった陰茎どうしがたてる湿った音が響く。 腹に付くほど曲げさせたベジータの白い太腿から 血管を浮き出たせた赤黒い肉棒が覗く醜悪な光景に、 カカロットは高ぶりを抑えることができなかった。 淡い桃色の幼げな陰茎をつぶすように腰を突き立てる。 引き締まった内腿に擦られ、視界が白くまたたく。 カリが触れあうと、えもいわれぬ快感がお互いを襲った。 「やあぁっ・・も、だめっ、で、ちゃう!」 「イイぜ・・・オレも、イきそうだ・・・・。」 「んんっ、ぁぁあああ・・・・!」 机を掴み荒い息を漏らすベジータが二人分の欲望に 身体中を白く染められていく姿に、カカロットは満足げな微笑みを浮かべた。 偶然にもカカロットのポケットに入れられていた皺くちゃのハンカチで拭ったとはいえ、 べたつく身体にはまだ独特の匂いが染み付いている。 ぐっと眉根を寄せ、トライクにまたがったカカロットの腰に廻した腕に 力を込めると、赤く光る信号にしばしの休息を許された男が、 穏やかな表情でふいにこちらを振り向いた。 「もう米買わねぇとヤバイんだけど、寄ってくか?」 「・・・・・・・。」 黒い手袋に覆われたカカロットの指が差す方向を見やれば、 最近できたばかりの大きなスーパーマーケットが視界に入る。 少し思考をめぐらせたベジータは、結局何も言わずに小さく左右に頭を振った。 「そっか・・・。」 「・・・・・・・・。」 その姿に顔を綻ばせたカカロットの反応も、やはり静かないらえを返しながら ベジータの頬を何度か撫でるにとどまった。 それでも身体の奥底からあふれてくる至福は小さな羞恥をもたらし、全身へと巡る。 目に見えるすべてが麗しく、耳に届くすべてが美しく、鼻腔をくすぐるすべてが芳しい。 単純な自分に呆れながらも、再びハンドルを握ったカカロットは、 背中に預けられたベジータの体温にしみじみと幸せを感じていた。 これからすべてが変わる。誰にも悟られぬようこそこそと関係を築いていくのは、 恐らくベジータにはとても辛いことだろうと思う。 それでも身を引くことのできない自分は、せめて精一杯彼を幸せにしてやりたいと思う。 すっかり暗くなるまで教室でヤッていた自分が言えることでもないか、と 思い直してみても、顔に貼りついてしまった笑みは簡単に剥がせそうにない。 諦めを抱いたカカロットはせめてもの抵抗と、エンジンをふかせ 全速力で道を駆けていった。 家はもう、すぐそこ。 |
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折角激萌えなリクエストをいただきましたのに、一ヶ月近くお待たせした挙句
こんなSSしかお渡しできず本当にすみません!!そして読みにくくてすみません!!
エロくない上に終わり方がありえませんのに、こんなものを貰って下さって
本っ当にありがとうございました!!とりあえず嫌われなくてよかったです;;
ち、ちなみに続いたりします(死) |