頭のてっぺんの空気がひゅっと薄くなって、顔が不自然なくらい赤らんでいるのが、自分でも 分かった。口も喉も渇いていて、なんだか全身がスルメにでもなっちまったみたい。だのに耳 の後ろを汗が流れたりして、身体って本当に素直じゃない。 気がつくと、カカロットの呼吸はもう穏やかなものに戻っていて、俺もどうにか息を整えようと、 うつむいて口元を手のひらで覆った。指先を掠める息がひどく熱くて、それが少し恥ずかしか った。 「・・大丈夫か、ベジータ」 「触るな、・・別に何ともない」 俺が黙ってうつむいているせいか、カカロットに軽く肩を掴まれた。触れているところから一瞬 で痺れが伝わって、腰のあたりに余韻を残しながら消えていく。 ついさっき組み手をしていたと きは、どこに触れられたって何も感じなかったのに。思わず奴の手を払いのけたくせに、それ が何の未練もなく離れていくのが、少しだけ恨めしかった。 俺の身体が狂った訳じゃないんだ。多分、俺がこうなってしまったのは、こうなるべきだった からで、ねぇそうでしょう。だって、宇宙で一番憎たらしいお前に思い焦がれるなんて、当然 と言えば当然じゃないの。 寄りかかるような関係には興味がないから、愛してくれとは言わない。ただお前を殺すことを、 俺にだけ許して。どんな敵が来ようとも、俺に殺される瞬間だけを夢見て、全力で生き延びて くれたら、幸せ。 「カカロット・・・・」 「ん?」 「死ぬなよ、俺に殺されるまでは」 「なんだぁ、イキナリ・・・オラは誰にも殺されねぇって」 カカロットはほんの少し笑って、俺の後頭部を軽く撫でた。その途端妙に緊張していた身体 が、少しずつ解れていったことに驚いたからか、不思議と怒りは湧いてこなかった。 ただ奴の 手のひらから伝わった熱が、いつまでもそこに渦巻いている気がした。早く消えてしまえばい いのに、こんな陳腐なもの。 突然カカロットは大きく伸びをして、そばの湖へ飛び込んでいった。びしょ濡れになって、振り 向きざまへにゃりと笑って、ああ、この愛おしさ。 お前がお前であるだけで、俺は泣きそうにな るんだ。頼むから、俺が息の根を止めるまでは、精一杯闘っていて。 お前を感じているだけ で、どこまでも強くなれそうな気までするんだ。 純度の高いエネルギーが手足の先まで満ちていて、戦うカカロットは本当に、綺麗だ。泥と血 にまみれて、痛めつけられて、それでも世界を守ろうとして、キラキラしてる。 動きの一つ一つ が鮮やかで、思わず見入らされてしまう。本当はお前が俺の一部になれればいいけど、そん なこと不可能なんだから、だったら亡くしてしまうしかないじゃない。 お前の命を俺の手が揉み消したら、俺の手の中で死んでいくお前は、ねぇ、どんなに綺麗でし ょうね。そのときお前はきっと、あんまり綺麗すぎて、この世にはいられなくなるんだよ。 「入ってこいって、ベジータ!」 カカロットは青空みたいに笑った。俺の喉がごくりと音を立てた。彼の髪の先から胸へと、水滴 が伝う。澄んだそれはつるりとカカロットの皮膚を滑って、いつかその上で昇華するだろうか。 生温いそよ風を足元に感じて、じわじわと頭に血が集まっていくのが分かった。 「・・遠慮しておく」 バカみたいに喉が渇いて。 「何でさ!」 カカロットが日差しに吸い込まれていくようで。 「・・抱かれたくなっちまうだろ?」 背筋が浅ましく震えた。 「抱かれちまえば?」 「いずれな」 「ふ〜ん・・・」 笑えない。 いつの間にかカカロットが目の前にいて、じっと俺を見つめていた。 頬に彼の吐息が。彼の瞼が ゆっくりと上下して。熱が。嗚呼、カカロットは未だ生きている、俺のものにはならないままで。 いつからかなんて興味は無いけど、多分ずっと昔から。カカロット、お前がほしくてほしくて堪らな いの。産まれたばかりの赤子みたいね、綺麗なお前。綺麗なお前、善悪の対岸を、冷たく見下ろ し続けるしかないの。 ねぇお前、せめて一時、たとえば俺を、じぃっと奥まで見つめてくれたら。俺が溶けちゃうくらいに 熱く。そしたら俺だって、もっとおとなしくしてたかも、しれないでしょう。お前がいるだけでドキドキ するなんてこと、無かったはずでしょう。 今じゃもう、愛しくって愛しくって、堪らねぇのよ。すぐにで もお前を殺しちまいたいくらいには。嗚呼お前は全然知らないだろうけど。 カカロットの目がへにゃりと笑いかけたから、その唇に噛みついてやった。伝う唾液を吸い取って、 下唇を歯で挟む。こいつの中にある酸素を全部奪ったら、反吐が出るほど甘かった。 「・・・・・・バカロット」 カカロットは目を見開いた。 早く責任取りやがれ。 |
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カカが好きすぎていっそ死にかけてるような王子萌えです。
そしてくっつきそうでくっつかないカカベジ萌えです。
マイナーなものばっかり書いてしまって申し訳ありませんっorz |